Home累乗根0の0乗

1. 冪根とは

1. 冪根とは
2. 冪根の性質
3. 負の数の平方根
4. 奇数乗の冪根の性質

平方根

実数 a の平方根とは,x2 = a を満たす数 x のことである。 \[ x^2=a \tag{1} \] a > 0 のとき,(1)を満たす実数 x には正のものと負のものが存在する。 正のほうの x を根号を用いて表し,負のほうの x はそれにマイナスの符号をつけて表す。 \begin{align} & x^2=a \iff x=\sqrt{a}, \; x=-\sqrt{a} & & (a > 0) \end{align} a = 0 のとき,(1)を満たす x は 0 のみである。 \begin{align} & x^2=a=0 \iff x=\sqrt{a}=0 & & (a=0) \end{align} a < 0 のとき,(1)を満たす実数 x は存在しないから,原則として根号は利用しない。

計算例

根号を用いて表された平方根は常に非負である。 \begin{align} & \sqrt{5^2}=5 & & \sqrt{(-5)^2}=5 \end{align}

立方根

実数 a の立方根とは,x3 = a を満たす数 x のことである。 \[ x^3=a \tag{2} \] a の符号によらず,(2)を満たす実数 x が唯一つ存在する。 a が正のとき a の立方根は正となり, a が負のとき a の立方根は負となる。 \[ x^3=a \iff x=\sqrt[3]{a} \] 実数 x が a の立方根のとき,(−x)3 = −x3 = −a であり, 実数 −x が −a の立方根となるから次が成り立つ。 \[ -\sqrt[3]{a}=\sqrt[3]{-a} \]

計算例

立方根の値は正にも負にもなる。 \begin{align} & \sqrt[3]{8}=2 & & \sqrt[3]{-8}=-\sqrt[3]{8}=-2 \end{align}

偶数乗根

平方根や立方根を一般化しよう。 n が偶数のとき,実数 a のn乗根とは,xn = a を満たす数 x のことである。 \[ x^n=a \tag{3} \] a > 0 のとき,(3)を満たす実数 x は2個あり,正のものと負のものがある。 正のほうの x を根号を用いて表し,負のほうの x はそれにマイナスの符号をつけて表す。 \begin{align} & x^n=a \iff x=\sqrt[n]{a}, \; x=-\sqrt[n]{a} & & (a > 0) \end{align} a = 0 のとき,(3)を満たす x は 0 のみである。 \begin{align} & x^n=a=0 \iff x=\sqrt[n]{a}=0 & & (a=0) \end{align} a < 0 のとき,(3)を満たす実数 x は存在しないから,原則として根号は利用しない。

計算例

nが偶数のとき,根号を用いて表されたn乗根は常に非負である。 n = 2 のときは2乗根は平方根に等しいから,2を省略することができる。 \begin{align} & \sqrt[4]{81}=3 & & \sqrt[2]{49}=\sqrt{49}=7 \end{align}

奇数乗根

n が奇数のとき,実数 a のn乗根とは,xn = a を満たす数 x のことである。 \[ x^n=a \tag{4} \] a の符号によらず,(4)を満たす実数 x が唯一つ存在する。 a が正のとき a のn乗根は正となり, a が負のとき a のn乗根は負となる。 \[ x^n=a \iff x=\sqrt[n]{a} \] n が奇数で,実数 x が a のn乗根のとき,(−x)n = −xn = −a であり, 実数 −x が −a のn乗根となるから次が成り立つ。 \[ -\sqrt[n]{a}=\sqrt[n]{-a} \]

計算例

nが奇数のとき,n乗根の値は正にも負にもなる。 \begin{align} & \sqrt[5]{243}=3 & & \sqrt[9]{-512}=-\sqrt[9]{512}=-2 \end{align}

