Radio Control 

 ラジコンの無線機のコレクションが増えてきたので、独立させました。現在のプロポーショナル方式に至るまでの特に1960年代の試行錯誤はユニークで興味深いものがあります。開発の歴史はこちら。最近はサーボ制御もデジタル化されつつあるようですが、今日の技術が整った状況で作られた物はあまり面白くないので調べる気も起こりません。やはりアナログ技術を駆使した?高度成長時代の製品に人間味を感じるのは年のせいでしょうか?


1.シングルシステム


 A1方式

 三鴻通信 Super Teletrol


 なんと三鴻通信の1955年製A1送信機Super Teletrol T−271Bです。A1方式ですからCWと同様に電波の断続を行うだけです。しかし、昭和30年に日本にメーカー製ラジコン無線機があったとは驚きです。OSやKOより古いかもしれません。テレビ放送が始まったのが昭和28年で、ラジコンで遊ぶ日本人など皆無に近い時代でしょうから輸出用と思われます。ケースはハンマートーン仕上げでなかなか上等です。しかし、周波数は27.120MCで、輸出用なら27.255MCが普通でしょうから、少量でも国内向けに製造されたと思われる希少な1台です。

 三鴻通信はラジコン技術の創刊号にも出てこない謎のメーカで、私の持っている電波科学の1960年4月号にしか資料がありません。その本では真空管は5極管の3S4 1本となっていますが、これは双3極管3A5によるパラ接続になっています。A電池は1.5Vの平角3号、B電池は67.5VのBL−145 2個でこれを入れると重量は2.3kgにもなります。さすがに真空管で出力は1Wもあります。


 構造も簡単ですからレストアして動かしてみました。A電池は単1電池、B電池は単3電池8本の12VからDC−DCコンバータで135Vに昇圧して代わりにしています。発振回路の電圧をON,OFFしてますので、通信機のCWモードで聞くとキーを押す度、ピュー、ピューと発振が立ち上がる際の周波数変化がわかります。



 この送信機とペアになるR−272A受信機です。メーカー名はLafayeteeとなっていますが、プリント基板にはちゃんとJapanと印刷してありますし、外観はR−272Aそのものです。ブランド名がSuper Teletralと1文字違うのがちょっと気になりますが、三鴻通信製に間違い無いでしょう。米国帰りの受信機ですから、約半世紀振りの再会って所ですか。このぐらいになるとビンテージと呼んでも良さそうです。3S4による単球超再生式受信機ですが、B電源に直列にリレーが入っていて、電波を受信するとクエンチング発振が変化し電流が変動するのを検出する最も古い方式です。

 残念なことはリレーが無くなっていて他の受信機から流用してレストアしたことです。単球の簡単な回路ですが調整には手を焼きました。クエンチング発振の変化による電流変動でリレーをON,OFFする訳ですから非常に不安定で、アンテナに触っただけでも動かなくなります。結局リレーコイルに並列に12kΩを接続してやっと動くようになりました。使用したリレーのコイル抵抗は約5kΩで、本来付いていたはずのRL−1が3.5kΩですから、ちょうど計算は合うようです。電源はA電源1.5V、B電源67.5V。
 この方式は感度が悪く、不安定で下記の日乃出電工14ERのような雑音整流式が主流になったようです。先人の苦労が偲ばれます。


 日乃出電工 TYPE14ER



 A1用の受信機、日乃出電工製TYPE14ER、時代はT−271Bより数年後の1960年前後の物です。双3極管の3A5とダイオード2個使った、超再生雑音整流式です。超再生式受信機では電波を受信していないとクエンチング発振ノイズが発生していますから、これを整流してリレードライブ管のグリッドバイアスとしています。電波を受信するとクエンチング発振ノイズが無くなりますので、リレーが動作します。

 実際に動かしてみますと、後年のA3用超再生受信機と比較して選択度が良く、100KHz離れると分離できます。A1キャリア式ですから、このぐらいの選択度が無いとノイズに弱くて使い物にならなかったのか分かりませんが、予想外に選択度が良いのに驚きました。再生回路は真空管の方が合っていますから、真空管回路であるためかもしてませんが?
 この受信機も本体は小さいですが、A,B2種類の電源を必要として、特にB電源には67.5から90V必要ですから、搭載物の殆どは電池が占めていたことになります。

 CITIZENSHIP 465MHz 送受信機



 
アメリカでラジコンが盛んになったのは戦後すぐですが、まだ誰も電波を勝手に出して良いわけは無くアマチュア無線の免許を持った一部の人しか出来ませんでした。(53MHz帯が使われたらしいです。)
 もっと自由に電波を使えるように、シチズンバンドが設定され、登録制度が出来たのが1950年の事です。この時開放されたのが、27MHzとなぜか465MHz帯でした。さすがにアメリカは豊かで技術力もあるので、すぐHobby用に465MHzの送受信機をメーカーが生産を始めました。この送受信機は1950年代の製品です。送信機はMODEL CC サブミニチュア管の5703で発振しそのまま送信します。目玉のように見えるのはネオン管で、電波を出しているとき点灯します。CC−1では廃止されていますので、この送信機は1950年代でもかなり早い時期の製品と思われます。そのためか、送信機の表面にはプロ用の送信機のように赤字の注意書きが沢山書いてあります。こんな送信機は他に無いと思います。
 受信機はMODEL TC−465 サブミニチュア管の6AK4とトランジスタ1石の超再生回路で、トランジスタが用いられていますので1950年代も後半の製品と思われます。受信機のアンテナはダイポールアンテナで送信機は八木アンテナが用いられていますので、指向性が高くいつも飛行機を追いかけながら操縦するわけですから、普及はしなかった筈です。その他の465MHzの無線機としてはBABCOCKからぐらいしか出ていないと思います。



 A2方式

 電波の断続だとノイズも信号として検出してしまいますので、変調を掛けてその変調の有無を信号として送るようになりました。電波形式としてはA2になります。

 BABCOCK BCT−2 BCR−3



 1950年代中頃の高級無線機バブコック製の送信機BCT−2と受信機BCR−3です。バブコックは日本の各メーカがお手本としたメーカの一つです。
 送信機はネオン管で変調用の低周波発振を行い3V4で増幅します。3A4で27.255MHzのクリスタルの発振を行い、この発振回路に直接変調を掛けるようになっています。クリスタルとはいえ発振回路に直接変調を掛けるわけですから不安定で調整が難しい送信機です。アンテナも発振回路に直接接続されるので、アンテナを触っただけでも不安定になります。発振回路への負担は大きく、3A4は電池管なのにかなり熱くなります。確かアマチュア無線では発振回路への直接変調は禁止されていた筈です。発振回路と変調回路が分離した下記のMIN−Xが後年の製品だけあって優れています。(なんで真空管1本ケチったんでしょう?)
 電源は真空管フィラメント用A電池が単1電池2個、B電池は67.5Vの電池を2個使います。

 受信機は真空管を贅沢に使用しています。双3極管3A5の片側で超再生検波を行い、1U5と3A5のもう半分で2段低周波増幅し、3V4でリレーを駆動します。リレーは円筒形でMT7ピンソケットで接続されており容易に交換可能になっています。リレーも消耗品だったためでしょう。
 電池も沢山必要です。真空管フィラメント用A電池は1.5Vは0.37Aも流れますので、単1ぐらい積まないとすぐ無くなってしまいます。B電池は67.5V。驚くのはC電池も必要なことで、リレー駆動用の3V4のグリッドバイアス用に15Vの電池を使用します。(電流は殆ど流れないので小型の積層電池で充分ですが!)
 C電池なんて大正末から昭和初期のラジオぐらいしか使われないものと思っていました。リレー駆動なんて真空管では苦手の動作をさせるためにどうしても必要になったのでしょう。トランジスタが出現して安定して使えるようになると、リレー駆動が最初にトランジスタに置きかえられました。

