読後感想
リーンスタートアップ
本書の肝、1つめは事業は小さくスタートすること。
新たな事業を始める人は、自分はまだ「何も判っていない」と考えるべき。「アイディアの構築→実用最小限プロトタイプによる計測→科学的方法に基づいた学び→方向転換(ピボット)判断」という起業マネジメントの1周をいかに素早く回転させるかをテーマにしている。
2つ目、バリュー仮説(顧客にとっての価値)が適切かどうかを検証するサイクルを小さく回す。
・製品、サービスは早く顧客の評価に晒されることが重要。初期の製品をMVP(実用最低限の製品)と呼ぶ。ターゲット顧客は一般的には平均的な顧客を選定しがちであるが、アーリーアダプタ(最も使いたがっている顧客)とすること。かといって、戦略=仮説が不要とは言っていない。戦略イメージはラフでも良いので必要。その仮説が合っているかを評価するための指標(KPI)を決める。
・検証のサイクルタイム(バッチサイズ)は小さくする。今までも顧客重視で顧客へのレビューをして、顧客が望むものを確認しながら製品開発をしていると思っている人には要注意。書面でのレビューではなく、製品そのもののレビューが必要であることが重要。人は動くもの、実際に使えるものでレビューをすることで本気になって考えるものである。もしくは本当に欲しかったものが判ることが多い。
・その結果、指標がどうなったか、なぜそうなったのかを分析し、そこから学びを得る。そして、事業の方向性を「変える」のか「そのまま継続する」のかを決める。いくら頑張って製品を「良く」する活動をやったところで、顧客にとって価値が無ければまったくの無駄=骨折り損のくたびれ儲け。そこに多くの人的リソースとお金を投資してしまってから気付く。指標が思うように伸びなければ、ピポット=方向転換 の重要性について説いている。
・会計は、財務会計と管理会計だけでは間に合わないので、革新会計という手法を導入する。コフォート分析と呼ぶ新製品と新たに接する顧客グループの成績に着目したり、アジャイル開発を導入して1ヶ月ごとにひとつのタスクを完了させるスプリントを行ったり、競合より早く学ぶ組織にする。(しかし、会計の話は自分には今一つ判らなかった)
3つ目、グロース仮説(継続的な成長戦略)が適切かどうかを検証する。
破壊的イノベーションについても言及している。前提として組織に以下の3つの特質をもたせ、イノベーションが自由に行える砂場を作って、まずは小さくはじめる。
・少ないが確実に資源が用意されていること
・自分たちの事業を起こす権限を有していること
・成果に個人的な利害がかかっていること
そもそもイノベーションのプロセスは、「まだ分かっていないことを学ぶ」ということが重要であり、そのためにはリーンスタートアップの手法が有効なのだ、としている。
ベースになっているトヨタの改善手法が後半に出てくるが、これはこの本には無くてもよい
なぜなぜの5回深堀り、などは1冊の本になってしまう位の深みがあるので、それを載せたために、かえってこの本の価値が下がったように思う。
