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1. 方程式の解の個数

1. 方程式の解の個数
2. 共役解

n次方程式の解

f(x) は実数を係数とする x のn次多項式とする。 f(x) がn次多項式であるという場合,最高次の項 xn の係数は0にならないようにする。 \[ f(x)=a_n x^n+\dots+a_1 x+a_0 \qquad (a_n \ne 0) \] n次方程式 f(x) = 0 の解の個数は最大で n 個であることが知られている。 それを証明しよう。

証明(n次多項式の因数分解)

x = α1, x = α2,…,x = αn はn次方程式 f(x) = 0 の解で, α1,α2,…,αn はすべて異なるとする。 このとき, \[ f(x)=a_n (x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-\alpha_n) \] と表せることを示そう。

1回目

x = α1 は方程式 f(x) = 0 の解なので f(α1) = 0 が成り立つ。 f(x) を x−α1 で割ったときの商を Q1(x),剰余を R1 とすると, 商 Q1(x) は n−1 次式,剰余 R1 は定数である。 \[ f(x)=(x-\alpha_1)Q_1(x)+R_1 \] これに x = α1 を代入すると f(α1) = R1 となる。 \[ R_1=f(\alpha_1)=0 \] よって f(x) を次の形で表すことができる。 \[ f(x)=(x-\alpha_1)Q_1(x) \tag{1} \]

2回目

x = α2 は解なので f(α2) = 0 が成り立ち, α2 は α1 と異なる。 (1)式の f(x) に x = α2 を代入すると \[ f(\alpha_2)=(\alpha_2-\alpha_1)Q_1(\alpha_2)=0 \] であるが,α2 は α1 と異なるので \[ Q_1(\alpha_2)=0 \] が成り立つ。 Q1(x) を x−α2 で割ったときの商を Q2(x),剰余を R2 とすると, 商 Q2(x) は n−2 次式,剰余 R2 は定数である。 \[ Q_1(x)=(x-\alpha_2)Q_2(x)+R_2 \] これに x = α2 を代入すると Q12) = R2 となる。 \[ R_2=Q_1(\alpha_2)=0 \] (1)式とこの結果から Q1(x) や f(x) を次の形で表すことができる。 \begin{align} Q_1(x)=(x-\alpha_2)Q_2(x) \\ f(x)=(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)Q_2(x) \tag{2} \end{align}

3回目

x = α3 は解なので f(α3) = 0 が成り立ち, α3 は α1,α2 と異なる。 (2)式の f(x) に x = α3 を代入すると \[ f(\alpha_3)=(\alpha_3-\alpha_1)(\alpha_3-\alpha_2)Q_2(\alpha_3)=0 \] であるが,α3 は α1,α2 と異なるので \[ Q_2(\alpha_3)=0 \] が成り立つ。 Q2(x) を x−α3 で割ったときの商を Q3(x),剰余を R3 とすると, 商 Q3(x) は n−3 次式,剰余 R3 は定数である。 \[ Q_2(x)=(x-\alpha_3)Q_3(x)+R_3 \] これに x = α3 を代入すると Q23) = R3 となる。 \[ R_3=Q_2(\alpha_3)=0 \] (2)式とこの結果から Q2(x) や f(x) を次の形で表すことができる。 \begin{align} Q_2(x)=(x-\alpha_3)Q_3(x) \\ f(x)=(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)(x-\alpha_3)Q_3(x) \tag{3} \end{align}

n回目

この操作を続けると,n−1 回目には f(x) は次の形で与えられる。 Qn−1(x) は1次式である。 \[ f(x)=(x-\alpha_1) \cdots (x-\alpha_{n-1})Q_{n-1}(x) \tag{4} \] x = αn は解なので f(αn) = 0 が成り立ち, αn は α1,…,αn−1 と異なる。 (4)式の f(x) に x = αn を代入すると \[ f(\alpha_n)=(\alpha_n-\alpha_1) \cdots (\alpha_n-\alpha_{n-1})Q_{n-1}(\alpha_n)=0 \] であるが,αn は α1,…,αn−1 と異なるので \[ Q_{n-1}(\alpha_n)=0 \] が成り立つ。 Qn−1(x) を x−αn で割ったときの商を Qn,剰余を Rn とすると, 商 Qn と剰余 Rn はともに定数である。 \[ Q_{n-1}(x)=(x-\alpha_n)Q_n+R_n \] これに x = αn を代入すると Qn−1n) = Rn となる。 \[ R_n=Q_{n-1}(\alpha_n)=0 \] (4)式とこの結果から Qn−1(x) や f(x) を次の形で表すことができる。 \begin{align} Q_{n-1}(x)=(x-\alpha_n)Q_n \\ f(x)=(x-\alpha_1) \cdots (x-\alpha_n)Q_n \tag{5} \end{align} f(x) = anxn+…+a1x+a0 と(5)式において xn の係数を比較すると Qn = an となっている。 \[ f(x)=a_n (x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-\alpha_n) \tag{6} \]