 動作テストは行いましたがあまりに電池が必要なのと、この受信機にはエスケープメントしか似合わないので受信機セットは作りませんでした。


 MIN−X POWER MASTER


 付属していた67.5VのB電池。残念ながらA電池にどのような物が使われていたのかのは不明。

 1950年代末から1960年代初めのA3方式の真空管式シングル送信機MIN Xです。双3極MT管の3A5とロクタル管の3D6の二球式です。3A5でクリスタル発振と変調用の低周波発振を行います。3D6で電力増幅、変調を行います。入手したとき3D6は死んでいて、入手に苦労しました。
 真空管式ですのでフィラメント用のA電池とプレート用のB電池が必要です。A電池は単一電池を2本並列にして使用しています。B電池は67.5Vの電池を2個内蔵して、プレート電圧を67.5Vと135Vに切り換えられるようになっていますが、67.5V電池はほぼ入手不可能ですので、12Vのニッカド電池を用いて、DC−DCコンバータで12Vから135Vに昇圧して使用しています。12VのニッカドとDC−DCコンバータは使用不能になった67.5V電池の中身を取り除いて内蔵してあります。


 この送信機にはアンテナの出力の一部を取り出してランプを点灯させるタイプのチューニングインジケータがついています。このランプが断線していて交換可能な部品を探したのですが真空管より入手困難なので、倍電圧整流して白色LEDを点灯させてみました。本来付いていたランプを分解し、ガラス部分を利用して中に白色LEDを組みこみました。(左の写真は動作中です。点灯しているのが分かりますでしょうか?)このインジケータはなかなか便利で、出力同調回路の調整にも使えますし、電波の送信状態が良くわかります。アンテナは無くなっていましたので、手持ちのロッドアンテナ等で自作しました。



 送信機とペアになる受信機です。ミニチュア管とトランジスタ2石、ダイオード1石で出来ています。送信機と同時期の球石混合回路の受信機です。真空管がありますので送信機と同様にA,Bの2電源必要で、A電源は1.5V、B電源は22.5Vの電池です。変わっているのは通常トーンを受信するとリレーのコイルに電流が流れるのですが、この受信機は通常の逆で、キャリアのみの状態でリレーのコイルに電流が流れていて、トーンを受信すると切れます。


 どうしても動かしてみたくなって受信機側のユニットを作りました。この時代はエスケープメントですが、エスケープメントだと机上で動かして遊び難いのでサーボにしました。手持ちのシングルサーボで一番古い日乃出MS−7(1962年)をレストアし、おまけでKOエンコンエスケープメント(1965年頃)を配線しました。
 受信機のA電池は単3電池、B電池用の22.5Vの電池はまだ入手出来ますが、高価な上にもうすぐ生産中止になるらしいので、チャージポンプ型のDC−DCコンバータで006Pの9Vから昇圧して受信機に供給しました。

MIN Xで動かしてみましたが、MIN Xの押しボタンは安物で遊びが大きく、エンジンコントロールを正確に行う事は出来ませんでした。

 標準的シングルセット


 標準的なシングルセットです。日乃出電工の1968年頃の製品で、送信機T−243、受信機R−400、ラダーサーボMS−21、エンジンコントロールサーボES−2。メーカの製品でも最初の頃は受信機、サーボなどは個別に購入し自分で配線してセットを作っていましたが、’60年代末にはメーカから配線済みのセットとして売り出されるようになりました。その頃の製品です。送信機は押しボタンが1個あるのみで、受信機は超再生式、飛行機ではラダーまたはエルロンとエンジンをコントロール出来ます。

 もはやシングル方式の動作を知っている方は少ないと思いますのでここで説明しておきたいと思います。
 送信機の押しボタンを短く押すのを”トン” 押し続けるのを”ツー”としますと、”ツー”でラダーサーボが動いて右舵、”トン ツー”で左舵になります。エンジンコントロールは”トン トン ツー”と押す度にハイ、スロー、中スローを繰り返します。(3Pの場合、2Pではハイとスローを繰り返します。)エンジンコントロールの際もラダーサーボが動きますので、飛行機はいつもお尻を振りながら姿勢を変えることになります。舵は中立と右、左一杯しかありませんので、細かく操作する必要があります。今の技術から見れば稚拙な技術ですが、当時の人は操縦技術を磨くことで、これでスタントまでやっていたのですから驚かされます。私などは机上で操作しているだけでも指が痙攣しそうになります。


 機械式エンコーダ


 やはり押しボタンでは操縦が難しいので何とか簡単にしようとするのは当たり前です。機械式に操作信号を作ろうとしたのが、このチミトロンの送信機についているKOコントロールBOXです。元はシングルでもエレベータを操作できるインターメディエイトが、もはや鍛錬だけでは操作できる代物ではなかったので開発されたようです。私の知る限りではこれが最も旧式のコントロールBOXで、レバーを動かすとRTで”ツー”、LTで”トン ツー”、UPで”トン トン ツー”、DNで”トン トン トン ツー”の信号が正確なタイミングで出せます。エンジンもコントロールできてこれには通常の”トン”よりずっと短い信号がENGボタンを押すことで出せます。(インターメディエイト用のエンジンコントロール信号を通常の押しボタンで出す事は不可能です。)非常に良く考えられた構造でうまく操作すると、かなり正確な信号が出ます。しかし機械式ですのでレバーを途中で止めたりすると滅茶苦茶な信号になります。
 これはインターメディエイト用ですが、通常のラダー、エンジンコントロールのみの製品もありました。



 このコントロールBOXと組み合わされるラダー、エレベータ駆動用のKOマルチエスケープメントです、この他にエンジンコントルール用のエスケープメントが必要になります。


 せっかくほぼ新品のKOコントロールBOX付きの送信機が入手できましたので、インターメディエイトセットを作りました。本来はエスケープメント用なのですが、机上で動かせないので、KO MS−3サーボにしました。このサーボでもエンジンコントロールはエスケープメントですが、KOではぜんまい式(実際にはスプリングのねじれですが)のエスケープメントが作られていてこれが指定されています。残念なことにこのサーボとマルチエスケープメントではラダー左舵とエレベータアップの信号が逆ですので、コントロールBOXを改造してサーボ用に合わせました。
 実際に動かしてみるとコントロールBOXの威力は絶大で通常の押しボタンではまず思ったようには操作できませんが、正確にラダー、エレベータを操作できます。しかし、エンジンコントロールの確実性はいまいちです。ちょっと回路を追加すれば確実になるのですが、これ以上の改造は思い留まりました。



 KOのインターサーボMS−3、シングルでラダーとエレベータを操することが出来るサーボです。サーボケースにはMS−2と印刷してありますが、エンジンコントロール用アンプなどの回路基板と一体になってMS−3の品番になったと思われます。両側に付いているホーンでそれぞれラダーとエレベータを操舵します。入手したときはホーンが2個あるのでてっきりモーターが2個入っているものと思いましたが、開けてみると1個だけでした。なぜ1個のモーターでラダーとエレベータが操舵出来るのか?手品みたいなサーボで最初は分かりませんでしたが、2つの舵が操舵出来るといっても同時に操舵する訳では無いと気づいたとき分かりました。通常は3PNですがこれは5PNのサーボなんです。送信機のボタンを押し続けると右舵、1度短く押して押し続けると上昇、2度短く押して押し続けると左舵、3度短く押して押し続けると下降になります。つまりニュートラルと合わせて1回転で5ポジションに止まるサーボがあれば良い訳です。ラダーとエレベータ用ホーンは円盤の内側にあるカムによって各ポジションに来たときのみ操舵位置に動きます。
 インターメディエイトはKOぐらいしか精力的な製品出していませんし、確実性が低く操縦も難しいのであまり使われなかったようです。

