暗闇が広がる空間。
重苦しい空気。

「ここ・・は・・」

はっきりしない思考の中でマサキは呟く。
まるで水に浮かんで、その波にでも揺られているかのようなゆらゆらとした感覚に、今にも意識が遠のきそうになる。

ざわっ・・・

不意に何かが蠢く気配がした。
消えかける意識をなんとか繋ぎとめ、周囲を見渡して彼は絶句した。
自分が揺られているのは水の波などではなく、無数の闇の触手だったからだ。

漆黒の海。
そう呼べるであろう、ソレは彼の身体に巻きつき、さらには侵食してきている。
それを慌てて振り払おうとするものの、容易にはいかない。
「・・ぅ・・ッふ・・・ぁッ・・!」
侵食はさらに進み、彼の身体は黒く闇に蝕まれていく。
 

徐々に視界が闇に慣れてはっきりしてくるとその触手はある一点から伸びていることに気がついた。
その一点を見た彼は思わず息を飲んだ。

そこには今までに見たことも無い巨大な異形の姿があったのだ。
暗闇の中にあっても尚暗き闇の「彩」。
しかし彼にはソレが何であるかはっきりとわかった。
近視感ともいえる、『何か』で・・・

「・・・ヴォル・・・クル・・ス・・・ッ」
『・・逆ラウナ・・・身ヲ任セヨ・・・来イ・・我ノ元ヘ・・・』
「!?」
脳裏に響く声。

『・・我ノ元ヘ来タレ・・サスレバドンナ望ミデモ叶エテヤロウ・・・汝ガ魂ト引キ換エニナ・・・』
感情のこもらぬ淡々と紡がれる言葉。それは返って彼の怒りに火をつけた。

「ッ・・・冗談言うな!誰が・・ッ・・てめぇなんかに魂をやるか!!」
『汝ハ贄・・・・我ノ『力』ニナルベキ者ダ・・・ソノ代価ニ相応シキ我ノ『力』を貸シ与エルト言ッテイルノダゾ?』
「断るってんだよ!さっさと離せ、この野郎!!」
そう叫び、再びじたばたと暴れるマサキ。

『汝ハ贄・・ソウ言ッタハズダ・・・『力』ヲ望ムナラバ・・我ニ従ウナラバ、我ガ僕トシテ使ッテヤルツモリダッタガ・・・』
「んなの死んでもゴメンだぁぁッ!!」
即答。
しかし今まで何の感情も見せずに淡々としていた邪神の思念にも強い悪意がこもりだしていた。

『・・・望マヌナラバ、我ニ従ワヌナラバ、コノママ我ガ一部トナルガ良イ!!』
忌々しげに邪神の思念が叩きつけられ・・・彼が一瞬怯んだ隙に、いままで巻きつき侵食していきていた・・・しかし緩やかな動きだったそれがうって変わって激しくなる。

「!?・・・あっ・・くぅ・・ッ・・!」
荒波にもまれる小さな小船の如く、容赦ない「流れ」に飲み込まれる。
触手は細い彼の身体に這い回り、そしてその身を黒く侵食していく。
まるで存在そのものを喰い尽すようなそれに、彼もただ黙って飲み込まれる気は無く、力の限りそれを撥ね退ける。
しかし神経そのものに直接送り込まれる感覚は徐々に身体を支配していき、身体が萎えそうになる。
ともすれば、自分から取込まれてしまれてしまおうという気にさせられそうなソレに必死に意識を集中させ、抵抗する。

「・・ッぁ・・・と・・とりッ・・こまれて・・またまるかぁ・・ッ・・・!」
彼は必死にもがいていたが、それでもいつのまにかヴォルクルスのすぐそばまで引きずり込まれていた。
その時ふと目にとまったのは・・・邪神に取込まれてしまった・・・左胸から止めどもなく血を流し、それでも微かに抵抗するように身じろぎしている・・・子供の姿だった。

「・・ッ・・・こ・・こぉんのぉぉッ!!」
彼は邪神に強い怒りを感じ、思わず叫ぶ。
自分も取込まれそうになっているのも忘れ、その子に手を伸ばす。
しかし巻きつく触手に邪魔されて、その手は届かない。

「いい加減に・・・しやがれぇぇッ!!」

その叫びと同時に暗黒の世界に光が満ちる。
彼を侵食していた闇の触手の殆どが消え去り、邪神の姿もまた揺らいだ。

それでもまだ身体の中に感覚は残っている。
ふらつく身体を叱咤して彼は子供に手を伸ばす。
光の影響か、その子供も多少の自由を取り戻したらしく、おずおずとその手を伸ばしてきた。
もう少し・・・

指先が触れる。
同時にマサキの頭の中に流れる『何か』。

(これは・・・・・・記憶・・・?)

そんな時、闇が再び力を発する。
光が薄れ、邪神は揺らぎながらも闇の中に姿を消そうとしていた。
子供の姿も揺らぐ。

それでも諦めずに手を伸ばそうとした彼に、子供は微かに微笑んだ。
そして声無き声で何かの言葉を紡ぐ。
「!?」
 

そして・・・邪神は子供と共に完全に姿を消し、彼の意識もそこで途切れた。
 
 


マサキには「邪悪な力を断ち切る力」が先天的に備わっているように思います。
この時点じゃ発現の仕方がまだ不完全ですけどね。
でもそうゆう力をもった彼だからこそ、邪神の支配にも屈しないし、後にシュウ様(爆)を救えるんデス♪(ォィ)

ちなみにコレでマサキはシュウ様の過去を知ることに・・・(爆)

てゆーか・・・相変わらず小説駄目じゃわ・・・もーちょいなんとかならんのか、わし・・・(汗)

・・・それにしても精神体とはいえ、アレの後で元気だなーマサキ・・・(苦笑)



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