展示室36   長唄 「四季の山姥」




示室8の常磐津「山姥」と同じテーマの作品ですが、地が長唄
なので、ドラマ性が薄い代りに、より華やかで艶やかな曲調に仕
上がっています。前半は「山めぐり」と言うより、嘗て遊女だっ
た頃の廓の情景や心情の表現にポイントが置かれていて、「冬」
になってやっと「山姥」らしい雰囲気になります。「秋」の後、
二上りになってがらりと気分が変るんですが、踊っていてどうし
ても気持ちが途切れてしまうので、僕はこの二上りの部分に抵抗
があったんです。(汗)たまたま長唄の方から、「この部分は初演
の時は無くて、後から挿入されたのだ」と伺ったので、今回は思
い切ってカットして演じました。本調子からいきなり三下りにな
るので、やや重い感じにはなりますが、気持ちがスムーズに流れ
ていく上に、上演時間もかなり短くなるので、これはこれでもよ
かったんじゃないかと思っています。




前回常磐津の「山姥」を踊ってから、約10年経ちましたので、
今回も常磐津で踊りたかったんですが、色々と予算の関係があり
まして(汗)、長唄になってしまいました。聴いてる分には実に美
しい曲で、僕も大好きなんですが、いざ踊るとなると何処か物足
りなさを感じるのは、僕だけでしょうか。但し「冬」の部分は実
に名曲で、杵屋直吉さんの素晴らしい唄で踊れたのは、本当に幸
せでした。展示室8と写真を見比べると、今回の方が明らかに老
け込んでますが(笑)、前回よりは少しだけ「山姥」らしく踊れた
ような気がしています。10年後にもう一度踊ったら、どんな感
じになるでしょうネ。その時を楽しみに、健康に歳を取りたいと
願っています。そうそう!写真ではよく判りませんが、衣裳の紫
色は写真よりもう少し薄い色で、髷の根には蔦の葉が掛けてあっ
た事を付け加えておきます。






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