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1. 二項定理
2. 超幾何分布
3. 二項分布
4. ポアソン分布
5. 確率関数の収束
6. その他の離散分布
$n$は正整数とする。$n$の階乗$n!$とは \[ n! = n(n-1)(n-2) \cdots 2 \cdot 1 \] のことである。 $n \ge 1$のとき次の法則が成り立つが, \[ (n+1)! = (n+1) \times n! \] $n=0$のときもこれと同じ法則が成り立つなら \[ 0! = 1 \] でなければならない。よって$0$の階乗を$0!=1$によって定義する。 階乗$n!$はすべての非負整数$n$について定義できる。
$x$は実数,$n$は正整数とする。階乗冪$x^{(n)}$とは \[ x^{(n)} = x(x-1) \cdots (x-n+1) \] のことである。 $n \ge 1$のとき次の法則が成り立つが, \begin{align} x^{(n+1)} &= x^{(n)} \times (x-n) & (x+1)^{(n+1)} &= (x+1) \times x^{(n)} \end{align} $n=0$のときもこれと同じ法則が成り立つなら \[ x^{(0)} = 1 \] でなければならない。 よって$n=0$の場合は$x^{(0)}=1$によって定義する。 階乗冪$x^{(n)}$はすべての実数$x$とすべての非負整数$n$について定義できる。 たとえば,$x=2$の場合の階乗冪の値は以下のとおりである。 $2^{(3)}$以降はすべて$0$となる。 \begin{align} 2^{(0)} &= 1 & 2^{(1)} &= 2 \\ 2^{(2)} &= 2 \cdot 1 = 2 & 2^{(3)} &= 2 \cdot 1 \cdot 0 = 0 \end{align} 特に$x$も非負整数なら,次のことが成り立つ。 \begin{align} x^{(x)} &= x! & x^{(n)} &= \frac{x!}{(x-n)!} \end{align} $x$個のものから異なる$n$個を取る順列${}_x\mathrm{P}_n$は,階乗冪$x^{(n)}$に等しい。 \[ {}_x\mathrm{P}_n = x^{(n)} = \frac{x!}{(x-n)!} \]
$x$は実数,$n$は非負整数とする。二項係数$\binom{x}{n}$とは \[ \binom{x}{n} = \frac{x^{(n)}}{n!} = \frac{x(x-1) \cdots (x-n+1)}{n!} \] のことである。 たとえば,$x=2$の場合の二項係数の値は以下のとおりである。 $\binom{2}{3}$以降はすべて$0$となる。 \begin{align} \binom{2}{0} &= \frac{2^{(0)}}{0!} = 1 & \binom{2}{1} &= \frac{2^{(1)}}{1!} = 2 \\ \binom{2}{2} &= \frac{2^{(2)}}{2!} = 1 & \binom{2}{3} &= \frac{2^{(3)}}{3!} = 0 \end{align} 特に$x$も非負整数なら,次のことが成り立つ。 \[ \binom{x}{n} = \frac{x!}{n!(x-n)!} \] $x$個のものから異なる$n$個を取る組合せ${}_x\mathrm{C}_n$は, 二項係数$\binom{x}{n}$に等しい。 \[ {}_x\mathrm{C}_n = \binom{x}{n} = \frac{x!}{n!(x-n)!} \]
階乗冪の性質から,二項係数は, \begin{align} \binom{x}{n} &= \frac{x^{(n)}}{n!} = \frac{x-n+1}{n} \cdot \frac{x^{(n-1)}}{(n-1)!} = \frac{x-n+1}{n} \binom{x}{n-1} \\ \binom{x}{n} &= \frac{x^{(n)}}{n!} = \frac{x}{n} \cdot \frac{(x-1)^{(n-1)}}{(n-1)!} = \frac{x}{n} \binom{x-1}{n-1} \end{align} と変形でき,次の法則が成り立つ。 \begin{align} \binom{x}{n} &= \frac{x-n+1}{n} \binom{x}{n-1} & \binom{x}{n} &= \frac{x}{n} \binom{x-1}{n-1} \end{align}
二項係数の和について, \begin{align} \binom{x-1}{n} + \binom{x-1}{n-1} &= \frac{(x-1)^{(n)}}{n!} + \frac{(x-1)^{(n-1)}}{(n-1)!} \\ &= \frac{(x-1)^{(n-1)}}{n!}((x-n)+n) \\ &= \frac{x^{(n)}}{n!} = \binom{x}{n} \end{align} と変形できることから,次の法則が成り立つ。 \[ \binom{x}{n} = \binom{x-1}{n} + \binom{x-1}{n-1} \]
また,$x$が非負整数で,$0 \le n \le x$のとき, \[ \binom{x}{n} = \frac{x!}{n!(x-n)!} = \frac{x!}{(x-n)!(x-(x-n))!} = \binom{x}{x-n} \] と変形できることから,次の法則が成り立つ。 \[ \binom{x}{n} = \binom{x}{x-n} \]
