概要

ユーティリティに富むRVや経済性、嗜好性を凝らしたコンパクトカー、対してスポーツカー、セダンは まだ氷河期ともいえる。その中にあって、あえて登場するセダンやスポーツカーはスタイルだけでなく走る 楽しさ、こだわりを強めている。車本来の走る、曲がる、止まるを最もバランスよくまたは、最も卓越する カテゴリーだけに車好きには要注目のカテゴリーだ。中途半端に名前だけでユーティリティや話題性だけで 選んではないだろうか?ここに世界戦略車という役割も背負った一台の実力車が登場した。以前から話題多 き車で、自然と期待も膨らんでいた。名前は”アテンザ”。メーカーの努力もすさまじく洗練されたスタイ ル、高アベレージの走行性、ちょっとした工夫のユーティリティ、選べるバリエーション。決して一方向か らだけで判断してはいけない”アテンザ”を紹介しよう。


外観

アテンザには、セダン、5ドア、ワゴンの3バリエーションが用意されている。”アテンザ”という素材を ユーザーの生活スタイルに合わせてチョイスできるわけだ。共通は、マツダのイメージであるペンタゴン( 五角形)グリル、シャープで切れ味のあるスポティーなフロントと、流れるようにつながるテールへの処理、 クリアの中に光る丸いテールランプに現れている。
最もアテンザの個性を味わえるのが5ドア。日本では、なかなかなじみの薄いボディスタイルではあるがこ こではクーペの5ドア版と思っていただければイメージもつかみやすいのではないか。実際、フロントから リアにみてもそのままクーペにしてもよい均整のとれたトータルバランスのよいスタイリングをしている。 無駄のない自然なボディラインと走ることを意識させるような、丸型ヘッドランプを内蔵したユニットとク リア処理されたテールランプユニット。フロントのオーバーハングを短めにしワイドなタイヤ(23S)で 武装したいかにもフットワークの利きそうな足回り。フロント、リアバンパーともにエアロチックにエッジ を設けてエアダム化し、サイドアンダースポイラーでアンダー部の空気抵抗もコントロールするなど。パ ーソナル5ドアとしての位置を確立している完成度の高いデザインだ。

ATENZA SPORTS FRONT

アテンザ スポーツ 20F・フロント部

ATENZA  SPORTS REAR

アテンザ スポーツ 20F・リア部


ボディカラー:シルバーコントレイルメタリック

続いてはセダン。といってもアテンザの性格上スポーティなデザインには違いないが、その中にあってコン フォートに仕上げているのが特徴。よって、”スポーツ”のようにエアロ調のバンパーもサイドアンダース ポイラーも装着されない。無論オプション設定はされているので、スポーツセダンを強調したいユーザーに もちゃんと対応できるよう配慮されている。どこにでも出せる万能型だ。

ATENZA SEDAN FRONT

アテンザ セダン 23Eラグジュアリーパッケージ・フロント部

ATENZA SEDAN REAR

アテンザ セダン 23Eラグジュアリーパッケージ・リア部


ボディカラー:ブルーパシフィックマイカ


装備

計器は、シルバーリングで飾られたアナログ2連式。自発光式のブラックアウトメーターは”スポーツ”2 3S、”セダン”23Eラグジュアリーパッケージに装備され、以外のグレードは標準式だ。自発光式のイ グニションON時、標準メーターの点灯時はいずれもオレンジ(アンバー)照明でスポーティな演出で、夜 間の走行も楽しい。文字ははっきりしていて見やすい。

METER PANEL 20F

”スポーツ”20Fのメーター

METER PANEL 23E Luxury Package

”セダン”23Eラグジュアリーパッケージのメーター

今回驚いたのがことのほか内装の仕上がり、質感のレベルが高い。継ぎ目の処理は自然で、樹脂のインパネ 、ダッシュなどはプラスチッキーな印象をあまり与えない。
インパネ、ダッシュボードは手前になだらかな曲面でインパネも同様の面処理を施し、全体的にも一体感の あるデザイン。中央の3連式のエアコン送風口のダッシュボードなどに使われるダークカラーはシフトまで 続くチタン調のインパネにアクセントを与えている。

IN.PANE.

すっきり洗練感の高いインパネ周り

オーディオ関係は、”スポーツ”は全車AM/FM電子チューナー+4スピーカーのベースのみが標準とな り、CDなどはオプション設定。メーカーオプションは、3通り用意され、インダッシュ6連奏CDチェン ジャーキット、BOSEサウンドシステム+サブウーファー付7スピーカー、DVDナビシステム(マツダ テレマティックス対応)で、当然、ディーラオプションも設定され、予算好みで選択可能だ。
”セダン”はコンフォート志向が強いので、ベースの20FのみAM/FM電子チューナー+4スピーカー が装着される以外は、20CにはCDキットが標準、23E、23E Luxury Packageには、 インダッシュ6連奏CDチェンジャーキットが標準装備される。また、23E Luxury Packa geにはDVDナビが標準装備されなかなかの充実内容。BOSEサウンドは20F以外のオプション設定 となっている。

CENTER CONTHOLE

センターコンソール:オーディオ&ATシフト(スポーツ 20F)

