超三極管接続 6BM8シングル








上条氏の開発した超三極管接続をベースに、私なりにアレンジして設計した回路です。

動作原理は、いわゆるトランス・コンダクタンス・アンプです。
超三極管接続の基本原理はここに書いてあります。
それ以前に、真空管そのものが判らないのなら、まずここを読んで下さい。

エミフォロと抵抗を入れて、グリッド電位をシフトしていますが、エミフォロは無くても動作します。
電源からグリッド側の150kの抵抗は、動作上は定電流にするのが理想的ですが、グリッドにエミフォロが入っているし、抵抗で大丈夫と判断しました。
ところが、これが間違いの始まり。後で説明しますが、訳のわからん現象に悩まされることになります。

初段バイアス回路にカレントミラー型定電流回路を用い、その基準電位を出力段カソードからとってDCバイアス・サーボをかけています。
全段直結ですし、超三結の動作原理からも、出力のバイアス電流を安定化させるにはこれぐらいやってもバチは当たらないでしょう。

定電流の基準電位検出が45VにダイオードORでつながっているのは、電源立ち上げ時に、初段Tr.に高圧がかからないようにする為で、ダイオードでスイッチさせています。
これ、ある程度まで作ってから、後で調整方法を考えていて、ヤバイ事に気が付いて急遽入れた回路です。もう少しうまいやり方があるでしょう。


続いて、定電圧電源回路に付いて説明します。

この形式の定電圧回路は、私の実用新案です。だからどうだ、という事はありませんが、まあ、一種の自慢ですかね、これは。(^o^;)
プリアンプの項でも触れましたが、NFB型のシリーズレギュレータは、簡単に発振します。
しかし、この回路は非常に安定で、安定度は出力Cにあまり影響を受けません。奇麗な1ポールである証拠です。
それでも、誤差増幅器の能動負荷はイマイチのようで、私は使いません。

定電圧を入れたのは、電源トランスの電圧が高すぎて、しかも電源トランスやLに安物を使ったせいで、レギュレーションも悪いからです。普通はここまでやるのは、奨められません。良い電源トランスと良質なLCフィルタを使った方が安上がりでしょう。

基準電圧をTr による定電流回路と抵抗で構成しました。出力インピーダンスが高いので、電源側誤差増幅を差動形式で受けています。SG基準電圧の出力エミフォロも同じ理由です。

L/R独立なのは、手持ちのTrのPcの関係から、制御Trが二つ入り用だったし、高耐圧の電解コンの余りも無かったからです。出力のCが小さくて済む(無くても動作します)事はメリットですね。

でも、わざわざTrを買ってまで、こんな事をするのはどうかと思います。私は、Tr を持っていたからやった迄ですから、誤解の無きように。
ともかく安く上げようと思って、トランス類は最低の値段のものを使ったらこうなった、ということです。

電源に使用したTr.の耐圧は、150Vです。出力のC小さく、入力時定数が大きいので、ショート事故でもない限り、耐圧を超える電圧がかかる事はありません。

−C電源は、倍圧整流の一般的なものに、くだんの定電圧回路を加えていますが、これはやりすぎかも知れません。私は手持ちのTrを使ったので、タダですが。

また、6BM8にはEiのものを使用しましたが、これが大問題。なんとカットオフにヒステリシス特性を示しました。価格は安くても、これでは使えません。
このために下図の様に、正側の右半分がクリップし、もっと入力を入れると普通のクリップ波形になります。

このままでは少し歪みが多いです。私がロードラインを引いた時に読み違いをして、歪みの少ない所に動作点を置いたはずが、多い点に置いていた為でした。間抜けでした。
(実は、上条氏に指摘されて気が付いたんですけどね。)



変更
このままだと特性的に 今ひとつ面白くないので、変更した回路が次の回路です。

最大の変更箇所は、三極部のグリッドバイアスを決めていた抵抗をプレートからとって、帰還をかけた事です。
これで6dB強 ゲインが減るので、初段FETのソース抵抗を小さくして、約1Vrmsで最大出力付近になるよう調整しています。
帰還用の三極管で発生していた歪みはその分だけ減るわけです。
初段にオーバーオール帰還をかけた訳ではないので、DF(ダンピング・ファクター)は変化しないと思ったのですが、予想外にDFも向上しました。

これで随分悩んだんですが、原因は、初めの回路だと、定電流がわりに抵抗(150kΩ)を使ったために、そこから三極管のグリッドに正帰還をかけた状態になる為です。
(勿論、全体としては終段へのNFBが減るだけで、実際には正帰還ではなく、100%の帰還が85%とかになるという事です。)
逆に言えば、最初の回路ではDFコントロールも可能なわけですが、三極部の動作点は適正ではありませんから、もう少し練ってやる必要があります。

トランスの+B端子とP端子を逆に使って、軽いUL接続にしてあります。
こうすることで、例のヒステリシスによる不自然なクリップが多少緩和されて、最大出力は逆に上昇しました。
(通常、UL接続はかなりの出力減になります。普通は奨めません。まともな真空管を買った方が良いです。)

ただし、ULにすると音質も変化します。三結も試したんですが、三極管みたいな音になったんで驚きました。(なんでだろ?)

