展示室14   清 元 「うかれ坊主」







この作品は、常磐津の「願人坊主」を清元に直して、更に清元の「花
の雲助」のまぜこぜ節を挿入したもので、六代目尾上菊五郎丈による
新作と言っても良いでしょう。褌1本の裸体に薄物を引っ掛けただけ
の姿で、手桶(金を貰って、身代わりに水垢離をする為の桶です)を
持って出ます。これまでの手当たり次第の女性遍歴を、チョボクレで
面白おかしく踊った後、いよいよ眼目の「まぜこぜ節」になるのです
が、手足丸出しの状態で、次から次へと色々な登場人物を(狐や蝶々
まで)演じ分けなければならないので、舞踊家にとっては非常に厳し
い、皮肉な踊りと言えるでしょう。この後、悪玉の面を着けての、更
に激しい早間の踊りが続きます。               






この作品を上演する数ヶ月前に、たまたま夏期講習会で、先代のお家
元から直に教えを受けることが出来ました。その時のお家元の、形・
間合い・雰囲気などを、頭の中でなぞりながら踊る事が出来たのは、
本当に幸運だったと思います。幕が降りた途端、「モウ、ダメ!」と
いう位足腰がガタガタになってしまいましたが、それでも「足腰が丈
夫な内にもう一度踊ってみたい」と思う程、魅力的な踊りです。「貴
方は男だから、肉(肌色のスパッツみたいなものです)なんか着ない
で、素っ裸で踊んなさいヨ!」という、先輩達の言葉に乗せられて、
全身を真っ白に塗って出たのも、今では懐かしい楽しい思い出です。
僕が綺麗な衣裳で踊らないとご機嫌が悪かった亡母が、何故かこの時
ばかりは、とても喜んでくれました。きっと観ていて、楽しかったん
でしょうネ・・・                      







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