展示室5   大和楽 「団十郎娘」





[丁稚]奥田慈子      [団十郎娘]藤間弥栄松


この作品を「古典」と言っていいのか、いささか迷ってしまいます。
現在「古典舞踊」といわれている作品の中には、「偽古典的」な手法
で作られてはいますが、
かなり新しい作品が多数含まれています。こ
の「団十郎娘」もその1つで、「大和楽」そのものが、新しい作風の
流派なのです。洋楽の要素を大胆に取り入れて、女性コーラスのよう
なハーモニーを聞かせる曲もある「大和楽」の中では、この作品は比
較的古風な雰囲気をもっています。ストーリーは、今で言う「オッカ
ケ」のお嬢さんを描いたものです。「市川団十郎」という歌舞伎の大
スターに憧れた娘が、「早く帰らないと、旦那様に叱られます!」と
いう丁稚の頼みも何処吹く風、芝居小屋の前を動こうとしません。そ
こで丁稚は一計を案じて・・・というもので、とてもユーモラスで可
愛らしくて、初心者が見ても解りやすい、楽しい作品です。本番では
いつもガチガチに緊張する娘の慈子が、この時ばかりはリラックスし
て楽しく踊れたのは、母親と踊っているという安心感からだけではな
く、曲の雰囲気にスンナリと溶け込めたからだと思います。   






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