展示室29   清 元 「柏 の 若 葉」






藤間弥栄松                    藤間金晟


の作品は、チョッと珍しいので掲載しました。と言っても、「柏の
若葉」という曲自体が、珍しい訳ではありません。清元の中でも、比
較的頻繁に上演されますし、なかなか凝った節付けで人気のある作品
です。それでは何処が珍しいかと言いますと、振り付けの趣向が変っ
ているのです。この曲は五世清元延寿太夫の襲名披露に、「青海波」
と共に初演されたもので、四世延寿太夫の妻・お葉が語ったとの記録
がありますが、一説には四世が節付けに悩んだ時に、お葉の助言を得
て完成した曲と言われています。そこで、普通は男1人立ちの素踊り
で演じる所を、四世延寿太夫とお葉とに見立てた、男女の2人立ちに
振付けてあるのです。素踊りの場合、男性は紋付袴、女性の男立ちは
着流しに後見結びの帯で、俗に「前割れ」と呼ぶ「鬘下地」の鬘を着
けるのですが、ここでは、男仕立ての着流しに角帯を結び、ザンギリ
の鬘を着けています。歌詞はご祝儀曲らしく、春夏秋冬を読み込んで
いますが、舞台の方は紗の羽織や紗袷の着付けで、初夏の雰囲気に仕
上がっています。また、浄瑠璃本や三味線を小道具として使用するな
どして、ともすれば単調になりがちなご祝儀曲に、見た目の変化も考
えた振り付けがされています。僕も何度か踊りましたが、古風な中に
もモダンな感覚があって、とても楽しく踊れる作品です。   
 。







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