ITリーダーやITマネージャーのための"ゆる〜い"学びの研究室
実際にプロのカウンセラーに聞いてみた
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IT業界で働く人のためのカウンセラーになろうと考えているので相談に乗ってください。 |
そもそもそういうニーズはあるか?
IT業界にはメンタルで悩んでいる人、転職の相談を求めている人が比較的多い業界である。ニーズは確実にあると思われる。
また、カウンセラーの視点で見ると、IT領域の知見を持った人、マネジメントの経験がある人は、より専門性の高いアドバイスができる可能性がある。
現在、そういうIT領域で強みを持ったカウンセラーは少ないように思う。
そこを目指すための最初のアクションは?
IT業界でのマネジメントの経験を生かしたカウンセリングを前提に考えると、まずは、産業カウンセラーを目指すとよい。
産業カウンセラーを目指すには、日本産業カウンセラー協会の養成講座を受けることをおすすめする。産業カウンセラー協会は全国的にもしっかりした組織なので、仕事をはじめた後のサポート面でも心強い。
カウンセリング講座はオンラインと対面があるのだが、オンライン講習しか経験がない人が対面でカウンセラーをやるのはなかなか厳しいかも知れない。そういう意味では対面での講座をお勧めする。
また、カウンセラーという仕事自体は経済的には安定した職業とは言いにくい。自分の相談室を立ち上げ、軌道に乗るのには最低でも1年は掛かると思った方が良い。それとは別に大手のカウンセリング会社と相談員として契約することで、別のチャンネルからの収入や情報源を得ることができる。そういう複数軸でのビジネスを考えたい。
カウンセラーに向き不向きはあるか?
これは本人のやる気次第ということもあるが、一般的に言えるのは、相談相手の気持ちに寄り添えるか、共感する力があるか、ということは最低限必要ではある。不思議なことに、大学で心理学を学び、コミュニケーション力も抜群で頭の回転がよい人が、必ずしもカウンセラーとして成功しているかというとそうでもない。逆に自信がなさそうで言葉もたどたどしい人が、信頼あるカウンセラーになっているケースもある。
ざっくり言うと、ビジネスマンとして働いている人は基本的にはカウンセラーとしても大丈夫ではないでしょうか。
よりよいカウンセラーになるためには?
カウンセリングの手法として、傾聴力が必要なのは間違いない。しかし、これだけで優れたカウンセラーになれるかと言うとちょっと違うかもしれない。やはり人間の行動や思考に関する洞察力、さらには心理学などに関する知見はあった方が良い。
例えば、臨床心理学の知識を持っていることで、悩んでいる人の行動の法則性を既知のモデルを使って説明できる。これができることでアドバイスの深さが全く違がってくるというのがある。カウンセラー自身の業務経験に加えて、心理学的な知見を持っていることが大きな武器になると思う。
臨床心理学の学派は歴史的な流れもあり、何を学べばよいかは一概には言えないが、最近のはやりとして学習理論というものがある。産業カウンセラーの講座では軽く触れる程度なので、別途個別に勉強する必要はある。
例として、高所恐怖症の患者さん。「高い所」と「恐怖」が、何らかの過去の学習によって結び付いてしまった状態。この結びつきをどうしたら解けるのかの選択肢として、既にいくつかのモデルがある。このモデルに沿ってより良い解決策を患者さんと一緒に考えていけるようになる。
そういう勉強が楽しいと感じるのならば、是非今からでも始めてほしい。
ではいつから始めるべきか?
年齢的なことを考えると、できるだけ早くスタートした方が良い。カウンセラーとして70歳までやるならばあと12年しかない。75歳を超えて現役の人もいらっしゃるが、それでも基盤となるスキルや知見はできるだけ早く習得しておくべきである。20才代の2年間と50才代の2年間は全く違う意味を持つ。
既にカウンセラーとしてこの後の人生を歩む決心がついているのであれば、60歳の定年を待たずに、一歩を踏み出してもよいかも知れない。ただし、注意しなければならないのは、最初の2〜3年は経済的な不安定感は覚悟しなければならないこと。現時点で経済的な見通しが立っていないのならば、現職をあと2年続けながら、平行してカウンセラーになる準備をしていくしかない。
もう一つの視点は、現職ではそれなりの重責を担われていると思われるので、そういう厳しいストレスと戦いながら、カウンセラーになるための準備ができるかどうか。例えば、今の状況のまま、自分のホームページを立ち上げて、産業カウンセラーの講座に出て、かつ心理学の勉強をしていけるかどうか。そういう気持ちと時間の余力があるかどうかはとても重要。60歳になって今の決心やモチベーションが維持できていればよいが、そういうイメージを持てないとしたら。そこを考えて答えを出していくしかない。
とても有益で建設的なアドバイスを頂き、感謝しております。
〆