「トンデモ」入ってる!

  <(c)一庵さん>

じゃなくて・・・

「と学会」を斬る!











トンデモ本の真相を扱った本、いわゆる「と学会」が出した本に、「トンデモ本の世界」、「トンデモ本の逆襲」、「トンデモ超常現象99の真相」等があります。いずれもよく売れているようです。

最近、「トンデモ 超常現象99の真相」が文庫化されたので、またぞろ買い込みました。
例によって、痛快な切り口で、多くの超常現象をバッサリと切っています。

例によって例のごとくの内容ですが、今回は、わりと間違いとその調査文書の出所、検証などを書いてあり、以前よりも親切というか、読者が検証が出来るようになっています。
で、この「と学会」の出した本の中の間違い、「トンデモ」の中のトンデモを検証しようと言うわけです。

流布している「伝説」(誤情報)に対して、「真相」(正しい情報)を示す、という形で書かれているので、ここでもそれを踏襲します。

先ずは「と学会」会長、山本弘氏の文章から。

阪神淡路大震災

伝説:地震の原因はマイクロ波兵器。

真相:大出力のマイクロ波を地中に照射しても、そのパワーの大半は地中の水分を加熱するから不可能。

おいおい、マイクロ波ならどんな周波数でも水分を加熱できる訳じゃないでしょ!

マイクロ波による加熱は、分極している分子を振動させることによって、内部的な摩擦熱が発生するためと言われています。
水はマイクロ波に体する誘電率が極めて高く、水分を有する物体はマイクロ波に対する屈折率が極めて大きい為、水分を豊富に有する物体は加熱されのです。
マイクロ波の中でも、電子レンジなどで使われている2450MHzの電磁波は、水に対する加熱効果が大きいです。

でもね、UHF〜サブミリ波までを総称して(広義の)マイクロ波と言うんだよ。2450MHz(S-Band)とは書いてないでしょうが。
それに、水の摩擦熱が発生しないからって、電磁波が何でも貫く訳じゃありません。

UHFを放送している放送局の近くで、水分の塊である人間が蒸し焼きになった・・・なんて話は聞いたことがないぞ!

これが兵器になり得ないのも、阪神大震災の原因とは関係ないのも本当です。(当たり前か)
でも山本氏の示した理由は間違いです。仮に水分がなくたって、地核にマイクロ波が届いたりはしない。

地核に届く前に、マイクロ波が岩盤を貫けるわけ無いじゃないか!
それができるなら、ビルや地下鉄、何があろうと携帯電話でも何でも常に使えることになる。
そんなことになったら、通信工学の一大革命が起きるよ!

2.相対性理論

伝説 :物理学者アスペの実験は、ある種の情報が光よりも速く伝わる事を証明。相対論の誤りの証明である。
   科学者は相対論の確認などしていない。

真相 :相対論が超光速現象を全て禁止しているというのは、反相対論者の誤解である。
   質量を持った物体が移動しないなら超光速は許される。
   例として、電光掲示板上を移動する文字の速度は、光速には制限されない。
   さらに、相対論の確認は十分になされている。

な、なんと!「と学会」会長にしてSF作家たる山本氏がこんな事を言うとは!
この一文で、実は山本氏は特殊相対性理論を完全には理解していないと言うことがバレてしまった!

物質が移動しなければ超光速でも相対論に違反しない、というのは間違いではないが、相対論以前の前提である因果律に違反する。
電磁波等も含めて、情報が光速を越えれば、それはタイムマシンになる。過去に情報を送れるから。
だから、山本氏が示した例は完全にあり得ないのです。
(光も電磁波の一種であり、質量はゼロ。だからこの文章は二重に間違い。光速度は一定でしょ。)

注:最近の本に、上記の文章への反論(?_?)が書いてありました。ここに書いておきます。


情報を伝達しない超光速というのは確かに実存する。例えば、地球から月にレーザー光線を照射し、それを振り回せば良い。
地球を一秒間に一回転する角速度であれば、レーザー光線は月の上を秒速250万kmでつっぱしる。でも、これは情報を伝達しない超光速です。

光速を越えて情報を伝達できたら、ノーベル賞は間違いない。実は山本氏は狙っているのか?
 