$p$,$q$は実数,$n$は非負整数とするとき,次の二項定理が成り立つ。 \[ (p+q)^n = \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^i q^{n-i} \] $n$に関する数学的帰納法を用いて証明できる。 \begin{align} (p+q)^{n+1} &= (p+q)^n \times (p+q) \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^i q^{n-i} \times (p+q) \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^i q^{n-i+1} + \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{i+1} q^{n-i} \\ &= \binom{n}{0} p^0 q^{n+1} + \sum_{i=1}^n \binom{n}{i} p^i q^{n-i+1} + \sum_{i=0}^{n-1} \binom{n}{i} p^{i+1} q^{n-i} + \binom{n}{n} p^{n+1} q^0 \\ &= \binom{n}{0} p^0 q^{n+1} + \sum_{i=1}^n \left\{\binom{n}{i} + \binom{n}{i-1}\right\} p^i q^{n-i+1} + \binom{n}{n} p^{n+1} q^0 \\ &= \binom{n+1}{0} p^0 q^{n+1} + \sum_{i=1}^n \binom{n+1}{i} p^i q^{n+1-i} + \binom{n+1}{n+1} p^{n+1} q^0 \\ &= \sum_{i=0}^{n+1} \binom{n+1}{i} p^i q^{n+1-i} \end{align}
二項定理の冪の部分を階乗冪に置き換えることもできる。 すなわち,次の定理が成り立つ。 \[ (p+q)^{(n)} = \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i)} \] これも$n$に関する数学的帰納法を用いて証明できる。 \begin{align} (p+q)^{(n+1)} &= (p+q)^{(n)} \times (p+q-n) \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i)} \times (p+q-n) \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i)} \{(p-i)+(q-n+i)\} \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i)} (q-n+i) + \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i)} (p-i) \\ &= \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i+1)} + \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} p^{(i+1)} q^{(n-i)} \\ &= \binom{n}{0} p^{(0)} q^{(n+1)} + \sum_{i=1}^n \binom{n}{i} p^{(i)} q^{(n-i+1)} \\ &\qquad + \sum_{i=0}^{n-1} \binom{n}{i} p^{(i+1)} q^{(n-i)} + \binom{n}{n} p^{(n+1)} q^{(0)} \\ &= \binom{n}{0} p^{(0)} q^{(n+1)} + \sum_{i=1}^n \left\{\binom{n}{i} + \binom{n}{i-1}\right\} p^{(i)} q^{(n-i+1)} + \binom{n}{n} p^{(n+1)} q^{(0)} \\ &= \binom{n+1}{0} p^{(0)} q^{(n+1)} + \sum_{i=1}^n \binom{n+1}{i} p^{(i)} q^{(n-i+1)} + \binom{n+1}{n+1} p^{(n+1)} q^{(0)} \\ &= \sum_{i=0}^{n+1} \binom{n+1}{i} p^{(i)} q^{(n-i+1)} \end{align} 二項定理や,階乗冪の二項定理を各々$n!$で割ると,以下の形式の定理が得られる。 \begin{gather} \frac{(p+q)^n}{n!} = \sum_{i=0}^n \frac{p^i}{i!} \frac{q^{n-i}}{(n-i)!} \\ \binom{p+q}{n} = \sum_{i=0}^n \binom{p}{i} \binom{q}{n-i} \end{gather} これらの定理はとりあえず「畳み込み公式」とよぶことにする。
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5. 確率関数の収束
6. その他の離散分布
