展示室5 組 曲「 長崎十二景 」



「長崎の街の鐘」


こはふるさとか
こころのうちにくれがたの かねのおとこそなりいずれ

いまはなき母への あこがれの涙なりや

ながるるものは




〔夢二〕藤間喜州

の作品の正式名称は、《 竹久夢二「長崎十二景」の世界 》とい
います。平成10年に新しくオープンした、長崎ブリックホールの開
館一周年記念に、長崎市が自主文化事業として催したもので、「長崎
芸能華舞台」ていうサブ・タイトルが付いています。竹久夢二が、3
6歳の頃に描いた12枚の連作「長崎十二景」をもとに、日舞の藤間
富公衛師・花柳輔芳師、民踊の中山義夫師が数景ずつを担当して振り
付けられ、創作舞踊として再創造されたものです。       





〔その1〕青い酒


年前にこの企画が発表された時に、僕の師匠の富公衛師が「色々手
伝ってネ」とおっしゃってたのですが、その後何もお声が掛からず終
いだったので、当日楽屋のお手伝いをしながらでも拝見しようと、ノ
ンビリ構えていた所、突如お声が掛かって呼び出されました。「ヤッ
パリ、ちょっとだけ出て貰う事になりそうよ」という事でしたが、実
際にお話を伺ってみると、なんと「夢二」の役ではありませんか!そ
れでも始めは、各景をスムーズに転換させる為の、いわばツナギのよ
うな役と言うことだったので、気軽にお引き受けしたのですが、いざ
演出の先生方と打ち合わせてみると、殆んど最初から最後まで出ずっ
ぱりの、大変な役だと言う事が判りました。 
         





〔その4〕十字架


かし、乗りかかった舟で、もう後へは引けません。なかなかキチン
とした台本が頂けず、各景の音楽も人の出入りも解らないままに、い
きなり総合練習になりました。
100名近い出演者が右往左往するう
ちに、1回目の稽古は終ってしまい、後は師匠が僕の為に踊る場面を
作って下さった「眼鏡橋」の稽古をするだけで、とうとう本番2日前
になってしまいました。                   





〔その5〕燈篭流し


めての通しのリハーサルを終え、翌日は衣裳・カツラも着けての本
番通りのゲネプロ、という段取りで、事はドンドン運んでいきます。
ただ出入りのキッカケを教えられただけで、なんの演技指導も無く、
詩の朗読と夢路の心情を綴ったナレーションに合わせて、すべて自分
で演技を創らなければならなかった訳で・・・本当に大変でした!し
かも皆さんが踊っている間中、ズッと舞台にいて踊りを見ていなけれ
ばなりません。ウッカリ動くと踊りの邪魔になるし、ピン・スポット
は当ったままなので、ジッとしていても芝居をしていなければならな
いし・・・2時間余りの上演時間の中で、舞台から消えたのは、衣裳
を着替える為の数分間だけだったのですから、どれ位大変だったか、
お察し頂きたいと思います。                 





〔その10〕眼鏡橋


れでもなんとかやる事が出来たのは、付き人をしてくれた息子の一
言のお蔭でした。52歳の僕が36歳の夢二に見えるかどうか、本当
に自身が無かったのですが、「ドウ?36歳に見えるかナ?」との僕
の問いに、なんと「イイヤ、こんなに傍で見てても、26歳位にしか
見えないヨ!」と、真顔で答えてくれたのです!すぐ「木に登る」性
質の僕ですから、その息子の一言でスッカリ気をよくしてしまって、
本番は結構楽しく、気軽に演じる事が出来ました。それに、普段はな
かなか競演する事が難しい、花柳流の方達や民踊の中山流の方達と、
同じ舞台で交流できた事が、素晴らしい経験になったと思います。そ
して、ナント行っても1番得(?)したのは、ほんのチョイ役だった
はずの僕が、なんとプログラムのトップに大きく名前が載っていて、
何時の間にか「主役」になってしまってた事でしょう。門弟達が大喜
びしたのは、言うまでもありません!(笑)          





〔その12〕丘の青楼


<夢二画「長崎十二景」のご紹介>

大正、昭和のロマンを謳う流浪の画人として一世を風靡した竹久夢二は、
大正七年八月末から九月始めまで長崎に遊び、その翌々年の二月から三月
にかけて描きあげた十二景を長崎に残した。            


その1.半ば帯を解いた洋髪の女がしどけなく丸椅子に座り、グラ
スをかたむけている「青い酒」       

その2.紫の着物の袖を流して三味を弾く童顔の女、その傍にサボ
テンの鉢をあしらった「サボテンの花」   

その3.山高帽にステッキをもった外人さんのネクタイに、そっと
手をかける芸者を描いた「ネクタイ」    

その4.遊女は緑の長椅子に腰掛けて目を閉じ何を想うのか。彼女
の部屋に掛けられてある「十字架」    
 。
その5.港を見下ろす小高い丘の上に、浴衣がけの女が子供を連れ
て立つ、灯のまばゆい「燈篭流し」    
 。
その6.港の船が見える遊女屋の二階、外人客の前で洋風下着姿の
女が媚をつくる「化粧台」         

その7.長崎出島と牧師を背景に、芸者がひとり佇む「出島」 

その8.可憐な少女のひたむきなまなざしが、素朴な信仰を物語る
「浦上天主堂」              

その9.晴れた丘に蛸をげる人たちの、歓声が聞こえてくるような
「凧揚げ」                

その10.土蔵と石組みの橋につづいた石畳の道を、涼しげな絽の着
物の芸者がゆく「眼鏡橋」         

その11.アヘンに酔った少女たちが裸体をさらけ出して横たわる、
中国人街の長春楼を描いた「阿片窟」   
 。
その12.長襦袢の右袖を口元にあてた花街の女が、涼しい目をほん
の少し曇らせて立つ「丘の青楼」      




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