計測器

 電子回路作っていると思った通り動かないことが良くあります。(いつも?) 子供の頃、始めてテスターを購入して電圧、電流を測っただけで、すごく技量が上がったような気がしたものです。次には信号波形の見れるオシロスコープ、周波数特性が見れるスペクトロアナライザなど色々欲しくなります。次第にこの世界に嵌って計測器の収集が趣味になっている方もいるようですし、ジャンクの計測器(がらくた?)も結構高価で取引されていたりします。
 私も使いもしない物から、ゴミに近いものまで多くの計測器を所有しています。その中から、メーカー製ながら改良して大幅に性能向上させた物や、旧式ながらお気に入りなものなど、いくつかを掲載してみることにしました。



1.周波数カウンタ(菊水電子FCO1130)



 15年ぐらい前の製品です。入力端子は2系統あって、INPUT Aは10Hzから100MHz、INPUT Bは80MHzから1GHzまで計測できます。ゲートタイムは連続的に変えられます。この辺が自作や安物と少し違います。パルスの周期を測るモードもあり、低い周波数では有効です。入力の切り換えは信号が入ると自動的に切り換わります。


 その後NECのμPG503Bを用いたプリスケーラをマキ電機より購入しました、YIGの発振周波数を測定するためです。このプリスケーラは3.5〜9GHzを1/4分周するので、FCO1130につないでも4GHzまでしか測定できません、プリスケーラ性能をフルに発揮するには、2.3GHzまでカウント出来る必要があります。仕方ないので他のプリスケーラを間に入れて使っていました。
 また、当たり前ですがプリスケーラですから、本体の表示は分周した後の周波数を表示しており、実際の周波数は電卓片手に計算しなくてはなりません。暗算が得意な方はそうでも無いかもしれませんがとてもうっとしい作業です。


 そこでINPUT Bを改造することにしました。分解すると、プリスケーラとしてSP4751(プレッシー社製?)が使われており、単純に入力信号を1/256に分周しているようです。プリスケーラキットとして秋月電子よりμPB1505が市販されており、3GHzまで動作するようですからこれに交換することにします。μPB1505は1/64分周に設定できますので、μPG503Bの1/4と組み合わせると1/256になり、入力した周波数を直接表示できます。
 しかしここで問題が発生しました。FCO1130は入力信号の有無でINPUT A,Bを切り換えています。μPB1505は感度は高いのですが、入力に何も繋がっていなくても自己発振しており、入力はINPUT Bに固定されます。このままではINPUT Aが使えません。何とかμPB1505の発振を止めなくてはなりません。プリスケーラの入力部分は差動アンプのような回路になっている筈です。入力は+INと−INがありどちらの端子に信号を入力しても動作します。そこで使わない側の入力に抵抗を接続し、初段回路のバランスを崩し発振を止められないかテストしました。予想通り発振は停止しますが、感度は大幅に低下します。82kΩでGNDに接続すると発振せず最大の感度が得られました。入力0dBmで95MHz〜2.2GHz、+8dBmで80MHz〜2.5GHzの分周範囲が得られました。これならば、μPG503Bの性能をフルに発揮させることが出来ます。

 ついでにμPG503Bの外付けプリスケーラが無い場合もINPUT Bが正常な周波数表示が出来るようにμPB1505の分周比を1/64と1/256に切りかえられるように改造しました。INPUT A用の入力フィルターSWで外部プリスケーラ無し(μPB1505分周比1/256)、外部プリスケーラ有り(μPB1505分周比1/64)に切りかえられます。
 この改造でFCO1130は大幅に性能向上しました。

 
INPUT A 10Hz〜100MHz
 INPUT B 95MHz〜2.2GHz(0dBm):外部プリスケーラ無し
          3.5GHz〜9GHz (0dBm):外部プリスケーラ有り


 +10dBmの入力があればもっと入力周波数範囲は広がりますので、10Hz〜9GHzまで直接周波数が読めます。手持ちのYIGの発振周波数はすべて直接測れるようになりました。とっても快適です。本体の表示は9.999999GHzが最大ですので改造もこれが限界でしょう。14GHzまで分周可能なμPG508Bも一応手持ちにはあるのですが!


2.Signal Monutor(WATKINS−JOHNSON SM−9404)


 WATKINS−JOHNSONのVHFレシーバのバンドスコープ部分です。中心周波数21.4MHz SWEEP WIDTH 0〜4MHz SWEEP TIMEは連続可変出来ます。垂直軸の対数特性はありません。元々信号の有無を確認するのが目的ですから十分でしょう。その代わり、ゲイン調整はすばらしく70dBぐらい可変出来ます。しかし、これだけの回路をこんな小さなシャーシに納めてあるのに驚かされます。それも部品が積めこまれている感じはなくて、いかに簡素な回路でこの性能を達成しているということです。さすがはWATKINZ−JOHNSONといったところでしょうか。SWEEP発振器はバリキャップを用いたVCOですが、ダイオードと抵抗を巧妙に組み合わせた非線型補正回路が付いていて、SWEEP電圧に対してリニアに周波数が変化するようになっています。
 入手したときはSWEEP用の鋸波を作っている回路のカップリングコンデンサがリークしていて、動作がおかしかったのですが交換したら直りました。SPRAGUEの電解コンデンサが使われていてとても美しかったので、非常に残念でした。(最近チューブラ型の電解コンデンサは殆ど見かけません。仕方ないので縦型の物で置き換えています。)
 ちなみに左の写真に写っているのは、ミズホ通信のクリスタルマーカーMX−1Dで、この信号を表示しています。そのうちにコンバータでも作って、どこかの周波数バンドの専用モニターに使おうかと考えています。