次のページへ

1 2 3 4 Next

2. 冪根の性質

1. 冪根とは
2. 冪根の性質
3. 負の数の平方根
4. 奇数乗の冪根の性質

非負数の冪根

a は非負の実数,n は2以上の自然数とする。 非負の実数 a に対して xn = a を満たす非負の実数 x がかならず存在し, その値が一つに定まるからそれを根号で表す。 \[ x^n=a \ge 0 \iff x=\sqrt[n]{a} \ge 0 \] a ≥ 0 のとき,上の定義式から次の法則が得られる。 \[ (\sqrt[n]{a})^n=a \] a ≥ 0 のとき,定義式の a を an に置き換えると, xn = (an) ならば x = a なので, 次の法則が得られる。 \[ a = \sqrt[n]{a^n} \] 上の2つを合わせて次式が成り立つ。 \[ (\sqrt[n]{a})^n=\sqrt[n]{a^n}=a \tag{1} \]

指数法則

任意の実数 a,b と自然数 m,n について次の指数法則が成り立つ。 \begin{align} & (ab)^n=a^n b^n & & \left( \frac{a}{b} \right)^n=\frac{a^n}{b^n} & & (a^m)^n=a^{mn} \tag{2} \end{align} ただし2番目の指数法則では b ≠ 0 を仮定する。 この指数法則を利用して,以下の冪根の法則を導こう。

冪根の性質

性質1

a,b は非負の実数とする。 \begin{align} & A=\sqrt[n]{a}, & & B=\sqrt[n]{b} \end{align} とおき,A,Bに対して1番目の指数法則 (AB)n = AnBn を用いる。 \[ (\sqrt[n]{\vphantom{1}a}\sqrt[n]{\vphantom{1}b})^n =(AB)^n =A^n B^n =(\sqrt[n]{a})^n(\sqrt[n]{b})^n =ab \] x = AB とおくと,x と ab は非負の実数で xn = ab を満たすから,次の法則が得られる。 \[ \sqrt[n]{\vphantom{1}a}\sqrt[n]{\vphantom{1}b}=\sqrt[n]{ab} \tag{3} \]

性質2

b ≠ 0 のとき,(3)式の a を a/b に置き換える。 \[ \sqrt[n]{\frac{a}{b}}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{\frac{a}{b} \times b}=\sqrt[n]{a} \] \(\sqrt[n]{b}\) で割ると次の法則が得られる。 \[ \frac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}=\sqrt[n]{\frac{a}{b}} \tag{4} \]

性質3

a は非負の実数とする。 \begin{align} & A=\sqrt[n]{a}, & & B=\sqrt[m]{A} \end{align} とおき,Bに対して3番目の指数法則 (Bm)n = Bmn を用いる。 \[ \left( \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} \right)^{mn} =B^{mn} =(B^m)^n =((\sqrt[m]{A})^m)^n =A^n =(\sqrt[n]{a})^n =a \] x = B とおくと,x と a は非負の実数で xmn = a を満たすから,次の法則が得られる。 \[ \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}=\sqrt[mn]{a} \tag{5} \]

次のページへ

1 2 3 4 Next

3. 負の数の平方根

1. 冪根とは
2. 冪根の性質
3. 負の数の平方根
4. 奇数乗の冪根の性質

2次方程式の解として

次の2次方程式を解く。 \[ x^2-2x+3=0 \tag{1} \] 解の公式を利用して解くと虚数解が得られるが,解は次のような計算によって求められている。 \[ x=1 \pm \sqrt{-2}=1 \pm \sqrt{2}i \] 一旦 \(\sqrt{-2}\) という形を得てから,虚数単位 i を用いた形に直している。 この計算では \(\sqrt{-2}\) が確定した値をもつものとして扱われているから, 負の数の平方根とそれを根号で表す方法を定義しておかなければならない。

負の数の平方根

実数 a の平方根とは,x2 = a を満たす数 x のことである。 \[ x^2=a \tag{2} \] a > 0 のとき,(2)を満たす x は実数で,正のものと負のものがある。 正のほうの x を根号を用いて表し,負のほうの x はそれにマイナスの符号をつけて表す。 \begin{align} & x=\sqrt{a}, & & x=-\sqrt{a} & & (a > 0) \end{align} a = 0 のとき,(2)を満たす x は 0 のみである。 \begin{align} & x=\sqrt{a}=0 & & (a=0) \end{align} a < 0 のときは,(2)を満たす x は純虚数で,虚部が正のものと虚部が負のものがある。 実際の根号の使われ方を参考にして次のように定義する。 虚部が正のほうの x を根号を用いて表し,虚部が負のほうの x はそれにマイナスの符号をつけて表す。 \begin{align} & x=\sqrt{a}=\sqrt{-a}\, i, & & x=-\sqrt{a}=-\sqrt{-a}\, i & & (a < 0) \end{align}

