展示室19   長 唄 「鷺  娘」








この写真は、なんと30年余り前の、僕の名披露目の時の写真です!
押入れを整理していて発見しました。場所は新宿の、「朝日生命ホー
ル」です。とても恥ずかしいのですが、最近の「鷺娘」の舞台とは、
特に衣裳に違いがあるようなので、参考の為に掲載しました。ご笑覧
下さい。                         
 。






まず気が付く事は、衣装に比翼が付いてないことです。最近は殆んど
が比翼付きになりましたし、衣裳の模様も染だけではなく、刺繍入り
の豪華なものが増えています。でも僕は、やはり友禅のものが好きで
すし、この紫色の八掛も、「鷺娘」らしくてイイと思います。  






鬘も、1度着替えて出る時には、写真のように「結綿」から「つぶし
島田」に替わっていたのですが、最近は「結綿」のままで、ツマミの
簪やクス玉の簪も付ける場合があるので、見た目は豪華なのですが気
分が変わりません。最後に髪を捌く時にも、差し物が多いとスンナリ
いかない場合もあるんです。                 






最後の「セメ」の衣裳は、現在とほぼ同じですが、髷の根に掛けた小
ギレにご注目下さい。最近のは白地か淡いピンクのものが多いのです
が、写真では赤い布の上に白い紗を掛けて、淡紅(トキ)色を出して
います。確か最初の白無垢の時の襦袢の襟も、そうしてありました。
この頃は、そういう余りお客様が気付かないような部分に、手抜きが
多いように感じます。                   
 。





さて、作品の紹介が後回しになってしまいました。この作品について
は、実に様々な解釈が在るようですし、明治時代にアンナ・パプロワ
の「瀕死の白鳥」の影響を受けて、ガラリと様子が変わってしまった
ようです。元々は「娘道成寺」や「浅妻船」などと同じく、女形の美
しさを、あらゆる角度から楽しむ為の踊りであった筈です。ただ最初
に白無垢姿で現れて、衣裳を赤に引き抜いてからは「恋を知り初めた
嬉し恥ずかしい気持ち」を踊り、1度着替えてからは、「男の心が掴
めない悩み」や、「相合傘でのデートの楽しさ」を踊った後、破れた
恋への煩悩ゆえに地獄の炎に身を焼く様を踊るので、丁度結婚が叶わ
ないままに死んだ娘が、鷺の精となって現れて、在りし日の様子を物
語ると言うようにも解釈できる訳です。ただし現在見所聞き所となっ
ている「羽ばたきの合方」や「セメ」の後半の長い合方は、全て新し
く付け加えられたものだと言う事は、知っておいた方か良いかもしれ
ません。その新しい合方ゆえに、幕切れはバッタリ倒れて死んでしま
うやり方が殆んどのようですが、「娘道成寺」とほぼ同時期に出来た
古典中の古典としては、やはり二段に上って三重で大きく見栄を切っ
て幕にする方が本格だと思います。             
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