展示室15   清 元 「夕  立」







この作品は歌舞伎狂言の、小悪党「小猿七之助」と御守殿「滝川」と
の、濡れ場を舞踊化したものですが、使用曲の「夕立」は、もともと
は別の芝居の為に作曲されたものなのです。普通は、御守殿1人立ち
の踊りか、御守殿と粋な男との、スッキリとした色模様が展開するの
ですが、時たまこのように、七之助と滝川の芝居に当てはめて上演す
る場合もあります。歌詞をよく聞くと、踊りの内容と合っていない部
分も多いのですが、清元の精髄を聞かせるような艶やかなこの曲が、
七之助が滝川をレイプするシーンに何故か雰囲気がピッタリなので、
こうした趣向が喜ばれているものと思われます。一般のお浚い会等で
は滅多にやらない演出なのですが、この時は「藤盛会」長崎支部の公
演で、素踊りの品のイイ演目が多かったので、師匠とも相談の上、思
い切ってやってみようということになりました。       
 。





まるでテレビの時代劇の悪代官みたいに、女性の帯をクルクル解いて
匕首で脅したり、当身を喰らわせて小屋の中に引きずり込んだり、お
上品なお客様なら目を剥くような内容です。その上、辱められた筈の
滝川が、七之助に一緒に逃げてと迫るという、意外な展開のオマケ付
きなのですから、PTAからクレームが付いても可笑しくない位の、
きわどさです。僕が敢えてこういう演目を出したのは、歌舞伎や日本
舞踊の懐の深さを知って欲しかったからです。上は神仏や天上人から
下は夜鷹や極悪人まで、ありとあらゆる人達の姿を活き活きと描き出
しているのが、歌舞伎であり日本舞踊なのです。こうした生々しい不
道徳なシーンや、おぞましい殺戮シーンまで、楽しく美しい舞台に昇
華してしまう・・・そんな日本舞踊の素晴らしさを、解って欲しいの
です。案の定この作品は、良くも悪くも当日一番の話題作になってし
まったようです!(笑)                    







「古典舞踊のサロン」TOPへ