計算例
\begin{align} & \sqrt{-3}=\sqrt{3} i & & \sqrt{-4}=\sqrt{4} i=2i \end{align}

負の数の6乗根

根号の中からマイナスを取り出して虚数単位 i に置き換えるような計算は,6乗根でも可能である。 ただし可能性を述べただけなので,実際にはやらないほうがよい。 たとえば,−64 の6乗根は次の6個ある。 \begin{align} & 2i, & & -\sqrt{3}+i, & & -\sqrt{3}-i, & & -2i, & & \sqrt{3}-i, & & \sqrt{3}+i \end{align} 一部の6乗根は,根号の中からマイナスを取り出して虚数単位 i に置き換えた形になっている。 \begin{align} & \sqrt[6]{-64}=\sqrt[6]{64} i=2i, & & -\sqrt[6]{-64}=-\sqrt[6]{64} i=-2i \end{align} しかしそのルールに当てはまらない6乗根がまだ4つ残ったままであるし, 2i を6乗根全体の代表として選ばなければならない理由は乏しいので, このような根号の使い方は望ましくない。

負の数の4乗根

根号の中からマイナスを取り出して虚数単位 i に置き換えても,4乗根は求まらない。 たとえば,−4 の4乗根は次の4個ある。 \begin{align} & 1+i, & & -1+i, & & -1-i, & & 1-i \end{align} −4 の4乗根には実数であるものや純虚数であるものは存在しない。

計算例

n = 2,6,10 等のとき,次が成り立つ。 誤りとはいえないが,やらないほうがよい(平方根はしてもよい)。 \begin{align} & \sqrt{-100}=10i, & & \sqrt[6]{-729}=3i, & & \sqrt[10]{-1024}=2i \end{align} n = 4,8 等のとき,このルールは使えない。 \begin{align} & \sqrt[4]{-625} \ne 5i, & & \sqrt[8]{-256} \ne 2i \end{align}

解の公式

2次方程式を解くとき,負の数の平方根が使えると便利になる。 負の数の平方根が使える場合は,2次方程式 ax2+bx+c = 0 の解は次の公式で与えられる。 \[ x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \] この公式を用いると,2次方程式 x2−2x+3 = 0 の解が次のように求められる。 途中で \(\sqrt{-2}\) が現れている。 \begin{align} x &= 1 \pm \sqrt{1^2-1 \times 3} \\ &= 1 \pm \sqrt{-2} \\ &= 1 \pm \sqrt{2} i \end{align} もし,負の数の平方根が定義されないならば,解の公式を書き換えなければならない。 \begin{align} D=b^2-4ac \ge 0 &\implies x=\frac{-b \pm \sqrt{D}}{2a} \\ D=b^2-4ac < 0 &\implies x=\frac{-b \pm \sqrt{-D}i}{2a} \end{align} 負数の平方根が使えないとき, 2次方程式 x2−2x+3 = 0 の解は次のように求めなければならない。 判別式 D = b2−4ac の符号を調べた後でないと根号を書くことができない。 \begin{align} D &= 1^2-1 \times 3=-2 \\ x &= 1 \pm \sqrt{-D} i \\ &= 1 \pm \sqrt{2} i \end{align} 負数の平方根が使われる理由は,2次方程式の解の公式を便利にするためといってよいだろう。

次のページへ

1 2 3 4 Next

4. 奇数乗の冪根の性質

1. 冪根とは
2. 冪根の性質
3. 負の数の平方根
4. 奇数乗の冪根の性質

奇数乗の冪根

a は任意の実数,n は3以上の奇数とする。 実数 a に対して xn = a を満たす実数 x がかならず存在し, その値が一つに定まるからそれを根号で表す。 \[ x^n=a \iff x=\sqrt[n]{a} \] nが奇数の場合は,a を非負の実数に制限しなくても同様の法則が成り立つ。 \[ (\sqrt[n]{a})^n=\sqrt[n]{a^n}=a \tag{1} \]

