コラム(本紙 「小窓」より)

ひとりカラオケ

 ウーロン茶はウイスキーとその色が似ていることから、銀座や新地のホステスさんがお客様の目前でお酒を飲んでいるふりができる飲み物として重宝したことが流行のきっかけと言われている。その後ピンクレディーなどの芸能人がダイエットのために飲んでいると噂され、缶入りのウーロン茶が大ヒット、しばらくして日本茶もその波に乗った。お茶はやかんで湯をわかし急須に茶葉を入れて濾して飲むもの。そんな昭和の常識が崩れ、いまではペットボトルが当たり前になっている。
 
 お米はお米屋さんで買い、炊飯器で炊いて食べる。しかし現在は、炊き立てがパックされたものをスーパーやコンビニで購入し、レンジでチンして食べることも当たり前になってきている。米卸である神戸の神明や新潟の佐藤食品工業などはその売り上げを確実に伸ばしている。神明は10分で炊けるお米やその炊飯器まで開発している。米や茶、酒など需要が衰えても、食べ方、飲み方やパッケージによる提案をすれば需要開拓できる良い例だ。

 キユーピーが出資するカット野菜の会社、サラダクラブも売り上げを伸ばしている。コンビニの店頭ではOLたちが、地場スーパーでは主婦や高齢者たちがカット野菜を購入している。パッケージの表示には、野菜の産地である都道府県がしっかりと表示されている。カット野菜が売れる理由は異常気象も影響しているという。天候不順で野菜の価格が高騰するとカット野菜、冷凍野菜などの価格が安定した商品の需要が伸びるという。

 今後、高齢化が進み、個食化、パーソナル化はさらに進展する。町を歩けば、ひとり焼き肉、ひとりステーキ、ひとりカラオケなどの新しい業態がひしめき合っている。最近ではひとりゴルフなどもある。日本においては2000年に単独世帯は1058万5000世帯だったが、2016年には1343万4000世帯に増えた。さらに、総務省によると、夫婦共働き世帯は2000年の929万世帯から2016年には1129万世帯に増えている。家族団欒もすでに昭和の言葉なのか。

(2017/10/20 IKKO YONEI@nihonbashi)



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