展示室9   長 唄 「蜘蛛拍子舞」





(貞光)藤間金弥師 (妻菊)藤間弥栄松 (頼光)藤間富公衛師


この作品は、妖怪変化が出没する、ワクワクするような舞踊劇です。
年を経た女郎蜘蛛が、美しい白拍子に化けて、源頼光に近づこうとし
ますが、宝刀の威徳と忠臣・貞光の働きにより、遂に正体を現して立
ち回りになると言う粗筋です。「拍子舞」というのは、今ならさしず
め、「ラップ・ミュージック」と言う所でしょう。三味線に合わせて
唄うように台詞を言いながら踊るという、かなり高度なテクニックを
必要とします。この拍子舞の部分が、前半の山場になっています。後
半はいよいよ見現しになっての大立ち回りで、蜘蛛の精が、千筋の糸
を何度となく投げ掛け、幕切れには下の写真のように、舞台一面に蜘
蛛の糸が落ちてくる仕掛けになっています。美しい白拍子が恐ろしい
蜘蛛の精に変身したり、大きな蜘蛛が天上から降りてきたりと、大変
ドラマチックに出来ているので、僕も子供の頃に初めて観た時には、
興奮の余りなかなか寝られなかった位でした。そして2度目からは、
舞台の袖に待機していて、幕が降りた瞬間舞台に飛んでいって、蜘蛛
の糸をかき集めるのが習慣になりました。別に何に使う訳でもないの
ですが、子供心に無性に欲しくてたまらなかったのです。お蔭でこの
作品が出た後は、子供部屋の押入れは蜘蛛の糸だらけになったもので
す。僕が日本舞踊や歌舞伎を好きになったのは、こうしたスペクタク
ルな作品に、子供の頃に数多く出会った為かもしれません。   





(貞光)藤間金弥師    (女郎蜘蛛の精)藤間弥栄松    (頼光)藤間富公衛師



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