SRPP回路

SRPPは、非常にしばしば使われる割には、ちゃんとした設計が為されていないことが多いようなので、ここで取り上げてみたいと思います。

最初に、SRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル) とは何なのかを定義します。

SRPP回路のカタチ

SRPPのPPは、ご存じのように Push-Pull です。
言い替えると電流をプッシュプル合成していない回路は、図に示すSRPP回路の格好をしていてもSRPPではないって事です。

例えば、下の球で電圧増幅して上の球でインピーダンスを下げる回路があります。そういう回路をμフォロアと言います。
間違えないで下さい、形だけ真似してもだめです。
この形の回路そのものは三極管でも五極管でも、真空管でなくても(J-FET等)動作します。

私が大学時代に先輩からもらった大昔の本(私が生まれた頃に書かれている^^;)には、「直列増幅回路は五極管の方が有利である」、「直流増幅回路に用いられ、ドリフトが小さい」 と書かれていました。SRPPは何故か載ってませんでした。
 
さて、それはともかく、この回路がP-P動作をするための条件を考えてみましょう。

上の回路図における r の値をどう決定するか、で決まります。

T1とT2に、絶対値が等しくて、互いに逆方向の信号電流が流れる条件を与えれば良いわけです。

T1に流れる電流をipとするとき、r にかかる電圧 Vg は

    Vg = ip・r

条件から、この時、T2 に -ip が流れるので
    -ip = -gm・vg + vp/rp

その時、負荷に流れる電流は、2・ipであり、その電圧は vp に等しいから、

    -ip = -gm・r・ip + RL・2ip/rp

     ∴ r = 1/gm + 2RL

が導かれます。この条件を満たしていなければSRPP動作はしません。

上下の球は特性が良く揃っている必要があり、且つ負荷抵抗 RL により r の値を変えなければなりません
負荷が抵抗では無くリアクタンス性のインピーダンスなら r もそうする必要がある事になります。

この式の条件における等価回路を電圧モデルで示します。
PP条件を満たしたときの等価回路
 

最近は意味を理解せずに回路シミュレータに頼る人が増えてきて、解析能力を失ってきているようなので、特にこの問題を取り上げてみました。

実験機材の揃っている人ならまだしも、そうでない人は特にこうした考え方に慣れる必要があります。
 

では、SRPP回路がμフォロアに対して勝っていると言えるのか?

これは、私は比較実験をしていないので、何とも言えません(^^;;)。

実際には、ちゃんとしたSRPP動作でも、相当に線形性の高い球でないと、簡単にバランスが崩れると思います。
また、PPによる偶数次調波の打ち消しは期待できないと思います。
さらに、電源電圧とかバイアスとかの関係で、実際の動作点で測定してからでないと難しいと思います。

というわけで、私の理論的考察としては、「PP動作をしている」という気分の問題であり、実は大差なし(爆笑)。
この条件だと、ちゃんと・レギュレーテッド・プッシュプル?

御精読を感謝します。

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2002/5/19 Last update
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