 電気式エンコーダ



 シングル方式のラジコン送信機の押しボタンのみではやはり操縦し難く、古くはKOコントロールBOXのようにスティック操作で操縦できるような工夫がされてきました。KOコントロールBOXは完全な機械式で信号パルスを作ります。シングル方式終末期に双葉電子より出たFT−5Eは電子式で電子回路でパルスを作ります。
 その中間とも云うべき電気式のエンコーダがあっても良いはずとは思っていましたが、なんと実際にありました。日乃出電工製パルスメイト。裏蓋の検査表には昭和43年7月製造とあります。スティックを動かすとスイッチが入ってモーターが回りエンコーダー板を回転させパルスを作ります。内部左上の乳白色のケース内部にエンコーダ機構が入っています。


 エンコーダ機構内部です。サーボ内部と良く似ています。スティックを右に倒すとモーターは回らず出力がONします(右舵 ”ツー”)。左に倒すとモーターが回って、左舵用の”トン ツー”の出力を出します。スティックを下に倒すとモーターが回ってエンジンコントロール用の”トン トン ツー”の出力を出します。
 信号のタイミングはサーボやエスケープメントの速度により調整する必要があるのでモーターと直列にレオスタットが入っていて、電圧で速度を調整します。

 この送信機はこのスティック機構のみに力を入れたようで、構造や回路は非常にお粗末です。電池BOXは新たに作り直したのですが、元々置く場所が無く、フロントとリアケースで挟んで固定するようになっていました。変調用発振も矩形波で、変調波形と云ったらスプリアスを撒き散らすために作られているみたいです。レストアは完全とは言い切れませんが、配線や部品の劣化でそのようになっているとは思えません。ちなみに今回のレストアで故障していた部品は2SC372が2個でした。2SC372は私が小学生の頃、電子工作の定番トランジスタで良く使いました。それだけに他のゲルマニュームトランジスタが無事なのにこれだけが故障しているのは不思議でした。その頃にはシリコントランジスタ製造も安定していた筈ですが?


 この送信機とペアになる受信機とサーボセットです。受信機は日乃出電工R−270(27.12MHz 超再生式)、サーボはオリエントミニトップです。全てオーバーホールしたので快調ですが、オリエントミニトップサーボは反応が遅く、パルスメイトの作る信号のタイミングを最も遅くしないとエンジンコントロールに入りません。
 シングル方式はまずラダーサーボが動き、ニュートラル付近のエンジンコントロールサーボ起動ポジションになってからエンジンコントロールサーボが動き出します。従ってサーボの動作速度や電池の減り具合に合わせて信号タイミングも制御しないとエンジンコントロールになかなか入りません。


 電子式エンコーダ



 純粋に電子回路で操作パルスを作る送信機双葉電子FT−5Eです。最初に発売されたのは1967年でパルスメイトと殆ど同時期です。この頃にはトランジスタの値段が下がってきて電子回路で構成してもコスト的に見合うようになったことを意味していますが、同時にシングル方式が終わりを迎えたことを示しています。実際マルチチャンネルではリード式が絶滅して、瞬間的にアナログ方式のプロポーショナルシステムが出た後、この頃にはデジタル方式が一般的になっていました。しかし、最新式シングル送信機と云うことで、写真には写っていませんが上部に特許、実用新案出願中のシールが貼ってあります。スティックのスイッチ機構が円形のプリント基板とブラシで出来ているところが、シングル方式の設計者が設計したんだな感じがします。
 この後エンジンコントロールもスティックで出来るクロススティックのFT−15Sが出てシングル方式はほぼ使命を終えました。(日乃出電工は最後まで抵抗しましたが。)


 FT−5Eと組み合わせる受信機、サーボセットを作りました。この頃には配線済みのセットで販売されていましたので、こんなバラの部品で組み立てたものは少ないでしょう。受信機はF340R、ラダーサーボはFR−3G、中にエンジンコントロールサーボ駆動用の回路が入っていて、送信機は押しボタンのチョン押しで簡単にエンジン操作できます。(無論FT−5Eはチョン押しパルスも電子回路で作られますので、いつも正確なパルス幅になります。)エンジンコントロールサーボはFE−3Bで取りたてて特徴はありません。(新品だったんですが、出来が悪く音がうるさい。)
 FT−5Eと組み合わせるとこれがシングル方式かと思うほど、簡単に操作できます。特に細かい制御が必要でなければ、現在でもそれなりに遊べるでしょう。


2.マルチシステム


 当時の技術でシングル方式により送る信号の組み合わせで複数の舵をコントロールするには限界がありました。そこで複数の制御を行うマルチチャンネルが求められました。送信機の変調周波数を切り換え、受信機側で変調周波数を検出して複数の制御を行うマルチチャンネルが開発されました。(実は軍用の無線操縦の最初がこれでした。)
 変調周波数の検出にリードリレーを用いることが多かったので一般にリード式と呼ばれましたが、ドイツのバリオトーンのようにフィルターで検出する方式もありました。このタイプでは変調周波数の切り換え数をチャンネル数として数えていましたから、制御する舵の数とチャンネル数は一致しません。飛行機で一般的に用いられたエンジン、エレベーター、エルロン、ラダーの制御には8チャンネル、エレベータトリムを追加して10チャンネルが一般的でした。

 OS MINITRON 12CH


 1960年代中頃にラジコンをやっていた人には懐かしい無線機です。日本の典型的リード式無線機で、送、受信機はOSのTX−12s、RX−12、サーボは三共の複合サーボ。エンジン、エレベータ、エルロン、ラダー、エレベータトリムで10チャンネル分を使っています。エンジンはトリマブル動作でキースイッチを倒している間サーボが動き、離すとそこで停止します。エレベータトリムも同様の動作です。エレベータ、エルロン、ラダーはキースイッチを倒すと一定角度まで動いて、離すとニュートラルに戻ります。細かい制御をするには、キースイッチを細かく操作します。縦方向と横方向は同時操作する必要があるので、エルロンとエレベータなど特定のチャンネルのみ同時操作可能でした。これが可能な無線機は英語そのままにシマルテイニアスと呼ばれていました。
 リード式の無線機には受信機にリードリレーが入っていて、キーを操作する度、違った周波数の変調波で振動しますので、楽器のように色んな音を奏でながらサーボが動作する楽しい機械です。


 TX−12s なぜかリード式送信機はシーメンスキーが並んでいるだけで、操作に対して特別の工夫がされたものは少ないです。アメリカでも初期にスティックタイプの送信機が少量作られましたが、殆どは単にシーメンスキーを並べただけのデザインで、日本は完全にアメリカの影響下に有りましたので、特別なものは全く見られません。その点ドイツは対照的にバリオフォンやテレコントなどスティック式のマルチチャンネル送信機が作られました。
 リード式の送信機はその変調周波数の安定度が重要で電源電圧や温度変動に対して数Hzしか変動しない安定度が求められました。それでも、周波数の経時変化は避けられませんので、このように簡単に調整出来るようになっていました。(緑色のつまみが調整用ボリュームです。) といっても、12個もあるボリュームを調整する必要があるわけで、リード式を使うのは大変だったと思います。



