爆発事故
DVD音声アンプも完成、AVセレクタも改造を終わり、くつろいで映画を見ていました。その時です、”パーン”と云う爆発音が部屋に鳴り響きました。驚いて辺りを見回しましたが別に何かが爆発した様子はありません。冷静になって思い起こすと以前にも聞いたことのある爆発音です。そう、電解コンデンサが破裂した音。急いで部屋の中の機器を点検します。TV、DVD、オーディオアンプは正常に動いています。パソコンも異常無し、その他の機器もべつに異常があるようには見えません。常時接続しているACアダプタ内部のコンデンサかとも思いましたが、密閉した箱の中で爆発したような音ではありませんでした。??
しばらく探していましたが、なんとなく部屋が暗い事に気が付きました。上を見上げるとインバータ照明の一部が暗いのです。カバーを外してみると電解コンデンサが破裂したとき特有の匂いがしました。果たして、4灯ある蛍光灯の内、1灯が点灯していません。どうやら1台のインバータが故障したようです。発火するような様子は無かったので、その日は放置しておきました。(右上が故障したインバータ)
次の日、故障したインバータを分解しました。みごとに2.2μF160Vの電解コンデンサが破裂して、電解液と内容物を撒き散らしています。ヒューズも溶断していますので、回路はかなりのダメージを受けているものと推測されます。
照明器具はNECホームエレクトロニクス製の4FV48、製造は’91年12月と読めます。今は分社化されてNECライティングになっているようですが、ホームページを見ますと照明器具の寿命は8〜10年(40000時間)で交換を勧めているようです。しかし、他の3灯は生きてますし外観も綺麗です。我が家の機器は60年前の老兵も現役で働いていますので、10年ぐらいでリタイアは許されません。もちろん修理することにしました。最初はインバータユニットだけ購入して交換することも考えましたが、メーカに電話して対応の悪い担当者と話をするのも面倒なので、故障した回路を直すことにしました。
まず、破裂したコンデンサを交換して、ヒューズも取り替えましたが点灯しません。やはりかなりのダメージのようです。この時点で故障の原因はわかりました。蛍光灯に行く配線のハンダ付けがとれています。蛍光灯への接続不良により無負荷状態でインバータが異常動作したのが原因です。ハンダ付けし直しましたが、配線へのはんだの載りがいまいちなので、最初からしっかりとハンダ付けされていなかったようです。他のインバータをチェックしましたが問題ありませんでしたので、このインバータのみ出来が悪かったのでしょう。それが熱と応力により次第に接続不良となったものと思われます。まあ約10年動作したのですから、メーカに責任を求めるのは酷です。
修理を始める前に、まず回路図を起こします。片面基板なので簡単です。デジカメでハンダ面の写真を取り、ソフトで左右を反転し画像の明るさ、コントラストを調節して印刷することで、部品面よりみた配線パターンが完成します。その上に部品を書きこむことで簡単に回路が読み取れます。
回路は555の発振でパワーMOSをON,OFFしてコイルで昇圧、蛍光灯を放電させて点灯しているようです。インバータは高電圧を発生しますし、トランスレス回路ですので感電にびくびくしながら、まず555の電源電圧を測ります。電圧出ていません。電源を作っているツェナーダイオードZD2が死んでいるようです。外して抵抗を測ってみると短絡しています。交換して555のみ外部電源で動かしてみると発振します。しかし、異常に熱くなりまので、何とか動作していますがお亡くなりになる寸前のようです。555も交換します。今度はAC100VつないでスイッチON。点灯しようとはしますが続きません。周波数調整VRを調整していましたら、今度はVRがバラバラに分解しました。とほほ!抵抗値が分かりませんのでテスターで測ると28kΩ??一応50kΩに交換しました。再度調整しましたがやはり点灯しません。555の電圧供給が止まって発振が停止するようです。555の電源に付いている電解コンデンサC11を取り外して容量をはかると10μFの筈が5μFしかありません。これも交換したところ555が発振を続けるところまでこぎつけました。もう一度VRを調整し直すと、やりました明るくなりました。
そのまま少しの間点灯させていましたが、変な匂いがします。電源の平滑コンデンサC2(47μF180V)のコンデンサが加熱しています。オシロでコンデンサの電圧を観察すると、ブリッジ整流後の波形がそのまま出ています。取り外して容量を測ると0μF、完全に死んでいます。よく動くものです。これも交換します。電圧は見なれた平滑コンデンサの波形になりました。加熱もしません。
これで故障までのプロセスが分かりました。蛍光灯への接続不良により異常動作が続き、電源の平滑コンデンサC2に定格以上のリップル電流が流れて加熱しました。時間が経つにつれ電解コンデンサの電解液が蒸発、容量が低下しますますリップル電流が増加します。最後にはこの電圧変動が電源立ち上げ用のコンデンサC3に流れて、ツェナーダイオードZD2を破壊して自身も爆発したものと思われます。
今回の修理に使用した交換部品は最終的には全て手持ちで賄えましたので、正味の修理費用はゼロです。しかし原因調査のためMOSTrや555を購入しましたので、交通費と部品代で2000円といったところでしょうか?こうして手持ちの部品が増えて行きます。まあ、回路図も修理の要領も分かりましたし、補修部品もありますので他のインバータが故障してもすぐ直せます。あと10年ぐらいは働いてもらえるかな?
また、今回の故障で照明器具の回路はかなり過酷な環境で動作していることが分かりました。蛍光灯は熱の他に思ったより紫外線を出しているようです。配線を束ねるインシュロックは半年持ちません。柔軟性を失いバラバラになります。配線の被覆は通常の電線より耐久性があるようです。配線の被覆が劣化したときは寿命でしょう。