及第点レベル開発品

 子供の頃から色々なものを作りました。今考えると殆どはガラクタの筈ですが、記憶の中にのみ残るものはどれもすばらしかったような気がします。このページでは、以前は良く使っていたけど現役は引退したもの、あまりにマイナーな用途でたまにしか使わないもの、実験的に作ったものなどを掲載します。


1.SPECTRUM ANALYZER (1992年製作)


 ’93年はじめ頃に完成した、スペアナ(下)とパノラミック受信機(上)です。スペアナはずっと欲しかったのですが、とても高価で手が出ません。ハムジャーナルNo.40やエレクトロニクスライフ誌の佐藤 洋氏の連載記事に刺激を受けて自作しようとしましたが、第一局発の広帯域VCOが難物でなかなか使えるものが出来ませんでした。そんな時運良くCATVのチューナーユニットのジャンクを手に入れ、一気にこの問題が解決?したので作ったのがこれです。



スペック
周波数範囲 5−450MHz
Sweep Range フルスパン50MHz/div,最小10KHz/div 1,2,5ステップ 12レンジ
ゲイン平坦度 ?
(この頃は測定器が無くて測ってません)
分解能 フィルター 2KHz,25KHz,1MHzぐらい
LOGAMP 70dB程度
表示 オシロスコープのXY表示


 スペアナの内部です。主要部分はCATVチューナーユニットに含まれているため、簡素です。
ブロック図と回路図が見たい方はこちら

 スペクロスコープではなくて、スペクトラムアナライザーと立派な名前を付けたのには訳があります。このようなチューナーユニットでは局発にバリキャップによるVCOが用いられているため、制御電圧に対する発振周波数変化が直線的ではありません。そのため周波数軸が不正確でアナライザーと称するには問題があります。そこでこのスペアナは折れ線近似回路により1stLocalの直線性を補正してあります。


 10MHzのコムジェネを入力したときの、右端が0Hz、左端が500MHzのフルスパンの表示です。(50MHz/div) 20MHzから450MHzまで均等にスペクトルが並んでいることから、直線性補正回路の威力が分かります。これが無いと中心周波数を変えると掃引周波数幅が変動してしまい、信号の帯域幅を正確に知ることが出来ません。50MHz/divから200KHz/divまでは1stLocalで掃引しています。100KHz/divから10KHz/divまでは1stLocalをPLLでロックし、3rdLocalで掃引しています。3rdLocalには直線性補正回路は付いていませんが、周波数可変範囲が狭いため十分な直線性が得られます。
(1stLocalと3rdLocalの特性)

 パノラミック受信機は、スペクトラムアナライザーで受信電波のスペクトルを見ながら出ている電波を受信するものです。スペアナのSweep Rangeを100KHz/div(±500KHz)に設定し、電波の出ている周波数を表示で確認して受信機のダイヤルを合わせるとその電波が受信できます。最近のカーソルを合わせて入力するだけのシステムに対してはちょっと面度くさいですが、十分役目を果たします。


 構成はスペアナの2ndIF45MHzを取り出しWFM,NFM,AMを復調します。粗大ゴミ置き場に捨ててあったFMチューナを改造しました。局発の可変範囲を狭めて45±0.5MHzが周波数インジケータ一杯で選局できます。スペアナに使ってあるCATVチューナユニットの特性で20MHz以下では感度が落ちますが、短波や中波も受信できました。はじめてパノラミック受信が体験できて結構面白く遊びました。


 現在は現役を引退し部屋の隅に積んでありますが、今見るとこの頃は馬力があったなと思います。今では面度くさくてこんな立派なパネルのレタリングはできません。もっぱらテプラをペタペタです。


2.10.48GHz 0.1W送信機 (1998年製作 未完成)


 元はPLLを使わずAFCで周波数安定化する回路サンプルとして購入したジャンクです。11.055GHzのガンダイオード発振器の出力を2105MHzの発振器出力と5倍ハーモニクスミックスし、530MHzのディスクリミネータでAFCをかけて安定化するものです。10.48GHzまで周波数を下げて送信機として組み直してみました。