 三共の複合サーボと受信機です。サーボはエルロン用のみ独立しており、エンジン、ラダー、エレベーター、エレベータトリムの各サーボが一体になっています。エレベータトリムはリンク機構で機械的に調整します。
 三共の複合サーボは±3Vで動作しますので、受信機の電源と共用すると、単三乾電池4本で動作するので電池BOXの配線がすっきりしています。

 右は受信機の内部です。リード式の受信機は何チャンネルでも基本的には同じで、リードリレーのみでチャンネル数が決まりました。リードリレーは電磁石の上に長さの違うリードが並んでいて、特定の周波数で共振して大きく振動します。各リード上に接点があって共振するとリードが接点に接触するので、トーンデコーダとして動作します。リードは機械的共振子ですから選択度が高く、20から30Hz間隔で分別できます。(12チャンネル分で300Hz程度の変化です。フィルター方式ではこの様な選択度は得られないので、バリオフォン10チャンネルでは6KHzぐらいの範囲を必要とします。)
 リードリレーの出力は断続してますので、そのままではサーボの制御が出来ません。初期は信号をコンデンサで平滑してリレーを駆動しリレーでサーボを動かしていたんですが、チャンネル数分リレーが必要で信頼性が低く、トランジスタアンプが開発されるとサーボにアンプが内蔵され、このようにリードリレーのみのリレーレスタイプが主流になりました。


 F&M MATANOR 10CH



 1962年頃のアメリカの製品です。この頃のアメリカ製無線機の電池はニッカドが一般的に成りつつあり、この送信機も本当はニッカド電池だった筈です。その為か、この送信機は6Vで動作します。私の見た中で6Vで動作するものはこれのみです。送信機のラジケータは古臭いですが国産のような安物で無く、精度の良い私好みのものです。




 左は有名なBONNERのサーボ、セルフニュートラルとトリマブルの2種類です。セルフニュートラルはリレータイプのケースになっていますが、リレーレス用のアンプが入っています。(このまま売っていたんですから、このあたりアメリカ人は大雑把です。)
 BONNERサーボは非常に高価で当時多くの人のあこがれだったらしく、日本ではまるっきりコピーとしか思えないサーボが売り出されていました。右の写真はオリエントのもので、その他MKなどからもそっくりなのが売り出されていました。(MKはちゃんとBONNERと契約したノックダウン生産で、名前もMKスーパーサーボとかに指定されたようです。まあ、オリエントもそうだったんでしょう?)


 この高級なボナーサーボで受信機側のセットを組みたてました。エルロン、ラダー、エレベータはセルフニュートラルサーボで、キーを倒した時のみ動き、離すとニュートラルに戻ります。エンジンコントロールとエレベータトリムはトリマブルサーボで、キーを倒すと動き、離すとそのポジションで止まります。エレベータはセルフニュートラルとトリマブルの2個のサーボを機械的にミキシングしていました。ですから、後年日本では複数のサーボを一体化した複合サーボが一般的になりました。

 キーを操作するとサーボがジャー、ジャー動いてなかなか楽しいです。電池をニッカドにしてもう少し調整すれば今でも飛行機に積めそうです。操縦する自信はありませんが!

 GRAUPNER VARIOPHON2−VARIOTON


 ドイツ グラウプナー グルンディッヒ のバリオフォン2とバリオトーンのシステムです。リードリレーを使わずフイルターで送信機の変調トーンを分離検出して、マルチチャンネル操作を行います。デザインは非常に現代的でとても1960年代中頃の無線機とは思えません。
 システムも変わっています。送信機はバリオフォン、受信機はバリオトーンと別の名前がついていますが、これは様々な組み合わせを選んで、チャンネル数などが自由に変えられるようになっています。この送信機はリードの4チャンネル相当で、受信機は超再生式受信機です。


 バリオトーン受信機は複数のモジュールから構成されています。一番下の赤いモジュールが受信モジュールで超再生式受信機が入っています。超再生ですがアンテナコイルの調整孔はありません。やっぱり日本の受信機はよほど安定度が悪かったとしか思えません。
 上の緑と橙色のモジュールにはフィルターとリレーが入っていて特定周波数のトーンが入力されるとリレーが動作します。1ユニットに付きリード式2チャンネル相当で1個のサーボを駆動できます。このユニットは積み重ねられますので、送信機のテャンネル数分積み重ねれば良い訳です。
 スーパーヘテロダイン受信機とするには受信モジュールを交換するだけでOKです。グラウプナーはこの構成にこだわり、デジタルプロポでもモジュール方式を採用していました。(確か、バリオプロップもこんな構成だったと思います。)



 これに使われているサーボ?のベラマチックUです。サーボと言ってますが、アメリカや日本のサーボと違ってホーンからのフィードバックはありません。アメリカや日本のサーボはシングルでもマルチでもホーン部分にエンコーダがあってニュートラルと左右の舵角位置で停止するような機構になっています。ところが、このサーボにはモーターへの配線しかなくて、電圧を加えないとバネの力でニュートラルに戻り、電圧を加えるとその極性で左、右に回ります。エンコーダはありませんのでストッパー位置まで来てもモーターはホーンを回そうとするので、壊れないようにスリップクラッチが付いていてモーターが空転します。小型軽量なのは良いですが、駆動トルクはスリップクラッチで決まってしまいますし、ニュートラルに戻るのはバネの力のみなので、応答は遅いです。
 操作してみるとアメリカや日本のリード式とは異なり、操作時間でアナログ的に動かしやすいので(日本ではパルス打ちに相当する?) ラジコン技術8,9,10号でプロポーショナルと紹介されたのはそのためかもしれません。グラウプナーの無線機は不思議な思想で作られています。


3.パルスプロポーショナルシステム


 最初に開発された比例制御システムがパルスプロポーショナルシステムです。日本の製品は殆どありませんが、アメリカでは1950年代より数多くの製品がありました。

 ACEパルスコマンダー


 1970年代後半にACE社が生産したパルスコマンダー送信機です。回路はシングル送信機にパルス発生回路を付加したもので、スティックを動かすと変調有無のDuty(マーク、スペース比)が変化します。スティック上の基板がパルス発生回路です。電池は大型の9V積層電池ですが日本では入手出来ませんので単3乾電池6本に改造しました。送信周波数は72.160MHz。


 受信機とアクチュエータです。モーター駆動のタイプもありますが、やはりアダムスタイプのダブルコイルアクチュエータで無いとギャロッピングゴーストの感じがしません。このアクチュエータはBABY TWINシステムで駆動マグネットが2個あります。最軽量のBABYシステムは1個のみです。
 現在の1チャンネルに相当しますが、受信機28.3g、アクチュエータ22.3g、バッテリー19gの合計70g弱で現在でも結構軽量なシステムです。


 上の写真は左から左舵、中立、右舵のアクチュエータ動作を示しています。アクチュエータは動作中左右にパタパタと動きつづけています。中立の場合、左舵と右舵の時間が等しいために飛行機は直進します。送信機のスティックを左に切るとアクチュエータは左舵の比率が高くなり、飛行機は左に旋回します。同様にに右に切るとアクチュエータは右舵の比率が高くなり、飛行機は右に旋回します。見た目は非常にいいかげんに思えますがちゃんと比例制御できます。
 不思議なのはアクチュエータの固定方法がまったく配慮されていません。せめてエスケープメントぐらいの取りつけ構造になっていても良いものですが?


 CONTROL AIR Mule


 1960年代のパルスプロポーショナル送信機CONTROL AIREのMule。シングルからパルスプロポーショナルが発達したのが推測できる送信機です。回路的にはシングル送信機の回路にパルサーを後から付けたものではなくて専用の回路です。送信周波数は27.145MHz.