これに関するメールを貰いました。
要約すると、山本氏の例でも電光掲示板の制御方法で時間を調整すればいい、という内容でした。

百歩譲って、電光掲示板の文字の制御方法で調整するとしましょう。山本氏は数光年の大掲示板を例としてあげています。

観測者の位置と1光年先の電光掲示板を用い、二つの文字が観測者に一瞬で伝わるように、一年前に後ろの文字を出して、現在時間に最初の文字を出せば、勿論それは観測者には同時に見えます。当たり前だわね。

これを超光速の例としてあげるのは、少し問題があるというか、当たり前過ぎて超光速の例になっていないように思うんだけど、まぁ少なくとも矛盾は無いでしょう。

しかし、まだおかしい。そもそも主題であるアスペの実験は、EPR論文から来ています。
EPR論文は、遥か彼方に情報が光速を越えて伝わることから量子力学への反論としたモノです。
でも、情報は観測によって初めて伝わる。そして観測には光速度を越えない、と私は認識しています。
山本氏が言うように、質量を持った物質が移動しないから・・・と言う説明は少しおかしいと思う。

さらにおかしい点は、「質量を持った物質が移動しないのなら」、という文章です。
じゃあ、質量が無ければ、超光速でも問題ないのか? ・・否、です。

質量を持たなければ、真空中では光速度にしかならない。事実、光の静止質量は零です。超光速たりうるのは、質量を持った物質だけですね。
つまりビッグバン宇宙開闢と共に最初から超光速であれば、それは超光速です。ただし、これを超光速度以下にするのは不可能です。

トドメは電磁気学の先進波に関する記述です。確かに、数学的には問題ない・・と言うより、式からは先進波が求められる。
これは何も電磁気学に限らず、物理法則はたいていの場合、時間対称な式で表される、と言って良い。

しかし実際的には・・・そんなモノがあるわけない!!

「まだ発見されていないが・・・」だって? 永遠に発見されないってば。(笑)

もし先進波が観測されれば、通信工学や情報工学に関するあらゆる記述に問題が生じるでしょう。
これはCausalでないシステムの存在を意味しますから。
Causalでないシステムが未来においてできるのなら、我々はその先進波でCausalでないシステムの設計を知りうる事になる。つまりそのシステムの情報が現在にも届きます。

要するに・・・未来予知マシーンができてしまうゼ(爆)。

結局、総合的に読んでみると、やっぱり情報の超光速を認めているようで、とっても変なのです。

ただし、誤解のないように今一度記しますが、超光速度は相対論それ自体は禁じていません。ですが、それ以前の普遍的な認識である因果律に違反します。相対論からの必然的な帰結としてそうなる、と言うこと。
 

この文章の中で、「素人研究者たちは、しばしば一般向けの科学解説書を読んだだけで相対論を理解したつもりになり−云々」
と書かれているが、それを批判する人間が理解していないのは、ちょっと問題だよなぁ。

間違いの無いように言っておくけど、アスペの実験で、情報の超光速伝送は出来ていない。
だから、これが反相対論にならないのは本当。アスペが相対論を否定してないのも本当。
でも情報を超光速で送れるのはマチガイ。
要は観測に要する時間の問題で、情報伝達は超光速とはならないということです。
この内容については、ここに書いてあります。

本文では相対論と特殊相対論が明確でないけど、確認された証拠が多いのは特殊相対論の方で、一般相対論は確認されているとは言い難いと思う。
(と言うか、マクロな意味ではまぁ十分確認されているけど、量子力学との整合性の問題が在る。いずれより正確な理論に書き換えられると思っています。)
けれど特殊相対論が十分に検証されてるのは本当です。(しかし「完全に」ではない。)
特殊相対性理論の証拠は枚挙にいとまがないけど、例はここに挙げてあります。
 