出力トランスに安物(\1500)を使ったら、これがとんでもない間違いで、周波数レンジが狭いです。
よく調べてみると、Hi-Fi用と謳っているにも関わらず、ガラ巻きでした。笑っちゃいます。(正しい?Hi-Fi用は分割巻きです。)
(これを買った店ではもっと安いものも売っています。これでもシングル用では一番マシな物です。)
全体に、安い部品を使いすぎて失敗しています。皆さんも気を付けましょう(^^;)

調整方法について触れておきます。先ず、定電圧電源を規定電圧に調整します。この時は、本体は接続しません。
次に本体です。電源の配線をしてから、200Ωトリマで初段の電流を1mAにし、10kΩトリマで終段のカソード電圧を68V付近にします。
30分ぐらいしてからもう一度。以上です。

良い点はS/Nです。何しろ意に反して(?)強力な定電圧電源を入れてありますから、リップルは皆無で、ハム等のノイズはスピーカーに耳をくっつけても聞こえません。
聞いていて疲れない音なので、まあこれはこれで良いかな、と思ってます。
 

#6BM8をEiのものからSvetlanaに変更しました。
変更の理由は、Eiがふざけた特性を示した事は勿論ですが、三栄無線が店舗閉鎖に伴って安売りしていたため、ここぞとばかりに買い込んだからです。

特性の違いは、あまりにも明らか。Svetlanaの優秀性が証明されました。何しろ、本来五極管ではばらつきによる出力差は小さいのですが、Eiより大きな出力が出るんだから、笑ってしまう。

肩の特性が違う。カットオフもシャープだから、クリップもはっきりしている。
直流安定度でも上回る。

さらに重要な点として、見た目が良い(笑)。金色の文字がオーディオっぽいし(爆笑)。
でもね、はっきり言って、見た目のしょぼいアンプはあんまり使う気しないでしょ。

明らかに、管の大きさが一回り大きく、重い。プレートが一回り大きい。どう見ても作りが違うし、第一、同じプレート損失には絶対に見えない。明らかに、ワンランク上。6BM8と6GW8ぐらいの違いがある。何故かSGはEiの方が放熱の板みたいなのがついていて良さそうに見えるけど。

ガラスも厚手ですから、長期信頼性も期待出来る。これは精神安定上にも良いことです。

肝心の音は?
まぁ、好きずきでしょうね(^o^;)。Svetlanaの方が太い音で、力強く感じるから、私としてはこっちに軍配を揚げるけど。
これに伴って、出力管の接続を通常の多極管接続に戻しました。


さらなる高性能化

性能を上げると言っても、このアンプに多額のお金をかけるのはどうかと思います。
部品が余っていて、少し遊んでみようと言うなら解りますが、そうでないなら、そこそこで見切るべきでしょう。
これで試しておいて、さらに高性能な球とトランスで実現するための踏み絵にはなるでしょう。

ここに示すのは、そんな遊びの回路です。
パワーアップと低歪み化を狙うなら、こんなやり方もありますよ、というアピールですから、あくまで紙の上での遊びで考えたまでです。

Grounded grid


カソードをドライブすることで、五極部入力電圧にも、出力電圧に参加してもらいます。
位相の関係でいずれにせよドライブ段が追加になりますが、ヒーターバイアス電圧が別に必要ですから、それをドライブ段の電源とします。

出力電圧は増えますが、電流は変わらないので出力管の最適負荷は高い方に移動します。トランスのインピーダンスは少なくとも7kΩぐらいは必要と思います。

出力は明らかに増大します。NFB量が増えるし、しかも動作的には固定バイアスに近いので、歪みもかなり改善されるでしょう。
動作的には上条氏の超三結 ver.1と ver.2 の中間的動作に、三極部負帰還がかかった状態です。超三結 ver.1.5(?) ってところか。

終段のPNP-TrはパワーTrで、しかもhfeがある程度必要です。ダーリントンなら完璧です。
Pch-MOS−FETは入力容量によるポールが下がり過ぎるので、難しくなると思います。(出来なくはないですが。)
さらに、放熱器は絶対必要です。Pcをきちんと計算して、周囲温度80℃ぐらいまでのディレーティングを考慮しなければなりません。

C-bypは初段にDCサーボをかけるためですが、これを除いてオーバーオールの帰還をかけるという手もありでしょう。
ただし、その場合は段数とゲインからみて、位相補正が必要になると思います。

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