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堀部安兵衛 (上・下)
池波 正太郎
新潮文庫

『堀部安兵衛』下巻表紙


堀部安兵衛』・・・むちゃくちゃはまってます。やすべえったらかっこいいんだからもう。。。  
           
  私の不確かな記憶によれば、その昔『パタリロ』の番外編に忠臣蔵のパロディがありました。そしてそこに登場した堀部安兵衛の役には、私の大好きな「ラシャーヌのおじ様」が割り当てられていたのです。(ちなみにパタリロは大石主税、なぜかバンコランが内蔵助でした。変な親子。ところでおじ様の名前、なんだっけ・・・いつも「おじ様」としてしか登場してなかったような???)以来、私の頭ん中にはしっかり、堀部安兵衛像が「おじ様」の顔で刷り込まれています。ああ、思い出してもうっとりです、かっこいー……。
読んだことない人にはまったく訳のわからない話ですね。すみません。
           
実は私、堀部安兵衛についてはほとんど知りませんでした。四十七士のうちのひとり、めちゃめちゃ強い剣豪、ってぐらい。高田馬場の決闘すら知らなかった。なんて貧困な知識でしょう。
読みたいなーとはずっと思ってたんですが、なんとなく機会を逸していました。“年末年始に読む本”というオビがついて平台に並びだした時も、気になりつつもなぜか手がのびないままで。しかしあるとき、どーーうしても読む本がなく、本屋へ行っても呼んでる本がサッパリなくて困り果て、、、「そうだ、こうなったらハズレなしの
池波正太郎にしよう」と、とうとう手に入れたというわけです。
 
           
  読み出したらとまらないんだこれが。通勤中に読んでいたのですが、電車の中で涙してしまったのは久々です。乗り過ごしそうになったのも。
           
なんていうんでしょう、安兵衛っていつまでも朴訥で純情な部分をもっているのです。父親が無実の罪を着せられ「言い訳無用」と潔く切腹してしてしまい、14歳でたったひとり、故郷の新発田を出奔することに。いろんな人に騙されたり踏みつけにされたり、まあ救われたりもしているのですがとにかく、人生の辛酸をなめながらもちゃんと純粋なところをなくしていない。最後まで「安兵衛ってばもういい奴、がんばれー」と思いながら読めてしまいました。  
           
  自分で自分の強さをあまり自覚してないようなところがまた魅力だったりして。。雪の日も雨の朝もかまわず父親に庭へ引き出されしごかれる、それがイヤでイヤでしかたなかったのに、いざその父が亡くなってみるとなぜか、気づけば毎朝稽古に励んでいる。そして出奔途中、父を切腹においやった敵(かたき)に出会った時、そいつを呆気なくやっつけてしまえるぐらい、気がついたら強くなっていた、という感じ。その後も「これは太刀打ちできない…」という強い相手に出会うのですが、よい師匠にも恵まれて鍛錬をかさね、結局そいつらを悉く倒してしまうのです。安兵衛、やっぱりかっこいい。。。
           
上下巻2冊あるにもかかわらず、一気に最後までつっぱしってしまいました。よっぽど歩きながら読んじゃおうかと思ったくらい。敬愛する義理の叔父さんの決闘を助太刀するあたりなど、車に轢かれてもわからなかったかも(オイオイちょっと言い過ぎか)。そして最後はもちろん、吉良邸討入りに続いて切腹のシーンでしめくくられる、と。うう、感動だ……。  
           
  ところで、安兵衛の恋人になる伊佐子という女武芸者が登場します。でもこれはやっぱり、のちの『剣客商売』佐々木三冬のための小手調べ、というかんじがするんですが。。男装の女武芸者といえばやっぱり三冬さんでしょう。あの凛々しさ、美しさ、そして強さは三冬さんならではのもの。それに、安兵衛と仲良くなってからの伊佐子といったら、それまでのつっぱらかった態度はどこへやら、急になよなよと豹変しすぎてキモチワルイんだ。今までの男らしさはどこへいった!…うーむ、嫉妬でしょうかこれは。
           
お秀っちゅー女も許せんな。安兵衛を手玉にとりやがって。自分から手を出したくせに、違う奴に気が移ったら平気で乗り換えちゃってヒドイ仕打ちをする。安兵衛の純情はどうなるんだー!でもすっかりおばちゃんになった最後には改心するので、まあよしとしましょう。  
           
  池波正太郎は実は大好きで、鬼平剣客梅安と三大シリーズはもちろん、闇の狩人・雲霧仁左衛門など盗賊ものや真田太平記、忍びの風・忍びの女・蝶の戦記・忍者丹波大介など忍者ものどっかからツッコミが入りそうであんまし言いたくなかったんですが…(-_-;)他、現在もどんどん増殖中です。それにしても、途中で亡くなられてしまったために未完の鬼平、つづきが読みたい……。いつか天国で池波さんとお会いできたら「浪人・神谷勝平」の続きを書いてください、とお願いしてみようっと。
           
以上、『堀部安兵衛』のごしょうかいでした。というか自分の書きたいように感想を書きなぐった、という方が正しいかも。こんな拙文ではありますが、これを見て「読んでみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです。
では次回にまたお会いしませう。
 
           
( 2000/6/25 )
 

………嗚呼、 『堀部安兵衛』上巻表紙 惚れ惚れ…。

 

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