脚本っぽいオリジナル小説 「みどりのこみち」 作:しげっち - 小さい頃に思い描いてた いつか、このみどりの小路を再び歩くときがくる そのときはきっと もうわたしは一人じゃない - 薄くらい部屋の隅で点滅する光 どうせ、また迷惑メールだろうと思い、ほっておいた。 そして、また布団の中に顔までうずくまる。 翌朝、電車のホームでメールをチェックしている。迷惑メール らしいメールを次々と削除していきながら、ふと指を止めた。 「夏休みに同窓会をやります。期日は.....」 (テーマ曲ながれる) みどりのこみち
帰省したとわかるような画面の映像 あけみの足元を写しながら、階段を上っていくと、同級生のいるらしき 部屋にたどりつく わーっとみんな集まってわいわいしゃべる 女友達A「ねえ、結婚はまだしないの?」 あけみ「(すこしもどもどしながら) うん、まだ考えてないわ」 「わたしんとこ、女ばっかりで出会いとかないし」 女友達A「だけど、東京だったら出会いは多いでしょう。こんな 田舎より遊ぶとこもいっぱいあるし」 あけみ「そうでもないのよ・・・・」 引いた映像。雑談をしているあけみの映像。 とてもうるさい。 また別の2人のズームイン 女友達b「優ちゃん、来なかったんだね」 あけみ「そうみたいね。みんな来ればよかったのに」 女友達b「あんた、優ちゃんとは一番仲よかったじゃない」 あけみ「そうだけどね。小学校のときはね」 女友達b「あのあとは、そうでもなかったか....」 あけみ「だけど、久しぶりに会いたかったね」 あけみは同窓会の知らせが来たときから、ずっと優のことを うっすらと考えていた。 それは不安でもあり、楽しみでもあった。小学校卒業以来、 口を聞くこともなく、お互いに別の人生を歩んできていたからだ。 二人が離れたのには理由などなかった。自然だった。 中学で同じクラスになったこともあった。だが特にくっつくこともなく 距離を置いて、クラスメートとして、しとやかに接していたのだ。 嫌いになったわけではなく、なぜかそれが自然だったのだ。
場面変わって、 居酒屋から出てくる集団。店の前で記念写真をとる。 場面変わって 車の中の映像。家まで送ってもらうあけみ。 窓ごしの映像。 昨日の酒のせいで、2日酔いで少し頭が痛かった。 リビングへ行くと、親が作っておいたラップに包んだおかずがあった。 おかずを覗き込んで、それから時計をみると、昼の12時をまわっていた。 「しまった。もう昼だ」 あけみはテレビを見ながら、昼ごはんを食べていたが、何か頭のおくで 昨日の夜思いついた、ある事をしようと考えていた。 ごはんを済ませてしまうと、台所の流しに皿をつけ、手早く洗い、また リビングでソファーに座りこんだ。 そして、決心したように立ち上がり、玄関のほうへと歩いていった。 「電話番号なんだったっけ。」 あの頃はよく電話していたのに、もうすっかり忘れていた。無理もない、 十年以上もかけていないのだから。 あけみは部屋に行き、引き出しの中から、卒業文集を取り出し、後ろのページに ある、電話番号一覧を指でなぞった。 そして、再び、玄関へ行くと、一覧を見ながら、ダイヤルを回した。 (そう、ここは田舎、プッシュではないんです) 優の母「はい、もしもし。」 コールしてからそう時間はかからなかった。母親のようだった。 「もしもし、あけみですけど....上原...」 優の母「あら、あけみちゃんね。あら、ひさしぶりね、何年ぶりよ」 あけみ「昨日、同窓会だったんですよ。それで帰省したんです」 優の母「あー、そうやってね。竹井君から電話あったわー 優は仕事で帰れんでね。急だったでしょー」 あけみ「あ、急だったですからね。私も取れるかわからんかったんですけど こんなことはたまにしかないんで。」 優の母「だったら、優もいっしょに連れて帰ってくれればよかったのに」 あけみ「は?」 優の母「東京いるんでしょ。優も埼玉にいるのよ。教えとけばよかったね」 あけみ「そうなんですか。知らなかった。」 優の母「あんたたちは仲よかったからね。昔はよくうちにも遊びに来てたがね」 あけみ「そうですね。お世話になりました(^-^)」 優の母「またおいでよ。顔をみせてよ。あけみちゃん」 あけみ「そうですね。また時間があったら行きますよ。でも、あさってには 帰らないといかんし。」 優の母「そうなの。じゃ、今度帰ったときにでも、きなさいよ。」 あけみ「はい。お母さんといっしょに行きますよ。」 あけみ「優ちゃんにも、会ってみたいな。久しぶりに」 優の母「うん、会ってあげて。よろこぶから」 あけみ「電話番号とか教えてもらっていいですか」 近くにあったちらしと、ペンを持ち、 あけみ「いいですよ」 インクのかすれた古いペンで、ちらしの裏に電話番号を書きはじめた。 優の母「竹下...だからね。」 あけみ「あ、結婚したんですか。竹下になったんだ」 優の母「そう。あけみちゃんはまだね?」 あけみ「なかなか出会いがなくって」 優の母「まぁ、あせらずにゆっくり決めればいいが。優なんか20で 結婚したもん。早く見つけてもいいとは限らんからね(^-^)」 その言葉に、なんとなく優の現状を悟ってしまった。 別の画面。 観光名所がたくさん出てくる。親や有人とドライブや食事を楽しんでいる シーン。 家族とのシーンなど。 そして、空港で別れのシーン。 飛行機で窓を眺めるシーン。 音楽だけで、台詞なし。 夏休みも終わり、また日常へと戻っていた。 仕事帰りの駅のホームで、また、メールチェックするあけみがいた。 「そうだ、週末の夜にでも、電話してみようかな」 連絡先を教えてもらってからというもの、なんとなくかけずらい日々が 続いていた。 日常のシーン。地下鉄、ホーム、コンビニなどの淡々とした映像が流れる。
.....つつく