CR-Equaliser の設計

イコライザー回路の設計、特にCR型については、近年RIAA-CD とかが出てきて、またぞろ脚光を浴びているようです。

しかしながら、アマチュアの自作例を見ると、きちんと計算してから設計するという例は皆無と言って良いほどで、相も変わらずカットアンドトライなどと言う、いささか力技に頼るというか、強引な手法が目に付きます。

最近は回路シミュレータを使う例も多いようですが、本質的には同じ事です。

CR型に限らず、RIAAイコライザーなんざ計算してから作れば、余程精度の悪い部品を使わない限り0.2dB以内の精度なんて、至極簡単に出ます。
測定器の揃えの無いアマチュアだからこそ、きちんとした理解を得る意味からも、こういう計算が大事だと思うのですが。

本来の回路シミュレータ(Spiceなど)の使い方は、ちゃんと計算してから、部品のQや誤差、ばらつき、能動部品ならその特性などの影響を見るために使うものであり、いきなりこれで Cut&Try なんてのは本末転倒ですし、時間ばかり掛かります。

尚、この計算はラプラス変換とフーリエ変換を理解していなければ出来ませんので、解らない方は先ずこちらを読んでからにして下さい。



次の図に示すCR型イコライザーの設計を考えます。
 

図から、次の(1))〜(3)式が成立します。

(3)式より

これを(1)、(2)式に代入してそれぞれ整理すると

よって伝達関数 H (s) は

 

RIAAの時定数をそれそれ高い方からT1T2T3とするとターゲット特性T(s) は

ここに、RIAA規格から、T1=75μsec、T2=318μsec、T3=3.18msecです。

よって(4)、(5)式を恒等的に解けば良い事になります。

明らかに、12T2 。従って、これを先ず決定します。
未知数は二つあるので、多数の組み合わせがありますが、それぞれ0.047uF、6.8kΩとします。

それぞれの分母多項式から、残りが決まります。

私はエクセルで計算しました。
残りが1=56kΩ、2=4.7nF(4700pF)、3=11kΩとなります。
わりと簡単でしょ。



時々、勘違いする人が居るようなので追記しておきます。
CR-EQ の次に来るアンプの初段バイアス抵抗は、CR-EQ の後に入れてはいけません。そんなことをすれば、折角の計算値が台無しになります。
FET(或いは真空管)なら、要するに電圧さえ確定すれば良いのですから、CR-EQの前に入れます。そうすると、R1、R3 を介して電位が確定します。プリアンプのページのブロックダイアグラムをご参照下さい。

それから、CR-EQ の前段の出力抵抗分は、R1 の値に加えなければなりません。この辺りの事については、フーリエ変換のページにも書いています。
前段の増幅器がエミッタフォロア送り出しであれば、気にしなくても大丈夫ですけど、このアンプのようにインピーダンス変換器が無い場合には、EQ 前段の出力抵抗分は、帰還抵抗を含む負荷と負帰還量から計算する必要があります。

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2003/5/5 Last update
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