追記:どうもタキオンが発見されれば、それで超光速通信や超光速移動が可能だと思っていらっしゃる方が多い様ですが、さう云ふ方はMaxwell 方程式について学び直しませう(笑)。虚数質量のものをどうやって発見出来るのかは、知りませんけどね。
2002/4/20


次に志水一夫氏。

1.ツングースの大爆発

伝説:ツングースの大爆発はUFO。

真相:彗星の落下。論拠はアイザック・アジモフの著書

おい、アジモフは無いだろう、アジモフは。20世紀最大のSF作家の一人の名前を書き間違えちゃいかん。
正しくはアイザック・アシモフ(Isaac Asimov)です。アメリカ人の名前をドイツ語読みしたのかな?

すいません、別のページに書いてありました。「アジモフ」もあり、のようです。
ネイティブのアメリカ人が、この綴りから「アジモフ」と読むとは思えません(米国は一般に外国語を自国風に発音する)が、残念ながら Asimov本人には確認が取れません(^_^;;。

    多謝:TOMOさん    記:2001/1/26

更に追記:アシモフ自身の原著に、Azimofと読めと書いてあるそうです。また、米国人一般はなんて読むだろう?と思ってたら、「読めない!!」だそうです(^^;) 粗忽をお許し下さい。m(_)m

    多謝:渋谷さん    記:2002/4/20
 


2.デリーの鉄柱

伝説:デリーの錆びない鉄柱は地球外技術。

真相:これは高純度の純鉄であり、純鉄は錬鉄等より錆びにくいし、デリーは乾燥している。

これは真相がテレビで暴露されたんで知ってる人も多いでしょう。
実際には表面に出来たリンの化合物による防錆効果であり、その昔、当地は川があって乾燥していなかった事も解ってます。

でもねぇ、それ以前に、1500年も錆びなかったのが純鉄だからってのは、説明としては少々お粗末な感じを受けますよねぇ。
錬鉄よりも錆びにくいからって、純鉄が錆びない訳じゃないんだから。
まともに信じる気にはなれないのが普通って気がしますけどね。

何しろ、志水氏はあんまり書いてないので、間違いも少ない(^^)。

けどねぇ、自分の書いた本を証明の論拠にするのは、あんまり笑えませんゼ(^^)。
 

最後に皆神龍太郎氏。

1.中国四千年の気功

伝説:中国四千年の神秘、気功パワーは科学的に証明された。

真相:外気功が初めて中国に出現するのは、1970年代後半。科学的な研究は非常に少ない。

皆神氏は、中国の歴史を調べずに、気功について語ってしまっているようです。
こりゃトンデモ本の類とやり方がかわりませんぜ。

気功というのは、元々民間武術から来ています。ところで、中国における民間武術は迫害の歴史なのです。
中国は、ご存じのようにいくつかの民族があり、民族間の対立がありました。そして、そういうものから身を守る、或いは攻撃の手段として民間武術が生まれました。

ところが、これは為政者にとって都合が良い訳じゃない。で、古来より中国は禁武政策をとっていました。
極端な話、棒を持って道に立っていたからってんで捕まるぐらいだったんだな。当然、正史に民間武術は載ってません。

だから、外気功が書物(中国の正史)に出現するのは、文革以後になってます。これは当たり前なのだ。

気功は、そもそも硬気功と軟気功に分けられ、前者が武術、後者が医術っぽいものです。(大幅に端折ってます。)
硬気功にも遠当てとか発徑なんてものがあるから、外気功の歴史はそういう意味じゃ古い。

日本の宗教が土台になってるなんて書いてあったが、そういう一派もあるにせよ、3000ぐらいあるらしい中国気功流派の全てをそれで語るのは無理があるでしょう。

気功の武術起源を言うと、これに対して、中国拳法自体がオカルトだと思ってる人も多いようです。
これは、初めて日本に中国民間武術を紹介した松田隆智氏の書籍「神秘の拳法 八卦掌入門」の影響なんですな。