$r$と$w$は非負整数,$n$は$n \le r+w$を満たす非負整数とする。 $r$個の赤玉と$w$個の白玉が入った壺の中から$n$個の玉を取り出すとき, 取り出される赤玉の個数$X$の確率分布は超幾何分布になる。 \[ \mathrm{Pr}\{X=x\} = \frac{\displaystyle\binom{r}{x}\binom{w}{n-x}} {\displaystyle\binom{r+w}{n}} \qquad (x=0,1,2,\dots,n) \] 二項係数の畳み込み公式より \[ \sum_{x=0}^n \binom{r}{x}\binom{w}{n-x} = \binom{r+w}{n} \] であるから,超幾何分布の全確率はたしかに$1$となる。 \[ \sum_{x=0}^n \mathrm{Pr}\{X=x\} = 1 \]
$r$,$w$,$n$で定められる超幾何分布に従う$X$の期待値は, $r \ge 1$,$n \ge 1$のとき次のようになる。 \begin{align} \mathrm{E}[X] &= \sum_{x=0}^n x \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} = \sum_{x=0}^n x \cdot \binom{r}{x}\binom{w}{n-x}\binom{r+w}{n}^{-1} \\ &= \sum_{x=1}^n x \cdot \frac{r}{x} \binom{r-1}{x-1}\binom{w}{n-x} \left\{\frac{r+w}{n} \binom{r+w-1}{n-1}\right\}^{-1} \\ &= \frac{nr}{r+w} \sum_{x=0}^{n-1} \binom{r-1}{x}\binom{w}{n-x-1} \binom{r+w-1}{n-1}^{-1} \end{align} 和の部分は$r-1$,$w$,$n-1$で定まる超幾何分布の全確率で$1$となる。 よって$r \ge 1$,$n \ge 1$の場合の期待値が得られる。 \[ E[X] = \frac{nr}{r+w} \] 残りの場合についても,$r=0$のとき \[ \mathrm{E}[X] = 0 \cdot \binom{0}{0}\binom{w}{0}\binom{w}{0}^{-1} = 0 \] $n=0$のとき \[ \mathrm{E}[X] = 0 \cdot \binom{r}{0}\binom{w}{0}\binom{r+w}{0}^{-1} = 0 \] であるから,すべての$r$,$w$,$n$について \[ \mathrm{E}[X] = n\frac{r}{r+w} \] となる。
$r$,$w$,$n$で定められる超幾何分布に従う$X$について, $X^{(2)}=X(X-1)$の期待値(階乗積率)は,$r \ge 1$,$n \ge 1$のとき次のようになる。 \begin{align} \mathrm{E}[X^{(2)}] &= \sum_{x=0}^n x(x-1) \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} \\ &= \sum_{x=0}^n x(x-1) \cdot \binom{r}{x}\binom{w}{n-x} \binom{r+w}{n}^{-1} \\ &= \sum_{x=1}^n x(x-1) \cdot \frac{r}{x} \binom{r-1}{x-1}\binom{w}{n-x} \left\{\frac{r+w}{n} \binom{r+w-1}{n-1}\right\}^{-1} \\ &= \frac{nr}{r+w} \sum_{x=0}^{n-1} x \cdot \binom{r-1}{x}\binom{w}{n-x-1} \binom{r+w-1}{n-1}^{-1} \end{align} 和の部分は$r-1$,$w$,$n-1$で定まる超幾何分布の期待値で$\dfrac{(n-1)(r-1)}{(r-1)+w}$であるから, 階乗積率$\mathrm{E}[X^{(2)}]$が求められる。 \[ \mathrm{E}[X^{(2)}] = n\frac{r}{r+w} \times (n-1)\frac{r-1}{r+w-1} \] よって$r \ge 1$,$n \ge 1$の場合の分散が得られる。 \begin{align} \mathrm{V}[X] &= \mathrm{E}[X^2] - \{\mathrm{E}[X]\}^2 = \mathrm{E}[X^{(2)}] + \mathrm{E}[X] - \{\mathrm{E}[X]\}^2 \\ &= n\frac{r}{r+w}(n-1)\frac{r-1}{r+w-1} + n\frac{r}{r+w} - \left(n\frac{r}{r+w}\right)^2 \\ &= n\frac{r}{r+w} \left\{(n-1)\frac{r-1}{r+w-1} + 1 - n\frac{r}{r+w}\right\} \\ &= n\frac{r}{r+w}\left(1-\frac{r}{r+w}\right) \left(1-\frac{n-1}{r+w-1}\right) \end{align} 残りの場合についても,$r=0$または$n=0$のとき,$\mathrm{V}[X]=0$であるから, すべての$r$,$w$,$n$について \[ \mathrm{V}[X] = n\frac{r}{r+w}\left(1-\frac{r}{r+w}\right) \left(1-\frac{n-1}{r+w-1}\right) \] となる。
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5. 確率関数の収束
6. その他の離散分布
