展示室28   荻江節 「鐘 の 岬」







れは、長唄の代表曲「京鹿子娘道成寺」の流れを汲む作品です。初
代中村富十郎が関西で「娘道成寺」を初演した折、「九州釣鐘岬(か
ねがみさき)」と題して踊ったものがそのまま「地唄・鐘ヶ岬」とし
て残り、更にそれを荻江節に移したものが、この「鐘の岬」だといわ
れています。したがって歌詞は、地唄も荻江節も長唄の「娘道成寺」
とホボ同じですが、前半の毬唄の「思い初めたが縁じゃエ〜」までし
か踊りません。当然地唄と荻江節では、節回しも合方も微妙に違うの
ですが、それをハッキリと聴き分けられるお客様は、随分少なくなっ
たようです。また、荻江節独特の、古風な中にも艶のある楽しさも、
段々理解されなくなってきているのは、実に淋しい事です。確かに長
唄の「娘道成寺」のような、曲調の変化やメリハリに乏しく、衣裳を
引き抜いたりする訳でもないので、幕切れまでお客様の心を引き付け
続ける事は、大変に難しいと思います。というよりも、演者自身が緊
張感を維持しながら、曲の変わり目毎に微妙に気持ちを切り替えてい
けるかどうかも、大切なポイントになるでしょう。僕自身は好きな踊
りなのですが、今では上演し辛くなりました。         







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