1. Cauchy-Schawarzの不等式
2. 2次方程式を用いる証明
3. 相関係数
4. 標準偏差と平均偏差
n は自然数とし, 任意の実数 x1,x2,…,xn と y1,y2,…,yn に対して次の不等式が成り立つ。 |n∑i=1xiyi|≤√n∑i=1xi2√n∑i=1yi2
まず n=3 の場合の不等式を証明しよう。 |3∑i=1xiyi|≤√3∑i=1xi2√3∑i=1yi2 そのために,両辺の2乗についての不等式を証明する。 3∑i=1xi23∑i=1yi2−|3∑i=1xiyi|2≥0 第1項を,i と j が異なる部分と一致する部分に分けて展開し, 3∑i=1xi23∑i=1yi2=3∑i=1xi23∑j=1yj2=(x21+x22+x23)(y21+y22+y23)=(x21y22+x22y21)+(x21y23+x23y21)+(x22y23+x23y22)+(x21y21+x22y22+x23y23) 第2項も同じように展開する。 |3∑i=1xiyi|2=3∑i=1xiyi3∑j=1xjyj=(x1y1+x2y2+x3y3)(x1y1+x2y2+x3y3)=2x1y1x2y2+2x1y1x3y3+2x2y2x3y3+(x21y21+x22y22+x23y23) 第1項から第2項を引くと,各々の展開式の最終項が相殺されて, 3∑i=1xi23∑i=1yi2−|3∑i=1xiyi|2=x21y22+x22y21−2x1y1x2y2+x21y23+x23y21−2x1y1x3y3+x22y23+x23y22−2x2y2x3y3=(x1y2−x2y1)2+(x1y3−x3y1)2+(x2y3−x3y2)2≥0 が得られる。よって |3∑i=1xiyi|2≤3∑i=1xi23∑i=1yi2 となるので,2乗を取り去ると次の不等式が成り立つことがわかる。 |3∑i=1xiyi|≤√3∑i=1xi2√3∑i=1yi2
一般の n についても上の証明と同じような展開をすればよい。 ΣΣi ≠ jとは,i ≠ j を満たすすべての i,j についての総和, ΣΣi < jとは,i < j を満たすすべての i,j についての総和のことである。 n∑i=1xi2n∑i=1yi2−|n∑i=1xiyi|2=n∑i=1xi2n∑j=1yj2−n∑i=1xiyin∑j=1xjyj=∑∑i≠j(xi2yj2−xiyixjyj)+n∑i=1(xi2yi2−xi2yi2)=∑∑i≠j(xi2yj2−xiyixjyj)=∑∑i<j(xi2yj2+xj2yi2−xiyixjyj−xjyjxiyi)=∑∑i<j(xiyj−xjyi)2≥0 よって |n∑i=1xiyi|2≤n∑i=1xi2n∑i=1yi2 となるので,2乗を取り去ると次の不等式が成り立つことがわかる。 |n∑i=1xiyi|≤√n∑i=1xi2√n∑i=1yi2
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3. 相関係数
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n は自然数とし, 任意の実数 x1,x2,…,xn と y1,y2,…,yn に対して次の不等式が成り立つ。 |n∑i=1xiyi|≤√n∑i=1xi2√n∑i=1yi2
実数 t についての2次式の和を展開する。 n∑i=1(txi−yi)2=t2n∑i=1x2i−2tn∑i=1xiyi+n∑i=1y2i これは2乗の和になっているから常に非負である。 したがって次の t についての2次方程式は,解をもたないか重解をもつかのどちらかである。 t2n∑i=1x2i−2tn∑i=1xiyi+n∑i=1y2i=0 解の判別式が負または0となるので, 0≥D4=(n∑i=1xiyi)2−n∑i=1x2in∑i=1y2i が成り立つ。 |n∑i=1xiyi|2≤n∑i=1x2in∑i=1y2i であるから,2乗を取り去ると次の不等式が成り立つことがわかる。 |n∑i=1xiyi|≤√n∑i=1xi2√n∑i=1yi2
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1. Cauchy-Schawarzの不等式
2. 2次方程式を用いる証明
3. 相関係数
4. 標準偏差と平均偏差
x1,x2,…,xn と y1,y2,…,yn に対して,次の値を x の標準偏差(standard deviation)といい,σx で表す。 μx は x の平均値とする。 σx=√1nn∑i=1(xi−μx)2 y の標準偏差 σy も同様にする。 σy=√1nn∑i=1(yi−μy)2 また,次の値を x と y の共分散(covariance)といい,σxy で表す。 σxy=1nn∑i=1(xi−μx)(yi−μy) そして次の値を相関係数(correlation coefficient)といい,ρxy で表す。 ρxy=σxyσxσy 一般に −1 ≤ ρxy ≤ 1 となることが知られている。 そのことを以下に示す。
相関係数は常に −1 以上かつ 1 以下である(−1 ≤ ρxy ≤ 1)。 Cauchy-Schwarzの不等式を利用してこれを示そう。 xi−μx と yi−μy に対して, Cauchy-Schwarzの不等式を用いる。 |∑(xi−μx)(yi−μy)|≤√∑(xi−μx)2√∑(xi−μx)2 両辺を n で割ると |1n∑(xi−μx)(yi−μy)|≤√1n∑(xi−μx)2√1n∑(xi−μx)2 左辺は共分散の絶対値,右辺は2つの変数の標準偏差の積である。 等式全体を右辺値で割ると |σxyσxσy|≤1 となり,|ρxy| ≤ 1 であるから, 相関係数 ρxy の値の範囲は −1≤ρxy≤1 となることがわかる。
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2. 2次方程式を用いる証明
3. 相関係数
4. 標準偏差と平均偏差
x1,x2,…,xn に対して,次の値を標準偏差(standard deviation)といい,SD で表す。 μ は平均値とする。 SD=√1nn∑i=1(xi−μ)2 また,次の値を平均値からの平均絶対偏差(average absolute deviation)といい,AD で表す。 簡単に平均偏差ということもある。μ は平均値とする。 AD=1nn∑i=1|xi−μ| 一般に AD ≤ SD となることが知られている。 そのことを以下に示す。
平均偏差は標準偏差より常に小さいかまたは等しい(AD ≤ SD)。 Cauchy-Schwarzの不等式を利用してこれを示そう。 xi と μ の差の絶対値を yi とおく。 yi=|xi−μ| yi と 1 に対して,Cauchy-Schwarzの不等式を用いる。 |∑yi⋅1|≤√∑yi2√∑12 両辺を n で割ると 1n∑yi≤√1n∑yi2√1n∑12 左辺は平均偏差,右辺は標準偏差と1との積である。 よって AD≤SD となることがわかる。
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2016.8.6 作成 / 2016.8.16 更新
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