 スティックは送信機の上にあって、極めてユニークです。無論トリム調整も出来ますが、(右側に突き出ている棒)トリム調整するとスティックも動きます。

 この時代のアメリカ製の無線機は同時期の日本製と比較して良質な部品で作られています。特にプリント基板は良質なガラスエポキシで日本製のように修理中に銅箔パターンが剥がれる事はまれです。その割にはハンダ付けとプリント基板固定方法などはいいかげんな場合が多いです。この送信機のプリント基板も電源スイッチとポテンショメータのみでケースに固定されています。右下の金具はロッドアンテナが付きます。
 私、このプリント基板を最初に見たとき何か違和感を感じました。違和感を感じる方がいらっしゃいましたら、あなたは大変鋭いです。
なんとこの送信機には同調回路がありません。高周波チョークコイルはありますが、同調回路を構成するコイルが1個も無いのです。私もアマチュア無線機やCB、玩具など様々な電波を出す回路を見てきましたが、同調回路がまったく無い送信機は初めて見ました。クリスタル発振は無調整回路で発振出力をそのまま増幅してアンテナに送りこみます。その他の回路も合理性が徹底されていて、変調回路もクリスタル発振回路への電源断続で変調します。動作するんだから良いんでしょうが、こんな回路でアメリカの法規を満たすのでしょうか?




 受信機とアクチュエータです。受信機は通常の超再生式シングルリレーレスと同じで、アクチュエータを駆動するために別に小さなドライブ基板があります。アクチュエータはACEと同じダブルコイルタイプです。日本製の超再生式受信機は必ず受信状態の確認方法があって、(クリスタルイヤホンで変調音を聞くことができた。)アンテナコイルが調整出来るようになっていますが、この受信機のアンテナコイルのコアは固定されていて調整できません。考えてみれば超再生式受信機は受信帯域が広く、送信機の周波数はクリスタル発振で安定していますからそんなに頻繁に調整する必要があるとは思われません。なぜ日本の超再生式受信機は儀式のように毎回調整する必要があったのでしょうか?


 CONTROL AIR



 CONTROL AIREのギャロッピングゴーストパルスプロポ送信機です。1960年代中頃の製品でしょうか。周波数は27.045MHz。上記の2台はラダーのみのデジタルプロポ1チャンネル相当ですが、これはラダー、エレベータ、エンジンコントロールの3チャンネル相当の操作が出来ます。左のキースイッチがエンジンコントロールで上に倒すと回転が上がり、下に倒すと回転が下がります。適当なところで止めることで任意の位置に制御できます。(リード式のトリマブル動作と同じです。)右のスティックでラダー、エレベータを操作します。ラダー、エレベータは同時操作できますが、エンジンコントロール中は操作出来ません。
 CONTROL AIREは変わっていて、受信機はオーソドックスな回路ですが送信機は特殊です。Muleでは同調コイルがまったく無かったのですが、これもクリスタルの3rdオーバートーン発振用のコイルがあるのみです。(Muleにはこれも無かったけれどもどうして発振してるんだろう?もう一度調べてみよう。)
 発振回路の後は最終段の1石増幅回路があり、ベースバイアスで変調を掛けています。出力整合回路も無く直接アンテナにつながっています。なんでこんなにコイルをケチるのか理解できません。まあ動くから良いのでしょうけど!



 アクチュエータと受信機です。受信機は通常のスーパーヘテロダイン方式のシングルと同じで、リレーでアクチュエータのモーターを駆動します。アクチュエータのモーターは送信機から送られ来るマーク、スペース(変調の有り、無しの期間)に合わせて正、逆転します。



 左はアクチュエータを上から見たところです。モーターが正、逆転するとラダーホーンが左右に振れます。マーク、スペース比がちょうど50%ならば、ラダーはニュートラルを中心に振れるため、機体は直進します。マークもしくはスペースの比率が増えるとラダーは片側に振れるため、平均すると右または左舵になります。
 エレベータはマーク、スペースの切り換え周波数で制御します。エレベータホーンはギヤの回転に合わせて左右に動きますが、周波数を上げるとギヤの振れる角度が少なくなるので、エレベータホーンは平均して右側に移動します。周波数が下がるとギヤの振れる角度が大きくなるので、エレベータホーンは平均すると左に移動します。つまり、マーク、スペースの切り換え周波数を連続的に制御することで、エレベータを比例制御できます。
 つまり、送信機のスティックの左右でマーク、スペースの比率を、上下でマーク、スペース切り換え周波数を制御すればラダー、エレベータを操作できるわけです。

 最後のエンジンコントロールですが、原理的にトーンを出し続けたり停止すると、モータは正または逆回転し続けるわけです。この時ラダー、エレベータは激しく左右、上下に動きますが平均するとニュートラルなので機体は直進します。このとき右の写真にあるウオームギアがエンコンホーンを回転させます。送信機のエンジンコントロールキーを倒すとトーンを出し続けたり停止させたりしますので、キー操作でエンコンホーンを任意の位置に制御出来ます。エンコンホーンは一部しかギアがありませんので、HI、LOW一杯でリミットが掛かります。



 アクチュエータが動作中の様子です。見た目は滅茶苦茶な動作のようですがキチンと比例制御できます。原理的にラダーを切るとエレベータがアップ気味になります。

 MIN−X PULSEMITE


 MIN−Xのギャロッピングゴースト送信機です。システムとしては上記のCONTROL AIREと同じです。製造年代もほぼ同時期でしょう。MIN−Xの送信機はCONTROL AIREと違ってオーソドックスな回路で作られていて安心できます。表のDINコネクタはニッカド電池に対応するためと思われますが、私の手元に来た2台は使われた形跡はありません。


 ギャロッピングゴーストはアクチュエータで決まると言っても過言ではありません。受信機は普通のスーパーヘテロダインのシングル受信機ですが、この受信機は送信機の変調周波数1200Hzに同調したフイルターが入っているのがちょっと特徴的です。
 (MIN−Xは送信機はオーソドックスなんですが、受信機の回路はかなり変です。2種類修理したんですが、驚く回路になっているところがあります。ギャロッピングゴーストはなんで普通の回路で作られないのでしょうか?)
 受信機の下にあるアクチュエータが有名なRAND LR−3です。サーボと呼んでも良い傑作アクチュエータです。



 RANDのLR−3です。機能も動作もCONTROL AIREのアクチュエータと同じですが、エレベーターホーン駆動にカムを使い、エンコンホーンもラダー、エレベーター駆動ギヤと同一平面のギヤで駆動することでコンパクトに仕上げ、非常にスマートです。


 FENNERS-PIKE PULSE BOX and SERVO



 シングルの送受信機に組み合わせてパルスプロポーショナルとする1950年代の英国製のユニットです。右の写真はパルサーの内部で、パルサーはモーターで駆動されスティックに連動したカムにより接点のON、OFF比が変化します。モーターはベルト駆動でしたが、ベルトが切れていて代替品も入手できませんでしたので、ギヤ駆動に改造しました。この接点をシングル送信機の押しボタンSWに接続するとギャロッピングゴーストパルスプロポの送信機となります。スティックの下にある突起はSWで押すとモーターに直列に抵抗が入って回転数が下がります。(パルスの周波数が下がる。)



