展示室25   常磐津 「関 の 扉」






(墨染・実ハ小町桜の精) (関兵衛・実ハ大伴黒主)
藤間富公衛師        藤間喜州  


の作品を解説することは、非常に困難です。話が長くて複雑に入り
組んでいる上に、顔見世狂言の大喜利所作事の例に漏れず、やたらと
「勘合の印」だの「割符」だの、「何とかの明鏡」だのが出て来るの
で、益々何が何だか解らなくなってしまいます。天下を狙う大悪人、
大伴黒主が、逢坂の関所の関守り関兵衛に身をやつして、ジッと時節
を待っている所へ、
突如小町姫が現れたり、恋人の宗貞とバッタリ再
会したりするのですが、この前半の部分は、お浚い会ではカットされ
る事が多いようです。僕が踊った時も、後半の下の巻だけでした。






繰りの啓示によって、(これも、何だか訳が解らないのですが)時
節到来ということで、関兵衛は大鉞を研いで桜の古木に切りつけます
が、ドロドロで気を失うと、傾城墨染(実は小町桜の精)が、古木の
洞の中から現れます。この辺り、子供心にワクワクしながら観た記憶
があります。2人は名乗り合い、関兵衛が1度も廓通いをした事がな
いという話から、廓話になります。痴話喧嘩をしている内に、関兵衛
が「血染めの片袖」(何故こんなものを、関兵衛が持っているかを説
明すると、コレマタ長くなるので、割愛しますが)を落とした事から
見現しになり、2人とも衣裳がブッ返って髪も捌き、激しい立ち回り
になります。                        






の立ち回りの部分は本当に大変で、特に男は大鉞を振り回さなけれ
ばならないので、途中で止めたくなる位キツかったのですが、幕が降
りた後は、激しいスポーツの後の心地よい疲労感に似て、とっても爽
快な気分になれました。幕が降りた途端、富公衛師が「喜州さん、ま
た踊ろうネ!」と言って下さったのを、覚えています(師匠は、もう
忘れていらっしゃるかもしれませんが・・・)。墨染が1人で踊って
いる間に、舞台の上で後ろ向きで、位星や青髭を自分で書かなければ
ならないので(大鉞に、鏡が仕込んであるんです)、これも大変だっ
たんですが、何とかクリア出来ました。この作品は、後に素踊りでも
踊った事があって、コチラも美味しい所を上手く纏めてありました。
本当に大変な踊りであるにもかかわらず、また踊ってみたくなる、不
思議な魅力に満ちた作品です。                




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