速度の相対論的加法定理

 

特殊相対論に於いて、速度を加算するにはどうするのか?
先ず、普通に速度を加算すると、とっても都合が悪いってことを示しましょう。

今、ロケットが光速度に近い速度0.99cで飛んでいるときに、ロケットから飛び出した光があったとしたら、その光の速度はどうなるでしょう?

c + 0.99c = 1.99c と答えた方は、相対論の最初の仮定を読み返してみて下さい。

「真空中において、光の速度は光源の速度に依らず一定である。」
これが特殊相対論の仮定ですから、答えは c です。いつも c で一定である、というのが特殊相対論の仮定であり、実験で確認・証明された事実です。
湾岸戦争で米軍のミサイルが的中したのは、その証明です。もしミサイルの速度で誘導電波の速度が変われば、ミサイルは当たりません。

だから、古典力学の速度の加算定理は使えないのです。

そこで、相対論の速度加算を求めるための思考実験を考えてみましょう。

今、図のように基準系に対して平行に移動するロケットがあるものとします。(ばかデカイ基準系^^; つまり地面です。)
ロケットの中を速度 u で歩く人を考えれば、当然ながら歩く人の ロケットに対する 相対速度は u です。

下の図を、先ず良く見て下さい。良いですか?

ロケット内部の、点 A 及び B には時計が置いてあります。

点 A の時計で測ったスタート時刻を tA、点 B で測った到着時刻を tB とします。
Δt0 = tA - tB と置くとロケットに対する歩いている人の速度は、A〜B間の距離を L0 として

  u = L0/Δt0     ・・・(1)

図に示す基準系の点 A',B' をロケットの点 A ,B が通り過ぎる瞬間の時刻 t'A ,t'B を点 A',B' の時計で測ります。

tA' - tB' =Δt と置けば、基準系(地面)に対する 歩く人の相対速度wは

  w = s/Δt

ここにsは点 A'、B' 間の距離とします。
一方、基準系でみたロケットの飛行距離sは

  s = vΔt + L

但し、ここに L は基準系からみた(ローレンツ短縮した)ロケットのAB間の長さです。

基準系からみた歩く人の速さは

    w = s/Δt=(vΔt+L)/Δt

      = v + L/Δt           ・・・(2)

です。ここで、 基準系での測定時間Δtをロケット(慣性系)での時間Δt0で書き直すと

Δtを、(2)式に代入します。
L0はロケットからみた長さですから、基準系(地面)から見れば短くなります。
そこで、ローレンツ短縮の式も (2)式に用います。

となります。

(3)式が相対論的な速度の加算方程式です。v、u が光速度 c に対して十分に小さければ、明らかに

 w = u + v

で近似できますね。つまり、誰でも知っている、単純な速度の加算になるわけです。
言い替えると、古典力学に於ける速度の加算定理は、光速度に対して十分に小さい速度に於ける、近似式だったのです。

(3)式には重要な意味を秘めています。u=c と置けば、(3)式から w=c です。つまり光速度は一定不変です。

もう一つ、このHPをお読みの方に、簡単な算数のお願いです。
(3)式に、光速度cよりも小さな速度u、vをいろいろ代入して計算してみて欲しいのです。

加算速度wは、決してcよりも大きくなりません。つまり、光速度を越えることが出来ないのです。

こういう計算は、自分でやってみないと納得できないものです。そして計算してみることで、「感じ」が解ったりします。騙されたと思って、是非。
「騙された、かつは嘘つきだ」って思った方はメールを下さい。^^;/
 

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