 サーボの内部です。このサーボを見たときは衝撃を受けました。ギャロッピングゴーストはアクチュエータが振動して平均的な舵角がプロポーショナル動作するもので、ランドのLR−3もスマートですが同様です。しかし、やはりホーンがばたばた動くのは抵抗も大きいですし、できればスムーズにホーンが動いて欲しいと思うのは当たり前です。機械式に振動を抑えるアクチュエータは見たことがありますが、これは電子回路をまったく使わず、ダブルレオスタットのみでフィードバックを掛けた立派なサーボです。ギアの上にあるのがダブルレオスタットです。一定以上のパルス周波数ならばサーボホーンは振動せずスムーズにプロポーショナル動作します。

 右の回路図、配線図から分かるように、リレーによってモーターに加わる電圧の極性を切り換えます。電圧はホーンと連動するダブルレオスタットを介してモーターに加わります。マーク、スペース比が等しいニュートラルの時はモーターに印加される電圧は平均するとゼロなので動きません。送信機のスティックを動かしてマーク、スペース比が変わると電圧の加わる時間の長い方向にモーターは回り始めます。ホーンが動き始めるとその方向に回る電圧側のレオスタットの抵抗が上がり、逆方向のレオスタットの抵抗が下がります。マーク、スペース比と2個のレオスタットの抵抗比が一致するところまで動くと、モータに印加される平均電圧はゼロになりますのでそこで止まります。従って、送信機のスティック位置とサーボホーンの位置は連動するわけで、立派なプロポーショナル動作です。パルスの周波数が一定以上ならばサーボホーンは全く振動しません。ダブルレオスタットのみで立派なフィードバックサーボを実現しています。

 このサーボのさらに凄いのはエンジンコントロールにも対応できることです。ギアの下にはサーボホーンシャフトとスプリングで連結されたフライホイールがあります。フライホイールには接点が付いていて、ある程度以上シャフトよりずれると接点が接触します。送信機のSWを押すとパルサー駆動モーターの回転数が下がってパルス周波数が下がります。するとサーボホーンは振動しますので、フライホイールはこれに追従出来ず、接点は断続的につながります。この接点の断続で、順序式のエスケープメントやサーボを動かせば、送信機のボタンでエンジンをコントロールできます。この接点は急激にスティックを動かしても接触しない絶妙の構造になっています。
 つまりこのサーボがあれば1970年頃流行したシングルプロポと同じ機能のものが作れる訳です。1950年代にです!



 さっそくシングル送受信機を用意して、1950年代シングルプロポを再現してみました。送信機はアルコン、受信機はマイコン(スーパーヘテロダインです。)、いずれも1960年代中頃の製品です。できれば1950年代の真空管式送受信機で作るべきですが、あまりにも電池が沢山必要になるので止めました。エンコンサーボも1950年代のものは手元にありませんので三共のものを使用しました。機能的にはPIKEの説明書にあるものと同じです。
 動かしてみるとサーボはきちんとプロポーショナル動作しますし、エンジンコントロールも押しボタンで簡単に操作できます。(後年のシングルの3点ボタン打ちより簡単です。)
 但し、機械式パルサーはやはり不安定です。(右舵からニュートラル戻した時と、左舵からニュートラルに戻した時が一致しない。動かしているとニュートラルがずれる。)試しに通常のギャロッピングゴーストの送信機で動かしてみましたが、サーボの方は比較的安定に動作しました。


 DEE BEE QUADRUPLEX 21


 モンスター級のギャロッピングゴーストDEE BEE QUADRUPLEX 21です。’63〜’64年?頃の製品と推定されます。ギャロッピングゴーストは基本的にはシングルシステムですが、この21は送信機に変調用発振回路が3系統あり、独立して変調有無のマーク、スペース比を制御します。受信機側にフィルターがあってマーク、スペース比を検出します。ギャロッピングゴーストは色々見ましたが、マルチチャンネルのギャロッピングゴーストはこれ以外見たことはありません。



 送信機は真空管式で巨大です。270×180×100mmで手元にあるものでは一番大きい送信機です。真空管は双3極管の3A5が5本、ビーム管の3B4が1本使われています。真空管式ですが、ニッカド電池とDC−DCコンバータが内蔵されていて、A,Bの2種類の電池管理は不要です。この辺はスペースコントロールが意識されていると思われます。基本的には3チャンネル相当でスティック上下でエレベータ、左右でエルロン、スティックの回転でラダーコントロールで、全面の2個のつまみはエレベータ、エルロントリムでラダートリムはありません。送信機上部の押しボタンがエンジンコントロールで、リード式のようにトリマブル動作します。

 送信機の3系統の変調用発振回路は、ラダー用が2.2KHz、エルロン用が2.8KHz、エレベータ用が3.4KHzで発振します。スティックを操作すると、各発振器の出力Duty(マークスペース比)が変化します。ラダー用発振器はエンジンコントロールも制御するため、押しボタンスイッチを押すと常時発振と発振停止(フルマーク、フルスペース)になります。




 受信機側のセットです。アクチュエータとしてベラマチックサーボが使われていて、原理的にはギャロッピングゴーストですが、舵の振動は少なくプロポーショナルの感じがします。(10Hzでプルプルしています。)不思議なのはリターンスプリングとしてトーションバーが用いられている特殊なベラマチックサーボが1個使われています。ノーマルな物と比較してニュートラルの正確さとリニアリティが優れているらしいです。(最初は基板に付いた2個がトーションバー方式だったんですが、壊れてしまったので通常の物と交換しました。見た目の動作は変わりません。)
 エンジンコントロールはBONNERのサーボを改造したものが使われています。トリマブル動作ですがリミットスイッチは無いので、HIやLOW一杯まで動作すると機械的に無理やり停止します。この時モーターには大きな電流が流れますが、直列に抵抗が入っていて過電流を抑えると云う大雑把な回路になっています。

 右は受信機の内部で2層になっており、上基板に高周波回路、下基板はサブキャリアを分離するフィルター回路になっています。肝心のフィルター部分は樹脂でモールドされていてどんな回路かは分かりません。ただ、サブキャリアの間隔は600Hzですので、簡単なパッシブのフイルターではないと思います。
 上基板にあるリレーはエンジンコントロール時にラダー出力を切り換えるためにあります。エンジンコントロールはラダー用サブキャリアがフルマーク、フルスペースの時に動作しますので、ラダーアクチュエータは振り切れてしまいます。そこで、フルマーク、フルスペースを検出すると、ラダーアクチュエータへの信号を切ります。しかし、検出までに僅かな時間遅れがありますのでエンジンコントロールの度に一瞬ラダーが振れます。
 同時に3チャンネルがプロポーショナル操作できますが、エンジンコントロールの度に飛行機がお尻を振るし、エンジンコントロールサーボは無理やりリミットが掛かると云う、何とも不思議な機械ですがDEE BEEはこの独自のプロポーショナルで有名?だった会社らしいです。


4.アナログプロポーショナルシステム


 米国では’50年代末頃からプロポーショナルシステムが開発され次第に普及していきましたが、最初は変調周波数を制御する方式から始まり?、数年後、今日のAM方式にあたるデジタルプロポが開発されました。
 アナログ方式には複数の方式があり、何をもってアナログと称するかは難しいところですが、ここでは電圧で制御するサーボを持ったものをアナログ方式として分類しました。


 SPACE CONTROL


 世界初のプロポーショナルシステム、スペースコントロールです。1950年代年末開発された、エンジン、エレベーター、ラダー、エルロンのフルハウスシステムを完全独立に比例制御できる無線機です。少なくとも米国において’62年まではギャロッピングゴーストを除けばプロポショナルシステムはこれのみでした。入手したときは燃えないゴミの状態でしたが、動くところまで修理できました。残念ながら改造され尽くしているので、原型復帰は出来ませんが、動作するスペースコントロールは日本にはこれ1台しか無いと思います。何しろ1963年で$700もしたっていう代物ですから米国人てもおいそれとは買えません。
 スペースコントロール社は後にオービットに吸収され、オービットのアナログプロポの原型になりました。