$n$は非負整数,$p$は$0 < p < 1$をみたす実数とする。 互いに独立で成功率が$p$である試行を$n$回繰り返すとき, 成功事象の起こる回数$X$の確率分布は二項分布になる。 \[ \mathrm{Pr}\{X=x\} = \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} \qquad (x=0,1,2,\dots,n) \] 二項定理より \[ \sum_{x=0}^n \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} = \{p+(1-p)\}^n = 1 \] であるから,二項分布の全確率はたしかに$1$となる。 \[ \sum_{x=0}^n \mathrm{Pr}\{X=x\} = 1 \]
$n$,$p$で定められる二項分布に従う$X$の期待値は, $n \ge 1$のとき次のようになる。 \begin{align} \mathrm{E}[X] &= \sum_{x=0}^n x \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} = \sum_{x=0}^n x \cdot \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} \\ &= \sum_{x=1}^n x \cdot \frac{n}{x} \binom{n-1}{x-1} p^x (1-p)^{n-x} \\ &= np \sum_{x=0}^{n-1} \binom{n-1}{x} p^x (1-p)^{n-x-1} \end{align} 和の部分は$n-1$,$p$で定まる二項分布の全確率で$1$となる。 よって$n \ge 1$の場合の期待値が得られる。 \[ \mathrm{E}[X] = np \] 残りの場合についても,$n=0$のとき \[ \mathrm{E}[X] = 0 \cdot \binom{0}{0}p^0(1-p)^0 = 0 \] であるから,すべての$n$,$p$について \[ \mathrm{E}[X] = np \] となる。
$n$,$p$で定められる二項分布に従う$X$について, $X^{(2)}=X(X-1)$の期待値(階乗積率)は,$n \ge 1$のとき次のようになる。 \begin{align} \mathrm{E}[X^{(2)}] &= \sum_{x=0}^n x(x-1) \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} \\ &= \sum_{x=0}^n x(x-1) \cdot \binom{n}{x} p^x(1-p)^{n-x} \\ &= \sum_{x=1}^n x(x-1) \cdot \frac{n}{x} \binom{n-1}{x-1} p^x(1-p)^{n-x} \\ &= np \sum_{x=0}^{n-1} x \cdot \binom{n-1}{x} p^x(1-p)^{n-x-1} \end{align} 和の部分は$n-1$,$p$で定まる二項分布の期待値$(n-1)p$であるから, 階乗積率$\mathrm{E}[X^{(2)}]$が求められる。 \[ \mathrm{E}[X^{(2)}] = np \times (n-1)p \] よって$n \ge 1$の場合の分散が得られる。 \begin{align} \mathrm{V}[X] &= \mathrm{E}[X^{(2)}] + \mathrm{E}[X] - \{\mathrm{E}[X]\}^2 \\ &= np(n-1)p + np - (np)^2 \\ &= np(1-p) \end{align} 残りの場合についても,$r=0$または$n=0$のとき,$\mathrm{V}[X]=0$であるから, すべての$n$,$p$について \[ \mathrm{V}[X] = np(1-p) \] となる。
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6. その他の離散分布
$\lambda$は正の実数とする。 平均値一定の条件の下で,成功率の小さい成功事象が十分長い期間に起こる回数$X$の確率分布はポアソン分布になる。 \[ \mathrm{Pr}\{X=x\} = \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} \qquad (x=0,1,2,\dots) \] $e^{\lambda}$の無限級数展開が \[ e^{\lambda} = \sum_{x=0}^{\infty} \frac{\lambda^x}{x!} \] であるから,ポアソン分布の全確率はたしかに$1$となる。 \[ \sum_{x=0}^{\infty} \mathrm{Pr}\{X=x\} = 1 \]
$\lambda$で定められるポアソン分布に従う$X$の期待値は, \begin{align} \mathrm{E}[X] &= \sum_{x=0}^{\infty} x \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} = \sum_{x=0}^{\infty} x \cdot \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} \\ &= \sum_{x=1}^{\infty} x \cdot \frac{\lambda}{x} \frac{\lambda^{x-1}}{(x-1)!} e^{-\lambda} \\ &= \lambda \sum_{x=0}^{\infty} \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} \end{align} 和の部分は$\lambda$で定まるポアソン分布の全確率なので \[ \mathrm{E}[X] = \lambda \] となる。