証明(n次方程式の解の個数)

x = α1, x = α2,…,x = αn はn次方程式 f(x) = 0 の解で, α1,α2,…,αn がすべて異なるとき, \[ f(x)=a_n (x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-\alpha_n) \] と表せる。 x = β をn次方程式 f(x) = 0 の任意の解とすると, f(β) = 0 から \[ f(\beta)=a_n (\beta-\alpha_1)(\beta-\alpha_2) \cdots (\beta-\alpha_n)=0 \] が成り立つ。 an ≠ 0 だから,β は α1,α2,…,αn のいずれかに等しい。 つまりn次方程式 f(x) = 0 は n+1 個目の解をもつことができないから, n次方程式 f(x) = 0 の解は最大で n 個である。

証明(重解をもつ場合)

念のため f(x) = 0 が重解をもつ場合も確かめておこう。 n次方程式 f(x) = 0 のたがいに異なる解が m 個まで見つかったとして,それを \[ x=\alpha_1,\; x=\alpha_2,\; \dots,\; x=\alpha_m \qquad (m < n) \tag{7} \] とする。 (7)のいずれとも異なる f(x) = 0 の解が見つからなければ, f(x) = 0 の解は(7)のm個ですべてであり,n次方程式 f(x) = 0 の解の個数はn個を超えない。 反対に,(7)のいずれとも異なる f(x) = 0 の解が見つかれば, その解を x = αm+1 として(7)に付け加える。 m+1 < n の場合は,m+1 を m に置き換え,上と同じ操作を続ける。 すでにたがいに異なる解がn個まで見つかっている場合は,もう新しい解を見つけることは出来ないから, n次方程式 f(x) = 0 の解の個数はn個を超えない。

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2. 共役解

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2. 共役解

共役複素数の演算

複素数 z = a+bi と w = c+di について,その共役の和や積を求めよう。 虚数単位を i とする。 \begin{align} & z=a+bi & & w=c+di \end{align} 各々の共役複素数は \begin{align} & \bar{z}=a-bi & & \bar{w}=c-di \end{align} と表せる。これらの和は \begin{align} \bar{z}+\bar{w} &= (a-bi)+(c-di) =(a+c)-(b+d)i \\ &= \overline{(a+c)+(b+d)i} =\overline{(a+bi)+(c+di)} \\ &= \overline{z+w} \end{align} これらの積は \begin{align} \bar{z}\bar{w} &= (a-bi)(c-di) =(ac-bd)-(ad+bc)i \\ &= \overline{(ac-bd)+(ad+bc)i} =\overline{(a+bi)(c+di)} \\ &= \overline{zw} \end{align} となる。 積の性質から次のような冪の性質も導ける。 \begin{align} & \bar{z}+\bar{w}=\overline{z+w}, & & \bar{z}\bar{w}=\overline{zw}, & & (\bar{z})^n=\overline{z^n} \tag{1} \end{align} また,a が実数ならば,aの共役はaに等しい。 \[ a \in \mathbb{R} \implies \bar{a} = a \]

共役解

f(z) を実数を係数とする多項式とする。 \(\mathbb{R}\)は実数全体の集合を表す。 \[ f(z)=\sum_{k=0}^n a_k z^k=a_n z^n+\dots+a_1 z+a_0 \qquad (a_k \in \mathbb{R}) \] z = γ が方程式 f(z) = 0 の解であるとき, γの共役も解になることが知られている。 それを証明しよう。 γ が解のとき, \[ f(\gamma)=\sum_{k=0}^n a_k \gamma^k=0 \] である。このとき共役についても, \begin{align} f(\bar{\gamma}) &= \sum_{k=0}^n a_k (\bar{\gamma})^k =\sum_{k=0}^n \bar{a_k} \overline{\gamma^k} =\sum_{k=0}^n \overline{a_k \gamma^k} =\overline{\sum_{k=0}^n a_k \gamma^k} =\overline{f(\gamma)} =0 \end{align} が成り立つから,共役も解になる。 \[ f(\gamma)=0 \implies f(\bar{\gamma})=0 \]

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2015.12.11 作成 / 2015.12.12 更新

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