 送信機は驚くことに真空管で作られています。1L4が4本、1U5が2本、3V4が2本の8本で構成されています。動作原理はこちらが原型ですので、オービットと同様ですが、真空管の数を節約するため、エレベーター、エルロン用の変調用発振回路が同じ回路で兼用になっていて、調整が非常に難しいです。
 それに真空管式ですから消費電力も大きく、ヒータ電力が1.5V0.5A +B電圧が135V50mAの7.5Wも消費します。単一サイズのニッカド電池6本(2本でヒータ電力供給、4本でDC−DCコンバータを駆動して+B電圧を供給する。)のパワーパックが入っていますが、現代のニッケル水素電池(7Ah)を用いても2時間ぐらいしか持ちません。 ’63年ごろミツミ電機(今のミツミ)が2台購入して研究していますが、当時も電池が1時間ぐらいしか持たず、エルロン、エレベータが最初におかしくなって使い物にならないとの結論を出してます。電源電圧の低下はエルロン、エレベータ用変調発振回路の制御電圧変動に直結しますから、当たり前でしょう。(ミツミ電機は独自にプロポーショナルシステムを開発していたようですが、結局市販は断念しました。)しかし、40年前のパワーパックなのに非常に良く出来ていて、小さなボデーに6本の電池とDC−DCコンバータ、充電回路まで入っています。

 驚くことは、世界初のプロポーショナルシステムなのに、スティック左右でエルロン、上下でエレベータ、回すとラダー、エンジンコントロールは上部のツマミとシングルスティック操作として完成しています。なにか原型となる操作デバイスがあったんでしょうか?



 受信機の回路です。本来は右のコピーのようにエンジン、エレベータ、ラダーサーボと一体となったプリント基板剥き出しの受信機だったんですが、これでは使い難いのでサーボと切り離されて使われたようです。(オリジナルでは搭載できる機体が限定されますし、ねじ1本落としてもショートします。製品としての完成度は低かったのは明らかです。)
 基板剥き出しでは危ないので、ケースを自作して組みこみました。
 4個の坪型コアのコイルが2個のディスクリミネータを構成しています。オービットでは高周波回路の基板と分離して、下基板に付いています。回路構成はオービットとほぼ同じです。(サーボも含めて。)
 いかにスペースコントロールの設計が革新的で優れていたかを示しています。


 Orbit アナログプロポ


 型式が分かりませんが、オービットプロポーショナルシステムと云えばこれを差すほど有名なシステムです。あまりに高価で輸入できず、MKが部品で輸入して日本で組みたてて販売したほどです。1965年当時のラジコン技術を見ると定価16.5万円、完成品を輸入すると30万を越したとのことですから、自動車並に高価な機械だった訳です。これは2スティックですが、シングルスティックのタイプもありました。回路的にはスペースコントロールの弱点であった送信機を新設計して、受信機、サーボは改良して使用しています。(回路については開発の歴史を見てください。)
 米国では1963年?に発売されたようです。1963年の全米選手権ではSAMPEY404(これがまた謎の無線機です。)がプロポーショナルとして注目されています。



 初期のプロポですから、スティックも現在に至るまで試行錯誤がありました。右のスティクはエルロン用で、下にあるツマミがトリムです。右上のレバーがエンジンコントロール。左のスティックはエレベータとラダー用で、左上のレバーはエレベータトリムです。トリムは必要最小限しか付いていません。これには基本的にはエルロンとエレベータの2CHにエンジンコントロールとラダーの2CHを追加した回路的な理由もあります。

 送信機内部は整然と作られています。アンテナの下の茶色の部分が高周波回路でクリスタル発振と増幅回路が入っています。厳重なシールドがなされていて、電源と変調信号の入力は貫通コンデンサ?から入力されます。
右下の基板は変調用の信号をつくる回路でこの送信機で最も特徴的な回路です。左下の茶色い部分はニッカド電池で、1200mA/hの電池が8個プラスチックケースの中に入っていました。(無論、交換してあります。)
さすがに最高級の無線機だけあって、高級な部品を使い丁寧に作られています。

 受信機は2段構成になっていて、上の基板が受信回路、下の基板が低周波回路になっています。受信回路は通常のスーパーヘテロダインでリミッタ回路がある以外は特徴はありません。下の基板に見えている4個の丸いものはコイルで、2個でディスクリミネータを構成します。2組のディスクリミネータがエルロンとエレベータ用の信号を分離します。エンジンコントロールとラダーはギャロッピングゴーストの考え方で信号を送っています。
 サーボは電圧制御で0Vでニュートラル、±0.5Vの範囲の電圧に比例して動きます。(電源は±2.4V)


サーボを並べてみました。スペースコントロールのエルロンサーボ(これだけは最初から独立している。) オービットPS−1,PS−2?
 PS−1はスペースコントロールをコピーした事が外観からも分かります。但し、生産性が良くなるように構造は若干変更されています。スペースコントロールのサーボは分解すると組み立てるのは至難の技です。スペースコントロールとPS−1にはミクロマックスのモーターが使われていますが、パワー不足は否めずPS−2??に進化します。


 DEE BEE QUADRUPLEX CL5


 アナログ中のアナログといえる、4チャンネルフルマルチプレックスの無線機 DEE BEE CL5です。’63〜’65年?頃の製品と推定されます。送信機には変調用発振回路が独立して4系統あり、各発振回路の出力をミックスしてキャリアを変調して送信します。受信機にはディスクリミネータが4系統あり、変調周波数変化を直流電圧に変換します。27MHzのバンドルールで隣接バンドに影響を与えない範囲で4種類の変調周波数を送信して、受信機で分離するのは驚異的です。スペースコントロールも最初はこれを目指したものと思いますが、チャンネル間クロストークや帯域の問題で4チャンネル分の変調回路を独立して設けることが出来なくてあの回路に落ち着いたのではないかと思っいます。




 送信機の外観と内部です。正面のスティクの左右操作でエルロン、上下でエレベータ、回すとラダー操作の通常のシングルスティック操作です。正面の2個のツマミはエルロンとエレベータトリムでその隣の小さな押しボタンSWは押すとバッテリーの電圧がチェックできます。メータは普段送信電波強度をモニターしていますが、DC15Vの普通のメータのため、ラジケータみたいに景気良くは振れません。上面のレバーがエンジンコントロール、ツマミはラダートリムです。赤、黒の2個の押しボタンが変わっていて、黒の押しボタンを押すとレバーの位置に関係無く、内部のトリマーで設定したエンジンコントロールに強制的になります。赤の押しボタンを押すと強制的にエレベータアップになります。エレベータも通常の最大舵角以上に動くキックアップ動作と云うわけでもないので、用途は不明です。
 基板上に4個並んでいるのが、変調用発振回路のコイルとコンデンサです。発振周波数の設計値は不明なので現物を実測してみましたが、角舵ニュートラル時エルロンが1.71KHz、エレベータが1.97KHz、ラダーが2.39KHz、エンジンコントロールが2.94KHzと数百Hz間隔しかありません。その上操作した時の発振周波数は僅か60〜70Hzしか変化しません。周波数可変の発振回路なのにリード式並の安定度が求められます。恐るべき精度です。コイルの調整範囲まで周波数を追いこむため、複数のコンデンサが取りつけられるようになっており、製造段階で選択調整したものと推測されます。コンデンサも良質の物が無かったためか、スプラーグの400V耐圧の大きなフィルムコンデンサ?が使われています。
 今ならDSPがあるので何とでもなりますが、よくもこんな物を製造していたものです。この送信機は27MHz帯ですが、米国では50MHz帯の物もあって調べましたが、サブキャリアの周波数は同じでした。




