展示室34 常磐津 「松廼羽衣」
この「古典舞踊のサロン」では、原則として「素踊り」の写真は 掲載していません。「素踊り」の写真なら、数え切れないぐらい 沢山あるんですが、ご覧頂いてもドレも同じ踊りのようにしか見 えないと思うからです。但し組踊りで、相手の方の扮装が違うも のは、今後随時掲載していきたいと思っています。この写真は、 福岡市・大濠公園の能楽堂で催された「明日香流大会」に、友人 の花柳礼志摩さん(北九州在住)と賛助出演した時のもので、能 楽堂で踊るのに相応しい演目でしたし、礼志摩さんと初めて踊っ た記念すべき写真なので、掲載する事にしました。なかなか一緒 に稽古する事が出来ないので、2人で踊る部分は花柳流の振りで 踊り、伯龍1人の部分は藤間流の振りで踊りましたが、観ていて 殆んど違和感はなかったとの事でした。他流の振りを踊らせて頂 く事はあまりなかったので、とても勉強になりました。 |
<天女>花柳礼志摩 <伯龍>藤間喜州
この作品は題名からも判るように、三保の松原の「羽衣」伝説を 舞踊化した物で、本来漁師の「伯龍」は、大口袴に水衣という着 付けで演じるのですが、僕は何度も踊っているにもかかわらず、 本衣装で踊った事は一度もありません。この踊りの難しいところ (つまり見所)は、なんといっても後半の部分で、羽衣を身に着 けた天女が、舞を舞いながら段々と天空高く飛び去って行く場面 でしょう。同じ平面の舞台の上で、天女は羽根のように軽やかに 舞いながら、空中で舞っているように演じなければならないし、 伯龍の方も、天女が空高く舞い上がっているという設定で、段々 と目線を高くしていかなければなりません。しかも実際には、舞 台上ですれ違ったりする訳ですから、実際に演じてみると、なか なか大変な踊りです。最後は橋懸りでキマッた後、静寂の中をお 幕に引っ込みましたが、とても余韻があって気持ちがよかったの を覚えています。但し能舞台では、三方から観客の視線を浴びる ので、一瞬たりとも気を抜けないのが、本当に大変でした。 |