 出力は導波管でWRJ−10のフランジが右側面にあります。パネル面のセンターメータはAFCの制御電圧指示で周波数変動を制御している様子を観察するために付いています。(実用的意味はありません。)音声と映像信号でFM変調を掛ける予定でパネル面にピンジャック端子がありますが、この部分は未完成です。アマチュア無線やっているわけでもありませんし、飽きっぽい性格なので、変調動作の確認をしたところで止めてしまいました。



 左は内部シャーシの上面で、ガンダイオードとアイソレータ、発振出力の一部を取り出す方向性結合器、1990MHz PLL発振器、AFCを掛けるガンダイオード用電源回路があります。
 右は内部シャーシ下面、ハーモニクスミクサと530MHzディスクリミネータがあります。
 ガンダイオードは1SG18 定格12.5V 650mA これらのユニットはNEC製で1977年7月製造です。

 ブロック図から分かるように、10.48GHzのガンダイオード発振出力の一部と1990MHzのPLL発振器出力をハーモニクスミクサでミックスし、530MHzの信号を得ます。530MHzのディスクリミネータによってAFCのための制御電圧を作り、ガンダイオードの電源電圧を制御します。オリジナルの回路では、ガンダイオードの電源電圧は一定でバラクタによってAFCを掛けていましたが、ガンダイオードの発振周波数を下げるためダイオードホルダの位置を調整したところ、温度変化によって周波数が大きく変動するようになってしまいました。仕方ないので、周波数制御量の大きいガンダイオードの電源電圧にAFCを掛ける回路に改造しました。本来AFC用のバラクタはFM変調用に使います。周波数の変更により出力が下がってしまいましたので、意を決してスタブねじを調整したところ、21.5dBm(140mW)も得られました。但し良いことばかりではなくて、電源投入後の発振立ち上がり悪く、ガンダイオードが暖まらないと発振しなくなってしまいました。


 オリジナルの2105MHzXtal発振器です。116.944MHzの5次オーバートーン発振を18逓倍して2105MHzを得ます。しっかりしたシールドケースに入った大変重たいものです。送信機を作るにあたってこの発振器の周波数を1990MHzに変更する必要がありましたが、これの改造はとても面倒なので、新たにPLLの発振器を用意しました。

 PLL発振器はだいぶ以前に市場に出回ったスワロー誘電のVCOを使った、セブロン電子製?のものが手元にありましたので、VCOをMWO−20に変更しします。1990MHzで出力7dBm得られました。
回路は気に入らないところがありますので、一部修正してあります。基板のみでシールドはまったくしていませんが1990MHzの直接発振なので、このままで十分です。シールドケースがありませんのでオリジナルと比べてかなりの軽量化が出来ます。


 変調動作の確認に用いた受信ユニットです。衛星通信用LNBとBSチューナーユニットの組み合わせです。LNBの入力周波数は10.95から11.7GHzで、10.48GHzは範囲外ですので感度は非常に悪いのですが、室内での実験には十分です。LNBの局発は10GHzですから、480MHzに変換されます。BSチューナユニットも入力周波数範囲外ですのでフロントエンドのフィルターを交換して受信可能にしました。この受信ユニットで音声での送信を確認しました。

 AFCによる周波数安定化はPLLのようにサイドバンドの抑圧効果はありませんが、所詮元になる発振器のスペクトル純度が良くないとPLLでも使い物になりませんので、優劣は良く分かりません。ただ周波数が安定するまでの時間と周波数精度はPLLに軍配が上がるのではないでしょうか?
 電源はAC100Vですが、内部は24Vのスイッチングギュレータで動いていますので、DC24VでもOKです。



3.YTO,YTFコントローラ (1999年製作)


 YIG(Yttrium Iron Garnet)を使った発振器(YTO)やフィルター(YTF)はマイクロ波回路には重要な部品です。今のところ、広帯域で周波数直線性の良いデバイスはこれしか考えられません。一般的な部品ではありませんが、ハムフェアで入手したのでコントローラを作りました。