 受信機側のセットと受信機内部です。リード式からの伝統?で機体に搭載するエンジン、エレベータ、ラダーサーボはプリント基板上に固定され配線されており、エルロンサーボのみ独立しています。右は受信機内部で、2枚の基板から構成されていて上基板が受信機の回路、下基板が変調周波数変化をアナログ電圧に変換するディスクリミネータ回路です。私の手元に来たときはなぜかコンデンサが全部取り外されていましたので、ポリプロプレンコンデンサで修理しました。受信機側も複数のコンデンサが取りつけられるようになっており製造時にもコンデンサを取り換えて調整したものと思われます。ディスクリミネータのコイル?は樹脂で固めてあるので回路の詳細は分かりませんが、たった60Hz程度の変化を電圧に変換するので、通常の共振器を用いたパッシブなディスクリミネータではありません。詳細は分かりませんが各ディスクリミネータは固定周波数の発振回路を持っていて、これで受信信号を処理しサーボ制御電圧を得ているようです。
 数KHzのサブキャリアそれも4チャンネル分が混ざった信号を分離して、僅か60Hz程度の変化を検出するのはすごい技術です。これも修理は大変で、調整には根負けしてチャンネル間クロストークは完全には取りきれていません。(エレベータかエルロンを動かすとエンコンサーボが揺らぐ)


 サーボ内部です。見た目はごついですが、基本的にスペースコントロールやオービットと同じでミクロマックスのモーターと簡単なフィードバックアンプで構成されています。基板が2層に重なっているので調べ難いのですが、回路もほぼ同じでしょう。


5.デジタルプロポーショナルシステム


 デジタルプロポーショナルシステムは少なくとも1964年には開発され、現在まで生き残っている究極のシステムです。しかし、何時、誰が、どこの会社が開発したのか全く分かりません。まるで降って沸いたように1964年には米国に出現します。しかし、開発に2年掛かったとすると1962年には開発が始まっていたはずですが、その頃の市場にはまだスペースコントロールしか存在していません。’60年代の混乱は日本だけかと思っていましたが日本より数年早く、米国で開発競争が始まり様々な方式の中からデジタル方式が生き残りました。この混乱はそのまま日本に持ち込まれ一時期混乱しますが、すぐデジタル方式に収束して行きます。

 
F&M Digital−5


 最初のデジタルプロポはどこが開発したのか?候補の1社F&Mの5チャンネルです。外観は変わっていませんが、これは第1世代ではなく、回路が若干簡素化された第2世代以降のものです。受信機クリスタルに10−65の文字がありますので、1965年末頃の製造と思われます。




 送信機は一見6チャンネルのようですが右のレバーはなぜかエンジンコントロールのトリムになっています。スティク横のトリムももちろん動作しますので、なぜトリムが2系統もあるのかわかりません。米国の製品なので、エンジンコントロールが左のスティックに割り当てられているモード2になっています。
 デジタルプロポは1964年に色々なメーカより一斉に発表されますが、スティックの部品やサーボの部品など共通で使われているものが多く、BONNERのデジマイトのスティックも同じ物が使われています。左下のレバー部分も同様のデザインのものが使われており、2個レバーの付いた部品があったのでそれを用いて、1つのレバーが余るのでエンジンコントロールトリムに当てた?のかもしれません。
 アナログプロポは各メーカ毎に方式もバラバラで、もちろん部品も共用なんてされていないのに、デジタルプロポは出現当初より方式も共通で部品まで共用されている事はとても不思議です。米国で各メーカが協力して開発したとは考えにくく、画期的システムなのに特許の問題も無い。(BONNERなんてサーボしか作っていなかったのに、1964年にいきなり8チャンネルデジタルプロポを発表しています。)何か原型があって、その技術がオープンにされたとしか思えません。送信プロトコルも出現当時から現在まで殆ど変わっておらず、現在のAM方式の無線機でも周波数さえ合えば動作します。(送信機の占有帯域のみ変わっているくらい?)




 受信機は2枚基板で、上基板は通常の受信回路、下基板はパルスを各サーボに分配するデコーダ回路になっています。デコーダ回路は最も古い方式で、3個のフリップフロップ回路で3段のデバイダーを構成しており、各段の出力からダイオードマトリクスでパルス1個を分離します。裏返しに付いている小さな基板がダイオードマトリクスの部分です。なぜか初期のデジタルプロポはフェイルセーフに力を入れていて、この受信機も送信機から一定時間電波が途絶えて、パルスが検出できないとサーボにフェイルセーフ出力を出します。デジタルプロポはサブキャリアは使われていませんので、パルス性ノイズには無力ですし、フェイルセーフ状態に入るまでと正常に回復するまで時間が掛かりその間操縦不能になるので、あまり有効性は無くその後は普及しませんでした。



 サーボはリニアホーンタイプで、フェイルセーフ時の動作の違いによりCFSとEFSがあります。CFSはCenter Fail Safe 、EFSはEnd Fale Safeのことで、受信機からフェイルセーフ信号がくると、サーボホーンがCFSはニュートラルに、EFSは終端に動きます。CFSを各舵に、EFSをエンジンコントロールに使うことで、送信機からの電波が途絶えると各舵は中立になり、エンジンはスローになります。

 この頃のデジタルサーボはポテンショメータの不良に苦しめられていて、巻き線型の抵抗器が使われました。右の写真の右が通常のサーボでプリント基板上に固定されている棒状の物が巻き線抵抗です。不良の多かった可変抵抗器に代えて可変インダクタを用いたサーボも作られました。これが、TITANで恐らくこの1種類のみです。(このTITANにはフェイルセーフが付いていませんが、フェイルセーフ付きもありました。)右の写真の左が内部で、サーボホーンに取りつけられたコア(ねじですが)がコイル内を移動してインダクタンスが変化します。
その他、可変コンデンサを用いたサーボもKRAFTが開発したらしいですが、まだお目にかかったことはありません。ポテンショメータの信頼性が向上したので、こんなサーボはすぐ姿を消しました。

 
MICRO−AVIONICS 5CH



 特に特徴はありませんが、個人的に好きなマイクロアビオニクスの5チャンネルです。日本にも輸入された、(日本でも生産された?)ので日本人も使ったことのある人が多い無線機です。これは初期の米国生産のものですので、日本で出回った物よりシンバルが小さく、モード2になっています。1966,67年頃の製品ではないかと思われます。
 右は受信機内部ですが、デコーダ回路が簡素化され1枚基板に納まっておりF&Mからの進化が分かります。基板の右半分がディスクリート部品で構成されたデコーダ回路です。この後にはTTLが出現し価格が下がってIC化されていきます。

 サーボは外観上当時のオービットと同じ(部品は共用されていた?)ので互換性はありそうですが、なぜかコネクタのピン径とピッチが微妙に異なり接続できません。


 LOGITEC L66



 1975年に日本で始めて市販されたFM方式のデジタルプロポです。その頃、高級プロポと言えばデジコン、三共、OSといったイメージがあって、LOGITECが始めて出したので驚いた記憶があります。
 FMは占有帯域幅が広いとのイメージがあったので、隣接バンドと分離できるのが不思議でした。当時かなりの話題になってラジコン技術に解説記事が出ていました。受信機右下の電解コンデンサ横の白い四角の物が455KHzのディスクリミネータでFM方式の証拠です。受信機は当時の6CH受信機と比較して一回り大きいサイズです。