$\lambda$で定められるポアソン分布に従う$X$について, $X^{(2)}=X(X-1)$の期待値(階乗モーメント)は次のようになる。 \begin{align} \mathrm{E}[X^{(2)}] &= \sum_{x=0}^n x(x-1) \cdot \mathrm{Pr}\{X=x\} = \sum_{x=0}^{\infty} x(x-1) \cdot \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} \\ &= \sum_{x=2}^{\infty} x(x-1) \cdot \frac{\lambda^2}{x(x-1)} \frac{\lambda^{x-2}}{(x-2)!} e^{-\lambda} \\ &= \lambda^2 \sum_{x=0}^{\infty} \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} \\ &= \lambda^2 \end{align} よって分散は \begin{align} \mathrm{V}[X] &= \mathrm{E}[X^{(2)}] + \mathrm{E}[X] - \{\mathrm{E}[X]\}^2 \\ &= \lambda^2 + \lambda - \lambda^2 \\ &= \lambda \end{align} となる。
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3. 二項分布
4. ポアソン分布
5. 確率関数の収束
6. その他の離散分布
$X$は$r$,$w$,$n$で定まる超幾何分布に従う確率変数, $Y$は$n$,$p$で定まる二項分布に従う確率変数とする。 超幾何分布において$r/(r+w)$の値を定数$p$に固定し, $r \to \infty$($w \to \infty$)のときの$\mathrm{Pr}\{X=x\}$の極限値を調べる。 \begin{align} \mathrm{Pr}\{X=x\} &= \binom{r}{x} \binom{w}{n-x} \binom{r+w}{n}^{-1} = \frac{r^{(x)}}{x!} \frac{w^{(n-x)}}{(n-x)!} \left\{\frac{(r+w)^{(n)}}{n!}\right\}^{-1} \\ &= \binom{n}{x} \frac{r^{(x)}}{(r+w)^{(x)}} \frac{w^{(n-x)}}{(r+w-x)^{(n-x)}} \end{align} と変形できる。 階乗冪の部分は \begin{align} \frac{r^{(x)}}{(r+w)^{(x)}} &= \prod_{i=0}^{x-1} \frac{r-i}{r+w-i} \\ &= \prod_{i=0}^{x-1} \frac{r-i}{r+w} \frac{r+w}{r+w-i} \\ &= \prod_{i=0}^{x-1} \left(p-\frac{i}{r+w}\right) \left(1-\frac{i}{r+w}\right)^{-1} \\ \frac{w^{(n-x)}}{(r+w-x)^{(n-x)}} &= \prod_{j=0}^{n-x-1} \frac{w-j}{r+w-x-j} \\ &= \prod_{j=0}^{n-x-1} \frac{w-j}{r+w} \frac{r+w}{r+w-x-j} \\ &= \prod_{j=0}^{n-x-1} \left(1-p-\frac{j}{r+w}\right) \left(1-\frac{x+j}{r+w}\right)^{-1} \end{align} であるから,これらの極限値は次のようになる。 \begin{align} \lim_{r \to \infty} \frac{r^{(x)}}{(r+w)^{(x)}} &= p^x & \lim_{r \to \infty} \frac{w^{(n-x)}}{(r+w-x)^{(n-x)}} &= (1-p)^{n-x} \end{align} よって二項分布は超幾何分布の極限と考えることができる。 \[ \lim_{r \to \infty} \mathrm{Pr}\{X=x\} = \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} = \mathrm{Pr}\{Y=x\} \]
