展示室26   大和楽 「あ や め」







の「あやめ」ように、比較的に生な女性美を要求される作品は、男
性が演じるにはかなり辛いものがあります。もともと、歌舞伎の中の
所作事というのは、立役中心のドラマの中で、唯一女形の独壇場だっ
た訳ですから、今日も演じられている古典舞踊の中の女性役は、男性
が演じる事を前提として作られているものが殆んどです。ですから、
「傾城」であれ「姫」であれ、古典舞踊の女性を演じるのは全然抵抗
がありませんし、その為に何百年も掛けて完成されたテクニックを駆
使すれば、誰が踊ってもそれらしく見えるように出来上がっている訳
です。                           






ころが、大和楽という音楽自体が、歌舞伎的な世界とは異質な、洋
楽の特長を大胆に取り入れたモダンな新邦楽ですから、当然振り付け
も古風な振りだけでは賄いきれず、洋舞のテクニックを取り入れたり
明治以降の新しい美人画のような、浮世絵よりもより生でモダンな美
しさを表現しようとする振りにならざるを得ません。そうなると、ど
んなにテクニックで女性らしく見せようと努力しても、立ってるだけ
でも顔も姿も美しい本物の女性には、とても太刀打ち出来なくなって
しまいます。これは踊る技術の巧拙以前の問題で、これからは益々こ
の手の作品が流行るでしょうから、僕達男性舞踊家は、色々と対抗策
を考えなければならなくなりそうです。そんな大和楽の中でも、「あ
やめ」「かしく道成寺」などは、挑戦したいと言う意欲をそそられる
作品です。                        
 。







「古典舞踊のサロン」TOPへ

前ページへ   次ページへ