展示室11   清元・義太夫 「吉 野 山」





(忠信)藤間喜州              (静御前)藤間由喜将


この作品は、文楽や歌舞伎の名作、「義経千本桜」の一場面で、恋し
い源義経のもとへと急ぐ静御前と、供の佐藤忠信との道行を描いてい
ます。元々は義太夫だけの「道行初音旅」という作品だったのを、清
元で新しく作り直したものですが、忠信の「戦物語」などの美味しい
所は、原作をそのまま取り入れてありますので、清元だけで上演する
ことも、義太夫との掛け合いで上演することも出来るようになってい
ます。場所は桜満開の吉野山。静が鼓を打つと忠信が現れるのは、実
はこの忠信は狐が化けたもので、親狐の皮が張られた鼓の音に引き寄
せられるからだ・・・という、複線が張られています。僕が忠信を演
じたのは、古典舞踊研究会「かえで会」の時でしたから、いつもとは
趣向を変えて、車鬢の鬘に鼻隈をとって、強さを強調してみました。
したがって静も、バランスを取るために、赤姫(とはいっても、袖丈
は短めですが)に帽子付きの蓑鬘という、古風な扮装にして貰いまし
た。僕はこの作品の主役は、あくまでも静御前だと思っているので、
この時も先輩の由喜将さんに静を演じて貰い、主従の道行である事を
ハッキリと前面に出した演出で演じました。幕切れは、黒御簾の下座
に乗ってスッキリと引っ込む東京風とは異なり、衣裳がブッ返って、
狐の正体を現して「狐六法」で引っ込むのが、長崎では一般的です。
通し狂言の場合は、あまりにもバレバレなのはどうかと思いますが、
舞踊会で単独に上演する場合は、理屈抜きにお客様が喜ぶこのやり方
も、まんざら悪くはないと思います。さて僕の場合はどうだったかと
言いますと、引っ込みは止めて、本行通りに板付きで幕にしました。







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