例えば:
「・・・五メートルを越える城壁に盗賊を追って一瞬に追いついたという。瞬間に次元を変えるテレポートか?・・・異次元に入る瞑想的な効果がある・・・」
これ以外にも、アフリカの呪術と同じだの、ワケのワカラン記述がある。(実はトンデモ本なんだな、これが。)

つまり、松田氏が中国拳法をオカルトにしたのであって、中国拳法が最初からオカルトなのではない。

さらに、肯定的な結果の出た科学的研究は無い、みたいな言い方をしています。確かに少ないし、手品師に騙されやすい科学者の図式は、ここでも生きています。でもあることはある。肯定的な結果もある。それを書かないのは反則だ。

さらに、どちらかというと気功とマジックショーを一緒にしたがるのは、気功師ではなく研究者の方なのだ。
つまり、ビンの中身を出すだの、封筒の中を読むだの、その類。なんで気功師にやらせんですかね?

近代気功が文革以後に現れたのも、医術への実践的な応用を「医学」と呼べる形にしたのも、最近であるのは本当。
でも外気功それ自体が新しいというのは誤りです。

ついでに言っておくと、日本に来ている中国の気功師に一流は少数派だと、ものの本に書いてありました。(確認はしてません)

皆神氏は、わりとよく調べているので、明らかな間違いは少ないです。突っ込んだ「皆神研究」が必要だ(^^;)。

  ここに一寸だけ。



トンデモと「と学会」の本に対する個人的な意見

私が見るに、やっぱり面白いのは山本氏の文章なんだな。
何故かと言うに、どうみても志水氏も皆神氏も「反オカルト」「反超常現象」でモノを書いてます。
だから、読んでいて面白味に欠けるところがある。

これに対し、山本氏は真のオカルトマニアであり、
「もしかしたらそういうこともあるかも知れないね。でもここで言ってることは違うよ。」
というノリです。そして、その種の本や情報のいい加減さを笑い飛ばしている。

確かに、私は今、このページで山本氏の調査の誤りなんかを示してる。
しかし、大部分は正しい。驚くべき知識、と言えるでしょう。私は、氏がトンデモである、と言ってるのではありません

毎度いろんな所で書いているのですが、偶にこのページだけしか見ない人も居るようなのでしつこく書きます。
正しいか否かは科学と非科学の境界線ではない!。本物のトンデモ(?)についてはここに書いています。

19世紀まで科学者はニュートン力学で全て記述できると信じていました。それが誤りと解ったのは相対論以降です。
つまり、厳密には間違っていた・・・けれど、断じてニュートンはトンデモではない。これまでも、これからも!

さらに誤解の無いように言っておくと、私は山本氏のファンである。でなければ、毎回「と学会」の本を買うわけないでしょう!

他の二人は、笑い飛ばすと言うより、否定主義的なんだな。だから面白くないんです。
そういうことは本職の科学者にでも任せておいて、「と学会」は、読者も一緒になって笑い飛ばせるような文章を書いて欲しいものです。

さらに、志水氏は某教授が嫌いらしくて、最近すごく攻撃してる。(この本にも出てきた。)
でも、やり方が少々下品に過ぎて、一緒になって笑えるシロモノじゃない。

あの教授は、確かにいい加減なところもあるし、最近では聖書の内容を知らずに聖書に関する本を書いたり(読む限りそうとしか思えない)してるが、要はどっちにしろ「笑い飛ばして」しまえば良いようなものなのだ。

なにも、下品にこき下ろすことは無かろうと思います。

追記:2006/9/16
なんだか知らないけど、このページを“反・と学会”みたいなのが引用する事があるみたいだから、もう一度言うけど、私はファンなんだからねw

中には、いわゆる副○ファンと思われる輩が、例の「アポロ」でぶっ飛んだ話を書くついでに、このページを引用したりしてるみたいですが、副○氏のアポロ話なんかこんなレベルじゃなくて、「議論の対象にすらなり得ない程に程度の低いもの」だと私は認識しているので、そこんとこ宜しくw


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Last Up date:2006/9/16