病気と座礁
Desease and Stranding





病 気

口の中を診てますよ〜        体温計ってますよ〜         咳してま〜す「ブシッ!ブシッ!」
 クジラもイルカも風邪を引く。パブロン飲んで早く寝る・・訳にはいかないが、水族館では餌の魚に薬を混ぜています。神経性ストレスによる免疫の低下で肺炎/肝臓病/腸炎など人間と同じ様な病気を引き起こす様です。特に細菌やウイルスなどによる肺炎が最も多い病気。
参考までにイルカの咳の様子ですが、噴気孔から立て続けに「ブシッ!ブシッ!ブシッ!」と息を吐き出します。(希に威嚇する時にも「ブシブシ」」言います)
 水族館で飼育係がイルカやシャチの尾をひねって裏返しにしているの光景を見た事が有ると思いますが、尾鰭の両側に有る太い血管から血液をとったり、肛門からの検温を行う自発的トレーニング(ハズバンダリィ・ビヘイビアー)なのです。クジラ・イルカ専用目薬や塗り薬、イザと言うときは点滴も使います。
血液検査内容は20〜30項目で中にはコレステロール/GOT/GPTといった具合に人間と殆ど同じ検査内容です。メスに於いては黄体ホルモンを測定する事により妊娠を知る事も出来、オスの場合でも発情具合いを知る事も出来ます。無論病気等の疾患も白血球の数から推測できますし、現在の血液検査ではさらに個体のストレス度合いから、年齢まで査定できます。
 巻き網漁で捕獲されたイルカがショック死すると言われて居ますが、絡まっての窒息以外は意識もちゃんとしており、生きているようです。カンタンに説明すると網による捕獲が群のシステムを崩してしまった結果、防御する術を無くし固まってしまうのです。(イルカの群システムは極めて重要で、彼らの生命線と言って良いでしょう)。
 注射器型のクスリ入れ器
この注射器で餌の魚にクスリを入れ、その魚をイルカやクジラに与えます。向かって左が胃のクスリ・右が肝臓のクスリです。クスリは人間と同じ物を体重換算とデーターなどからイルカ・クジラ一頭一頭に合わせているのです。人間と同じクスリで良いのか?って?鯨類専用のクスリは開発されておらず、今の所これが最善なのです。実際イルカの血液成分は比率さえ違いますが人間と差ほど変わりませんし、それに・・・人間用のクスリと言っても、初期の開発段階では色々な動物達からデーターを取っている訳ですよねぇ。ですからイルカやクジラが可愛そうとは思わないようにねっ!
生活水温
 自然界でのクジラやイルカ達の生活圏は幅広く、子育てや補食などの生活サイクルで赤道から北極圏まで回遊する種類も居ます。又、同じ種族でも生息緯度が異なっていたり、シャチに至っては世界中の海で見る事ができます。従って水温に対しての抵抗力・順応力は高いと考えられます。では水族館でのイルカやクジラはというと、日本の動物園でもラクダやライオンが「毛深くなる」のと同じ様に、寒い時期は「脂肪」を蓄えて適応しています。
 水族館のイルカプールというと、ベルーガの場合15度〜20度、その他のイルカやクジラについては2月の寒い時期の水温(12度位)を下限とし、上限は定めていません。※ベルーガ以外は比較的暖かい海域に棲んでいる為。
体温
 人間とほぼ同じ36度〜37度。風邪や病気のときにはやはり熱が出ます。また、水族館では体温でイルカ・クジラの妊娠を知るてがかりにしています。(妊娠を知るには体温検査/血液採取/検尿など人間と同じ方法です)


死亡原因
 海水の温度は自然の状態であるなら摂氏マイナス1度〜プラス30度程度。陸地で生活する哺乳類と比較しても生活圏での温度差は少なく水温に関しては高い適応力が有ると考える。又、陸地の様に山脈や大河など回遊を妨げる障害物も無い海では、生活に適した水温や塩分濃度を回遊によって選ぶ事も出来る。もちろん水族館での水温や塩分濃度は彼らの許容範囲内に合わせている。従って物理的環境が死亡要因になるとは考え難い。他に死亡原因を調べてみると、感染疾病症(先に記した病気と同じ物)、寄生虫による機能障害、老衰、自然状態ならこれに餌生物の枯渇による飢餓(これは生態的地位の競争と考える)、種間競争によるストレス、全ての複合症と別項のストランディングが死亡原因として上げられると考えています。
 ※サメ等の襲撃も死亡原因に含まれるかも知れないが、サメの仲間でクジラやイルカだけを主食にした種類の存在はサメの基本的生態からは考え難い。又、サメ類の食性からも先に記した疾病等により弱った個体を襲っていると述べた方が自然ではないだろうか。更に船舶事故、捕鯨、海洋汚染等も死亡原因に上げられるが、本来のクジラやイルカの生態や、水族館での生活からはかけ離れており、死亡原因からは省きました。
 水族館での出生時(イルカやクジラ)の死亡率が高いと言われる方がおられるが、私はそうは思わない。何故なら野生状態で生まれたイルカが2頭以上生涯を全うするまで生き残る確立なら、世界の海はとっくにイルカやクジラだらけだからだ。(生涯をまっとうし、且つ全体平均で1頭当り1頭の生産なら自然界で種を保存出来る。再生産が1頭以下ならその種は絶滅する。1頭以上だと別の種族を絶滅させる。)
ストランディング
 生きている状態での座礁をストランデングと呼びます。ヒゲクジラに関しては99%死んでからの漂着となり、デッドストランディングと呼んでいます。また、沿岸に住むイルカやシャチなどは「浅瀬」に対して慣れているせいも有り座礁例は殆ど無いと言って良いでしょう。座礁するのは遠洋に住む歯クジラが殆どですが、原因の幾つかに「地磁気の誤認」「嵐や台風」「その他外的要因によるパニック」「脳に住む寄生虫」などがあげられます。一部の研究で歯クジラの脳から「磁性体」が検出され、「地磁気」と「海岸線」との関係が座礁を起こさせるというのが有力説。恐らくストランディングはこの地磁気説と他の要因が絡んで起きているのではないかと推測します。この場合リーダー格の個体がストランディングすると連られて仲間が次々と座礁、又は仲間を慕う為側を離れずにやはりこれらも次々と座礁してしまう様です。もう一つの特殊な理由の一つに「波打ち際ではエコロケーション(音響測位)が撹乱してしまう」事が考えられます。これは波打ち際の泡が歯クジラの音波を撹乱/相殺してしまい、陸地を識別出来なくなるのではないかと考えています。
 ※一部の学者さんは「自殺」という説を発表しています。これはウイルスなどの感染症の拡大を防ぐ等、外的もしくは内的な絶望感からくる集団自殺ということです。確かに高等な生物かも知れませんが、個人的には納得していません。何故なら彼らは自分以外の命をも守ろうとさえします。それに自然の生き物が途中で諦めるとは到底思えないからです。

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