展示室6   義太夫 「道行旅路の嫁入」






[小浪]藤間富公衛師      [戸無瀬]藤間喜州


の作品を説明するのは、かなり骨が折れます。「赤穂浪士」の話を
人形浄瑠璃や歌舞伎に取り入れた、「仮名手本忠臣蔵」というお芝居
があることはご存知だと思いますが、その八段目の道行がこの作品で
す。ヒロインの小浪は、大星力弥(大石主税)と許婚者なのですが、
例の刃傷事件以来、親同士が不仲になってしまったため、結婚する事
が出来ません。不憫に思った義母の戸無瀬が、小浪とともに山科まで
「押し掛け女房」に出掛ける道中の様子を描いたもので、これといっ
たストーリーの展開はありません。それだけに大変難しい作品で、小
浪の方はまだ色々としどころがあるのですが、戸無瀬の方は辛抱役で
小浪の半分しか踊る所がありません。でも、ジッとしている間も常に
役になっていなければならず、小浪の芝居に対しても、邪魔にならな
い程度に反応しなければならないので、どこで息をしていいのか判ら
ないくらい大変でした。そんなに大変な役なのに、性懲りも無く2回
も踊ってしまったのです。もしまた踊る機会があれば、何度でも演じ
てみたくなるような、やり甲斐のある役です。まだ若い頃、中村歌右
衛門丈の120%心の行き届いた戸無瀬を拝見した事があります。と
てもあんな風には出来ませんが、良いお手本を目に焼き付けておくこ
とが、実際に演じる時にどれほどプラスになるかという事を、この時
ほど身に沁みて感じたことはありませんでした。ちなみに、この写真
の可愛らしい小浪は、僕の恩師の藤間富幸衛師です。      






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