手力火祭り 祭り当日



手力火祭り

 手力火祭りは、毎年、4月の第2土曜日の夕刻から9時頃まで、岐阜市蔵前の手力雄神社の境内で開催されます。「火の祭典」として岐阜県の重要無形文化財にも指定されています。この火祭りは、たくさんの火薬を使用した勇壮な男達の祭りで300年の歴史があると言われています。

 氏子である近隣の13町が建てた約20mほどの長い竿の先の10個の行燈、いわゆる「御神燈」と、更に神輿をつる町が立てた火の粉を吹き出す滝花火の竿が境内を埋め尽くし、美しい時代絵巻の「山」が立火棚に並ぶ様は、祭りの大迫力を感じさせる光景です。

 私の集落は御神燈のみの参加ですが、これだけでも町内の数名の花火師が早い時期から打合せを行い、祭り直前に仕掛けの作成を行うなど御神燈点火に全力を尽くします。また、町内の自治会の役員の皆さんの協力を得て、行燈の紙貼り、1週間前の竿立て、当日午前中の行燈上げ、更に祭り翌日の竿倒しと、たいへんな時間と労働力を費やして祭りが行われます。10個の全ての行燈のロウソクに火を入れることは簡単に思われますが、我が町内ではこの技を習得するのに10年かかりました。一瞬の御神燈点火にかける花火師の熱意が観る人に少しでも伝わることを願って、火の祭典が開催されます。

さて、手力火祭りの楽しみ方をご紹介しましょう。

 この祭りは夜、狭い境内の大勢の人混みの中で、大量の火薬を使う祭りです。見物の留意点として、火の粉を除ける帽子や火の粉を浴びてもよい上着、足場の悪いところでも大丈夫な靴の着用、懐中電灯、耳栓(綿など)、防寒着(寒いときがあります)などを持参。貴重品は少な目に。

 神社までは名鉄各務原線手力駅から徒歩5分又はJR高山本線長森駅から徒歩15分が最も便利です。自家用車の場合、駐車場はありませんので、名鉄やJR利用をお勧めします。神社へは早めに来て、各町内の神輿が練り歩く様子やたくさんの屋台を見て食べ歩き、また明るいうちに「山」をじっくりと見ておくなどして夕刻を待ちましょう。

 17時半頃から御輿の宮入が始まります。各町内の花火神輿が1つづつ参道に入ってきます。参道両脇に爆竹が敷き詰められ、轟音と煙硝の中、神輿が入場。御輿は本御輿からイルミネーションで飾った話題性のあるキャラクターまで様々。参道に入ると神輿に設置された花火が見物客の目の前で火を吹き上げ、度肝を抜くプロローグ。花火神輿を目の前で見ることのできる宮入です。この時、すでに境内には進入禁止のロープが張られています。早めにロープの前で御神燈点火を待ちます。境内は大勢の見物客で埋まり、後方からはよく見えませんが、灯篭には決して登らないように。

 18時45分ころに宮入が完了すると、東列の一番北の御神燈から点火が始まります。全部の行燈にうまく点灯すると、その年は豊作だと言われます。点火は「押し火」と呼ばれるロケット花火を飛ばし、その火が速火線に引火しロウソクの芯に火をつけます。押し火はワイヤーを伝って一直線に飛びますが、ワイヤーの張り具合や押し火の火薬の量によっては、途中で止まってしまうこともあり、観客から大きなため息が・・・。1町で使える押し火は2つ。花火師が最も緊張する瞬間です。13町の御神燈点火は長く感じますが、各御神燈は町ごとに様々な工夫や仕掛けがしてあり、退屈しません。

 御神燈点火が終了する頃にはすっかり暗くなり、オレンジ色の行燈が境内の空間を埋め尽くし、祭りの雰囲気は最高潮に。いよいよ滝花火と花火御輿が始まります。9町が御輿参加。立火棚に近い場所に並んだ竿の先の滝花火に北側の町から点火していきます。滝竿に仕掛けられた「ドン」と呼ばれる5発の地雷を合図に、押し火が滝花火に飛んで点火。爆竹とともに火の粉が吹き出し、まさに火の滝。この下を、鐘をうち鳴らす男たちが飛び込み、そして花火御輿が突入。御輿に仕掛けられた花火が火を吹き上げ、爆竹と鐘の音と火の粉と硝煙の境内を、御輿が練り歩きます。火の粉を浴びた男たちは、1年間無病息災になると言われています。時折、滝花火の火の粉が風で見物人のエリアまで降り注ぐことも。帽子と綿の上着は見物の必需品。

 花火御輿が終了すると、協賛企業の仕掛け花火の後、奉賛会員が立火棚に上がり、クライマックスの手筒花火が行われます。回転式の手花火から始まり、手筒へ。立火棚が火の壁になり、その下で若者達が鐘をうち鳴らす光景は圧巻です。なお、風が無いときにはステージごとに立ち入り禁止ロープが西へ移動します。警備員の指示に従って、足下や頭上の御神燈に注意してゆっくり移動してください。御神燈からロウや火の粉が落ちてくることもありますので注意。

 手筒が終わると、山焼きに移ります。立火棚の後ろの山に仕掛けられた花火が一斉に打ち上げられます。勢い余って山に火がつき、ほんとうの山焼きになってしまう年もあります。こうして、21時頃に、花火の奉納が終わり、火祭り行事が終了します。

狭い境内で火薬を大量に使うことから、たいへん危険を伴う祭りです。警備員や本部の指示にしたがって行動してください。もちろん、貴重品はしっかり管理してください。年によっては、満開の桜の境内で祭りが行われます。何度見ても感動します。血が熱くなる伝統の祭りをお楽しみください。祭りが終わると、この地方に農作業の季節がやってきます。
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