$Y$は$n$,$p$で定まる二項分布に従う確率変数, $Z$は$\lambda$で定まるポアソン分布に従う確率変数とする。 二項分布において$np$の値を定数$\lambda$に固定し, $n \to \infty$($p \to 0$)のときの$\mathrm{Pr}\{Y=x\}$の極限値を調べる。 \begin{align} \mathrm{Pr}\{Y=x\} &= \binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} = \frac{n^{(x)} p^x}{x!} (1-p)^{n-x} \end{align} と変形できる。 $n^{(x)} p^x$の極限は \[ \lim_{n \to \infty} n^{(x)} p^x = \prod_{i=0}^{x-1} (n-i)p = \prod_{i=0}^{x-1} \lambda \left(1-\frac{i}{n}\right) = \lambda^x \] となり,また$(1-p)^{n-x}$の極限については \[ 1-p = 1-\frac{\lambda}{n} = \left(\frac{n}{n-\lambda}\right)^{-1} = \left(1+\frac{\lambda}{n-\lambda}\right)^{-1} = \left(1+\frac{1}{(n-\lambda)/\lambda}\right)^{-1} \] であり, $n-x=\dfrac{n-\lambda}{\lambda} \times \lambda+\lambda-x$であるから \begin{align} \lim_{n \to \infty} (1-p)^{n-x} &= \lim_{n \to \infty} \left( 1+\frac{1}{(n-\lambda)/\lambda} \right)^{-(n-\lambda)/\lambda \times \lambda-\lambda+x} \\ &= \lim_{t \to \infty} \left(1+\frac{1}{t}\right)^{-t \lambda} \lim_{n \to \infty} \left(1+\frac{1}{(n-\lambda)/\lambda}\right)^{-\lambda+x} \\ &= e^{-\lambda} \end{align} となる。 よってポアソン分布は二項分布の極限と考えることができる。 \[ \lim_{n \to \infty} \mathrm{Pr}\{Y=x\} = \frac{\lambda^x}{x!} e^{-\lambda} = \mathrm{Pr}\{Z=x\} \]
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5. 確率関数の収束
6. その他の離散分布
$n$は正整数とする。 $1$から$n$までの整数値が等しい確率で現れるとき離散一様分布になる。 \[ \mathrm{Pr}\{X=x\} = \frac{1}{n} \qquad (x=1,2,\dots,n) \]
$n$で定められる離散一様分布に従う$X$の期待値は, \[ \mathrm{E}[X] = \sum_{x=1}^n x \cdot \frac{1}{n} = \frac{n+1}{2} \] となる。
$n$で定められる離散一様分布に従う$X$について, $X^2$の期待値は, \begin{align} \mathrm{E}[X^2] &= \sum_{x=1}^n x^2 \cdot \frac{1}{n} = \frac{(n+1)(2n+1)}{6} \end{align} よって分散は \begin{align} \mathrm{V}[X] &= \mathrm{E}[X^2] - \left\{\mathrm{E}[X]\right\}^2 = \frac{(n+1)(2n+1)}{6} - \left(\frac{n+1}{2}\right)^2 = \frac{n^2-1}{12} \end{align} となる。
$p$は$0 < p < 1$をみたす実数とする。 成功率が$p$である成功事象が$x$回目の試行で初めて起こる確率は幾何分布で表される。 \[ \mathrm{Pr}\{X=x\} = p (1-p)^{x-1} \qquad (x=1,2,3,\dots) \]
簡単のため$q=1-p$とおき,$p$で定められる幾何分布の確率母関数$G(t)$を求める。 \[ G(t) = \mathrm{E}\bigl[t^X\bigr] = \sum_{x=1}^{\infty} t^x \cdot pq^{x-1} = pt \sum_{x=1}^{\infty} (qt)^{x-1} = \frac{pt}{1-qt} \]
確率母関数の第1次導関数$G'(t)$は \[ G'(t) = \frac{p(1-qt)+pqt}{(1-qt)^2} = p(1-qt)^{-2} \] であるから,$p$で定められる幾何分布に従う$X$の期待値は, \[ \mathrm{E}[X] = G'(1) = \frac{1}{p} \] となる。
確率母関数の第2次導関数$G''(t)$は \[ G''(t) = 2!pq(1-qt)^{-3} \] であるから,2次階乗積率$\mathrm{E}[X(X-1)]$は \[ \mathrm{E}[X(X-1)] = G''(1) = \frac{2(1-p)}{p^2} \] であり,よって$p$で定められる幾何分布に従う$X$の分散は, \begin{align} \mathrm{V}[X] &= \mathrm{E}[X(X-1)]+\mathrm{E}[X]-\{\mathrm{E}[X]\}^2 \\ &= \frac{2(1-p)}{p^2}+\frac{1}{p}-\left(\frac{1}{p}\right)^2 \\ &= \frac{1-p}{p^2} \end{align} となる。
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2014.8.27 作成 / 2014.10.26 更新
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