奇数乗の冪根の性質

性質1

a,b は(負数を含む)実数,n は奇数とする。 \begin{align} & A=\sqrt[n]{a}, & & B=\sqrt[n]{b} \end{align} とおき,A,Bに対して1番目の指数法則 (AB)n = AnBn を用いる。 \[ (\sqrt[n]{\vphantom{1}a}\sqrt[n]{\vphantom{1}b})^n =(AB)^n =A^n B^n =(\sqrt[n]{a})^n(\sqrt[n]{b})^n =ab \] n が奇数のとき,x = AB とおくと,x と ab は実数で xn = ab を満たすから,次の法則が得られる。 \[ \sqrt[n]{\vphantom{1}a}\sqrt[n]{\vphantom{1}b}=\sqrt[n]{ab} \tag{2} \]

性質2

b ≠ 0 のとき,(2)から次の法則が得られる。 \[ \frac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}=\sqrt[n]{\frac{a}{b}} \tag{3} \]

性質3

a は(負数を含む)実数,m,n は奇数とする。 \begin{align} & A=\sqrt[n]{a}, & & B=\sqrt[m]{A} \end{align} とおき,Bに対して3番目の指数法則 (Bm)n = Bmn を用いる。 \[ \left( \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} \right)^{mn} =B^{mn} =(B^m)^n =((\sqrt[m]{A})^m)^n =A^n =(\sqrt[n]{a})^n =a \] m,n が奇数のとき mn も奇数である。 x = B とおくと,x と a は実数で xmn = a を満たすから,次の法則が得られる。 \[ \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}=\sqrt[mn]{a} \tag{4} \]

計算例

奇数乗の場合は,根号の中が負になっても法則が成り立つ。 \begin{align} & \sqrt[3]{27} \sqrt[3]{8}=\sqrt[3]{27 \times 8}=6 & & \sqrt[3]{-27} \sqrt[3]{8}=\sqrt[3]{(-27) \times 8}=-6 \\ & \sqrt[3]{27} \sqrt[3]{-8}=\sqrt[3]{27 \times (-8)}=-6 & & \sqrt[3]{-27} \sqrt[3]{-8}=\sqrt[3]{(-27) \times (-8)}=6 \end{align} 次の式も成り立つ。 \[ \sqrt[3]{\sqrt[3]{-512}}=\sqrt[9]{-512}=-2 \]

負の数の平方根の場合

a,b は正の実数,−a,−b は負の実数とする。 −a や −b の平方根が,性質1を満たさないことを確かめよう。 \begin{align} & A=\sqrt{-a}, & & B=\sqrt{-b} \end{align} とおき,A,Bに対して1番目の指数法則 (AB)n = AnBn を用いる。 x = AB とおくと,(−a)(−b) は正の実数で x2 = (−a)(−b) を満たす。 \[ x^2=(\sqrt{-\vphantom{1}a}\sqrt{-\vphantom{1}b})^2 =(AB)^2 =A^2 B^2 =(\sqrt{-a})^2 (\sqrt{-b})^2 =(-a)(-b) > 0 \] しかし x は正の実数ではない。 \[ x=\sqrt{-\vphantom{1}a}\sqrt{-\vphantom{1}b} =\sqrt{\vphantom{1}a} i \sqrt{\vphantom{1}b} i =-\sqrt{\vphantom{1}a}\sqrt{\vphantom{1}b} < 0 \] x は (−a)(−b) の平方根の一つではあるが,性質1にはあてはまらない。 \[ \sqrt{-\vphantom{1}a}\sqrt{-\vphantom{1}b} \ne \sqrt{(-a)(-b)} \tag{5} \] もう一つの平方根 −x = −AB については, −x と (−a)(−b) は正の実数で (−x)2 = (−a)(−b) を満たすから, 次が成り立つ。 \[ -\sqrt{-\vphantom{1}a}\sqrt{-\vphantom{1}b}=\sqrt{(-a)(-b)} \tag{6} \] いずれにしても,負の数の平方根に対して,性質1などの冪根の法則は成り立たない。

最終ページです

1 2 3 4 Home

累乗根

Home累乗根0の0乗

2015.12.13 作成 / 2020.2.17 更新

Home › 累乗根