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ドラ・テク修行記




ドラ・テク修行記  序 章

学生時代からワタクシは、多くの男子学生と同じように自動車好きの青年でした。
しかし、決してスピード狂の「走り屋」でもなく、車をイジリまわす「カスタム・チューニング派」でもなく、 唯、映り行く景色を観ながら、考え事をしたり、好きな音楽を聴きながら、何も考えず『ボー』としていられる空間が好きでした。

社会人になり、横浜に赴任することになりましたが、 物価の安い田舎と違い、 車が無くても生活ができる都会で、安月給のアパート暮らしでは車を維持するのは自殺行為と同じでした。
しかしクルマ好きのワタクシは、先輩・同僚の酒やゴルフのお誘いをブッちぎって、倹約に励み、ドライブを楽しんでおりました。

バブル絶頂期のある日、当時 ワタクシは厚木で所員4名の小さな営業所の所長をしておりましたが、 売上目標達成の為、休日返上で大磯ロングビーチの特設会場にて、住宅機器の展示会に出展メーカーとして販売促進活動をしておりました。
すると、裏の駐車場の方から車のタイヤスキール音と共に、楽しそうな黄色い歓声が聞こえてくるではありませんか!
こっそり会場を抜け出し覗いて見ると、高級外車メーカーB社が主催するドライビングスクールでした。
な、ナ、何と羨ましい光景なんだ!
こっちはョ~、安月給で休みも少ない上に休日返上で働いているのに、べらぼうめぇ~。
俺もあんな身分になってみてーョ~!

それから数年後、ワタクシは最後の親孝行と親の残した借金返済の為、サラリーマン生活にピリオドを打ち、家業を継いでおりました。
ある日、車雑誌を見ていると、以前大磯で見た高級外車メーカードライビングスクールの募集記事が載っていました。
金額を見ると一番安い日帰りのコンパクトコースで、な、ナ、何と、6万円もするではありませんか! (流石リッチマンのお遊びは違いまんなぁ~!)
恐る恐る申し込みの電話をしてみると、あいにく今年度のコンパクトコースはキャンセル待ちの状態との事。
少し残念ではあったが、交通費を含めると8万円近くもなる無駄使いをしなくてもすんだ事に内心ホッとしたのでありました。

そんな事もスッカリ忘れていた数ヵ月後の九月末頃、突然、例のドライビングスクールの事務局のY嬢から電話が有りました。
『あの~。突然なんですが~明後日のコンパクトコースに空きができたのですが、参加されますか?』
『あっ、ア、明後日ですか~?』
断ろうとも思いましたが、前に見たあの羨ましい光景を思い出し、清水の舞台から飛び降りる気分で参加する事にしました。

当日、外がまだ暗いうちに家を出て大磯に向かいました。
何度も来ていた大磯ロングビーチも仕事以外で向かうのは変な気持ちです。😄
会場に着いてみると、そこには20代後半から40代50代と見られる男女の幅広い年齢層の参加者がいました。
なかには、旦那様がこのスクール常連客のフランス人 だと言うオバちゃん(失礼!マダムでした)もいらっしゃいました。

午前中は、まず座学の後、ドライビングポジション確認、ステアリング操作、慣熟走行と続きました。
ワタクシは身長が低い上に手足が短いのをごまかす為、見栄を張って目一杯シートを後に下げておりました。これでは速くて正確な操作が出来ませんね。(反省!)
午後、インストラクターを交えての楽しい昼食の後、再び座学があり、その後はブレ-キングとコーナリングの2グループに分けての実習がありました。

私達のグループは水を撒いて滑りやすくしたスキッドパッドでのコーナリング実習からです。
定常円旋回中、急ハンドル、急アクセルなど普段してはいけないとされている行為を実際自分でやってみて車がどう反応するか?またどうリカバリーすればいいのかを、身をもって体験しました。
クルマはハンドルを切れば曲がるものではなく、またアクセルで向きを変えることも出来るのですね。
モータージャーナリストでもあるKインストラクターの理論と実技を交えたインストラクションは、非常に解りやすく、 自分ではアンダーステア・オーバーステアと言うものを知っているつもりでいたが、実際はチャンと理解できてなく、まさに「目から鱗」でした。

もっと練習したいョ~と思いながら、アッという間に楽しいスキッドパッドも終わり、次はブレ-キングの実習です。
まずは水を撒いた路面で急ブレーキ。タイヤをフルロックさせる練習。
続いてタイヤをロックさせた状態でステアリング操作。
タイヤがロックされた状態では、ハンドルを切っても車は曲がりません。
次は「フルブレーキ→タイヤロック→ステアリング操作→ブレーキリリース→ステアリング操作→フルブレーキ→停止」と言う手順で障害物回避(レーンチェンジ)。
インストラクターのH氏やインストラクター見習いのIさんがいとも簡単そうに障害物回避して行くのに対し、運動神経が鈍いワタクシは障害物のパイロンをことごとくなぎ倒す始末。
これがボウリングだったら、ブッチギリの高得点。
(スタッフの皆さん仕事を増やしてすみませ~ん!)
他の参加者も初めはクリアー出来る人は少なかったが、何度か練習するうちに、皆出来るようになってきたのに対し、ワタクシは相変わらずのハイスコア-。😢
おネェちゃん、オバちゃん、年寄りでも出来るのに、情けねぇ~ょ~!!
続いては、ABSを効かしての障害物回避。
で、デ、出来た~!
こんなワタクシでも出来ました~!
ありがとうABS!付いてて良かったABS!!

次は、ABSを効かしてスピードをもう10キロ上げての障害物回避。
先ほどは簡単に出来たことがスピードが少し上がるだけで別世界。鬼に金棒と思われたABSもタイヤの性能と物理の法則は超えられないのでした。

今回このスクールに参加してみて、クルマを運転する事の難しさと楽しさを再発見したのでありました。 それと同時にオバちゃんにでも出来た事が自分は出来なかったことに、悔しいやら情けないやら。(なみだ!ナミダ!涙!)
頭の悪い私が勉強の成績が悪いの悔しいと思いません。嫌いな徒競走やマラソンが遅いのも気にしません。しかし、大好きなクルマの運転が下手なのは許せません! ブスで性格の悪い女性に嫌われようと気にしませんが、気になる彼女にフラれるのは辛いのです。

もっと運転が上手くなりた~い。せめて人並みに。
乗っている車に相応しい人間に成りた~い。
かなうのなら手足のようにコントロール出来るようになりた~い。

そう心に強く思ったワタクシは、3週間後に開催されるという、な、ナ、ナ・・・何と、18万円もするアドバンストコースなるものに申し込んでしまったのです。

つづく・・・

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