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仮定を前提とした主張
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With the Japanese delegation visiting, Ma has sought to paint warming relations with China as a boon for Japan, which is concerned that any cross-strait conflict would involve Tokyo or tip the balance of regional power too far toward Beijing.

上の英文の中の以下の文構造に注目してみましょう。

any cross-strait conflict would involve Tokyo or tip the balance of regional power too far toward Beijing

この部分は、「節」なので完全な英文構造になっています。そして、V(動詞)の部分を見てみると、wouldとなっていますね。これは、助動詞willの過去形の形です。ただ、その他の部分から考えて、過去の意味を持っているわけではないことがわかります。では、どのような意味を持っているのでしょうか?

助動詞は、基本的に「発言者の主張」を表す場合に使います。つまり、事実ではなく、発言者が頭の中で考えただけのことを表現する場合に、助動詞を使うわけです。そして、その考え(主張)の様相によって、「確定性を表すwill」「可能性を表すcan」「蓋然性を表すmay」「必然性を表すmust」などを使い分けます。

ただ、これらの助動詞を使って主張を表現する際に、何らかの「仮定の話」を前提として主張する場合には、助動詞を過去形の形にして、主張の度合いを弱めます。仮の話が前提ですから、弱く主張するわけですね。willwouldに、cancouldに、maymightにします(mustは必然性を表すので弱めることはできません)。

以上のことがわかっていれば、上の英文でwouldが使われている意味がわかります。つまり、「確定性」の主張をするwillが、仮定を前提としているためにwouldになっているわけですね。「もし海峡をまたいだ紛争が起こったなら、それはきっと日本政府を巻き込んだり、地域の権力バランスを大きく中国政府に傾けるだろう。」ということになります。名詞Aの部分に仮定が表現されているわけです。

それでは、同じように「仮定を前提とした主張」を表している英文を見てみましょう。

<例文1>

A missile fired by North Korea at the U.S. mainland would not pass over Japan, but one targeted at Hawaii or Guam would.

fire<動詞3>発射する
mainland<名詞>本土
pass<動詞1>通過する
target<動詞3>標的とする

イメージ1+「副-前置詞句」が2つあります。

さて、V(動詞)の部分に注目してください。wouldが使われていますね。これもやはり、確定性を表すwillという助動詞が、仮定を前提とした主張を表すためにwouldになっているわけです。仮定は、ifなどの形では表現されていませんが、名詞Aの部分が仮定を表していると考えることができます。

A missile fired by North Korea at the U.S. mainland would not pass over Japan, but one targeted at Hawaii or Guam would.

「北朝鮮によってアメリカ本土に向けてミサイルが発射されても、それは日本の上空を通過しないだろうが、ハワイやグアムに向けて発射されたら、通過するだろう。」

<例文2>

The LDP's plan could drag down consumption and cannot be described as a well-thought-out pump-priming measure.        

drag down<動詞3+副詞>引きずり降ろす
consumption<名詞>消費
describe<動詞3>言う
well-thought-out<形容詞>よく考え抜かれた
pump-priming<形容詞>景気を刺激する
measure<名詞>手段

イメージ3とイメージ1+「副-前置詞句」です。

イメージ3のV(動詞)は、couldが使われています。これは、可能性の主張を表すcanの過去形ですね。この名詞Aの部分に仮定が含まれているということです。「自民党の計画は、もし実行されれば、消費を引き落とす可能性があるだろう。」という主張を表します。

そして、後半の部分は、canのままであることにも注意してください。この部分は、仮定の話を前提としているわけではなく、「その計画は、よく考え抜かれた景気刺激策ということはできない。」という主張です。前半は、実行されたという仮定の元での主張ですが、後半は、計画そのものに対する主張を表しています。

The LDP's plan could drag down consumption and cannot be described as a well-thought-out pump-priming measure.        

「自民党の計画は、実行されれば消費を引き落とす可能性があるので、よく考え抜かれた景気刺激策とは言えない。」

<例文3>

A referendum would have provided an ideal opportunity to dig into the problem and seriously discuss the propriety of the dam project through public debate.

referendum<名詞>住民投票
provide<動詞3>提供する
ideal<形容詞>理想的な
opportunity<名詞>機会
dig<動詞1>掘る
seriously<副詞>真剣に
discuss<動詞3>議論する
propriety<名詞>妥当性
debate<名詞>議論

イメージ3です。

V(動詞)の部分に注目してください。確定性を表す助動詞willの過去形のwouldが使われています。しかも「助動詞+完了形」の形になっているので、「過去に関する主張」を表す形ですね。この場合も、名詞Aの部分に仮定が含まれていると考えます。「もし住民投票が行われていたら、提供したであろう。」という意味になります。

A referendum would have provided an ideal opportunity to dig into the problem and seriously discuss the propriety of the dam project through public debate.

「住民投票が行われていたら、公開討論を通じてその問題に深く切り込み、ダム計画の妥当性を真剣に議論する理想的な機会を提供したであろう。」