展示室24   常磐津 「年  増」







れは、娘や芸者といった、花も盛りの女性ではなく、中年女性の熟
れ切った独特の雰囲気が楽しめる作品です。「年増」とはいっても、
江戸時代の年齢感覚から言えば、20代後半から30歳ソコソコなの
でしょうが、かといって、現代のその年齢の女性をイメージして踊っ
たのでは、少しズレがあるようです。現代ならやはり、40歳前後の
花も実もある年頃の女性ということになるでしょう。役柄も、芸者上
がりの妾という設定で、現役の若い芸者と、自分の旦那をめぐって争
う様子を、いわゆる「しゃべり」という近松以来の雄弁形式で、仕方
話で表現する所が面白く、一人二役でつかみ合いの喧嘩を演じる所な
ど、理屈抜きに楽しめる踊りです。              






然の事ながら、眉毛を剃って鉄漿(おはぐろ)を付けていますが、
最近ではテレビの時代劇でも、既婚者が眉を剃ったり鉄漿を付けたり
しなくなったので、(極端な場合、爪を伸ばしてマニキュアをしてる
ことがあります。それも、大女優といわれる人が!)この独特の美し
さと色気を、果たしてどれ位の人達が解ってくれているのか・・・人
妻や母親の役が好きな僕には、いささか不安です。観ている分には、
楽に演じているように見えますが、駕篭から雪駄を履いて出る所から
始まり、煙草入れ・懐紙・帯揚げ・玉簪などを、ごく日常的な動作で
さりげなく扱いながら踊らなければならないので、意外と大変なので
す。抜いた玉簪を襦袢の袖で拭いて、髷の根の部分に挿すのだって、
やってみるとなかなか上手くいかないのですが、一々後見に手伝って
貰うのも煩わしいので、自分でやる外ありません。「さりげなく演じ
る」って、本当に難しいですネ!               







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