展示室37   長 唄 「狸 屋 島」





兎:松本幸龍  狸:藤間喜州

この作品は比較的新しい作品ですが、最近は各流派で振付けられ
て、時折舞踊会で見掛けるようになりました。お伽噺の「カチカ
チ山」をテーマにしている点では、清元の「玉兎」に似ています
し、実際にウチには、「玉兎」を「兎」と「狸」の2人立ちで踊
る振りもあります。しかしこの作品の面白い所は、狸が土の舟に
乗って溺れる件を、有名な「屋島の合戦」に擬えて作られている
点でしょう。「戦物語」風の勇壮さと「お伽噺」風の軽妙さとが
上手く融合していて、曲調が変化に富んでいるので、踊っていて
もとても楽しく、役作りの工夫にも意欲的に取り組めました。




この作品のモウ一つの特筆すべき点は、藤間勘寿朗師の演出と振
り付けの素晴らしさです。他の流儀の舞台は、大抵勇ましい扮装
の男踊りで、中には大勢での群舞に振付けられている場合もあり
ますが、勘寿朗師は敢えて「素踊り」に設定して、尚且つ「兎」
を「芸者」にしてしまいました。一見突飛なようにも思える演出
ですが、コレが実に曲調にマッチして、お座敷での「俄」のよう
な雰囲気を醸し出す事に成功しています。この写真は、松本幸龍
さん主催の「たつの会」(於:日本橋劇場)に賛助出演させて頂
いた時のものですが、幸龍さんがこの振付の狙いを的確に捉えて
演じて下さったので、思い出に残る楽しい舞台になりました。






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