 YIG,YTFの中心周波数設定とスイープができます。中心周波数はデジタル表示、スイープ幅は10回転ボリュームのダイヤル目盛で設定します。(回路図はこちら)スイープ周波数はリードアウトオシロで見ることを前提に25Hzになっているため、フルスパンでの掃引は精度が出ません。(YTO,YTFはコイルに流す電流で周波数制御します。インダクタンスの駆動はどうもうまくいきません。私の苦手の一つです。)最近ストレージオシロ(アナログストレージ テクトロ434)を手に入れたので、1Hzぐらいに修正したいと思っています。
 YIGとディテクターを組み合わせることでバンドパスフィルターの調整に使えます。本体の上にある小さい箱はディテクター出力を対数圧縮するLOGアンプです。YTFとディテクターを組み合わせるとフィルター掃引型スペクトロスコープになります。


 コントローラと組み合わせて使う部品です。YTOは3.8から8.2GHz、YTFは3から28GHzをカバーします。ジャンクで入手したのですが、ア○○○○○トの測定器の交換部品と推定されます。ディテクターはHP8473D(新品です!)で10MHzから33GHzまで検出できますので、YTFと組み合わせると
3から28GHzをカバーする鉱石ラジオ!となります。右下の部品はミキサーです。YTO、YTFを組み合わせるとスペアナのフロンドエンドを構成できます。(参考までにTR4133Bのブロック図
 右上の部品はこれが完成後に入手した、1から18GHzまでのコムジェネです。実はYTFの周波数範囲は信号源が無かったため計算上の推定値ですが、20GHzまではこのコムジェネで動作を確認することができました。


4.0−V−1ラジオ (1991年製作)


 とうとうモービルハム誌も2000年3月号をもって休刊になってしまいました。ハムジャーナル誌が休刊になった時はショックでしたが、今回はついに来るべきものが来たな、と云う感じです。アマチュア無線もおやじの遊びになってしまっては終わりです。CQ誌は大丈夫でしょうか?
 これはモービルハム誌でオートダインが流行ったとき作った物です。手元の資料をひっくり返してみると、’90年2月号で12AF6を使ったオートダインが掲載されたのが発端でしょうか?。これもその記事のオートダインのデザインに影響されています。しかし中身は中波ラジオでアマチュア無線とは関係ありません。

 原型はANTIQUE ELECTRONIC SUPPLYのOne Tube Regenerative Radio Kitです。木の板の上に組むキットでしたが、モービルハム誌のデザインに影響されてこのようになってしまいました。アンテナコイルはキットではボール紙の筒に巻いて作るようになっていましたが、30φのベークパイプを切って作りました。電源は乾電池で、フィラメント用にSUM2 1本、+B用に006P 4本を使います。真空管は最初1G4GTだったのですが、+Bとフィラメントをショートさせてフィラメントを切ってしまい代わりの1G4GTが見つからなかったので、入手できた1G6GTに変更しました。その際、1G4GTは3極管1個なので0−V−0だったのですが1G6GTは3極管2個の複合管なので、低周波増幅を1段追加して0−V−1となりました。’90から’91年頃作った筈なのですが、回路図などの記録が見当たりません。クリスタルイヤホンで聞きますが感度はかなり良くて、屋外ではアンテナ線無しでも受信できました。このラジオをスピーカーで聞くためのアンプも作りましたが、今ではジャンクをしまってある?ダンボール箱の底に沈んでいます。


5.10進3桁カウンター (1999年製作)


 計数放電管デカトロンを3本使ったカウンターです。実用的な意味はまったく無く、単なる技術サンプルです。

 2本のMT管は12AT7でデカトロンをカスケード接続するための段間増幅器と、入力のTTLレベルをデカトロンの入力レベルに合わせる入力段増幅器に使っています。入力パルスが入る度に放電が電極間を移動してとても綺麗です。デカトロンの動作には350Vの電圧が必要ですが、DC−DCコンバータを内臓しているため電源は12V単一で動作します。(部分的ですが回路図はこちら