内装色は、”スポーツ”はブラック。但し、シートは23Sのみシート座面と背もたれの部分に一部シルバー レザーを採用して、ステアリングのツートンとコーディネートし、洗練度を増している。
”セダン”は基本はブラックとグレーのツートン仕様。シートはグレー。但し、23Eのラグジュアリーパッ ケージのみ内装はブラウンとベージュ、シートはブラウンを採用し、”セダン”の位置付けで落ち着きとコン フォート性をさりげなく出している。
シートはいずれも人間工学に基づいた設計により作られており、通常の自然なすわり心地とスポーティな走 行にも絶えられるホールド性に優れ、快適なドライビングを約束してくれる安心感のあるものを採用してい る。

SHEET FRONT

フロントシート部:写真は、”スポーツ”20F

SHEET FRONT

フロントシート部:写真は、”セダン”23Eラグジュアリーパッケージ

室内ユーティリティは、ラゲージスペース効率を有効に生かすべく開発された6:4可倒式リアシート。特 に、”スポーツ”で採用されたKARAKURIフォールドはリアシート背もたれを倒すときに座面も同時 に沈み込みラゲージの底面とフラットにする機構で、ラゲージからもワンタッチで可倒できるレバー付で使 い勝手も上々。”セダン”もKARAKURIフォールドではないもののラゲージ底面とはフラットでワン タッチ可倒レバーは採用する。このあたりはRV車と比べ限られた空間をいかに有効に使えるかの努力と提 案は窺えるし、恩恵にあずかれるだろう。

LUGGAGE1

”スポーツ”20Fのラゲージルーム:片側リアシート可倒状態

”セダン”は更にラゲージルームの有効活用に余念がない。トランクを開けて気づくのがヒンジ、ダンパー が両脇の溝内にあること。これにより、従来のヒンジの干渉を気にせずラゲージスペース効率を最大限に生 かし、荷物を積むことができる。また、ダンパーにて補助もしているので開け閉めはいたってスムーズで質 感も良好。

LUGGAGE2

トランク ヒンジ部:23Eラグジュアリーパッケージ

LUGGAGE3

ラゲージスペース:23Eラグジュアリーパッケージ

安全装備でも余念がない。ボディ剛性にしてもそう、操縦安定性、乗り心地、静粛性に徹底的にこだわりこ れを実現。決して目で見られるものではないものの、乗って実際に運転してみると何かさりげないよさを感 じられるだろう。マツダが提唱するフロア、ボディ、ルーフのH構造を組み合わせたトリプルH構造の高剛 性キャビンは健在。また、側面衝突、後面衝突対策で更に強化している。
搭乗者を衝撃から守るデュアルエアバッグ、カーテン&フロントサイドエアバッグ(全車にメーカーオプシ ョン)。プリテンショナー&ロードリミッター機構付フロントシートベルト、頸部衝撃緩和フロントシート、 衝撃吸収ソフトインテリア、前面衝突時の足元スペースブレーキペダル侵入を抑え、下肢へのダメージを軽 減する機構であるクラッシャブルブレーキペダルなど。
又、車両コントロールをサポートするダイナミクス・スタビリティ・コントロール(DSC:2.3L車に メーカーオプション)、4W−ABS(アンチロックブレーキシステム)+EBD(電子制動力配分制御) 、電子制御ブレーキアシスト(2.3L車にDSCとセットでメーカーオプション)などクラスでも充実内 容。意気込みが窺える。


車種構成

搭載エンジンはエントリーの2.0Lと主力になる可変バルブ搭載の2.3L。いずれもDOHCの直列4 気筒だ。2.0Lと2.3Lで大きな差別化がおこなわれているのはATで、2.0Lは通常の4速のEC −AT、2.3Lにはアクティブマチック仕様のゲート式4速EC−ATとなる。今のところMTの設定は なく、駆動方式も全車FFである。
グレードは、はじめに排気量を選ぶときが最もアテンザに対する思いが現れるところであとは装備の差と思 ってもいいだろう。充実内容とアテンザらしいのは、やはり2.3Lか。しかし、2.0Lも”アテンザ” を充分に味わえるので心配はご無用。


現車の感想

2.3Lのセダン、ラグジュアリーパッケージに試乗できたので紹介しよう。
スポーティイメージのアテンザから少し驚いたが、セダンで最上級のグレードであることからすぐに納得で きたのと同時に内装は、質感の高い、居心地のよさにはうならされた。そのつくりは、上級のミドルサルー ンにも引けを取らない空間だったからだ。窓から入る日差しと明るめのブラウンの内装は自然と気持ちも晴 れてくるようで、”ちょっと、遠くまで”行きたくなる気分だ。エンジンをかけると音もうまくカバーして あり、静かだ。走り出すとことのほか軽快で、1780mmの幅を感じさせないくらいステアリングの応答 性も良く、ブレーキフィーリングも初期制動重視で、安心できる容量のものだった。初期制動重視のブレー キには踏み初めから”くっ”とくるフィーリングに戸惑いを覚える人もいるとは思うが、慣れで解決できる レベル。又、ブレーキ容量はこれに慣れてしまうと他では容量的に不安を覚える車も出てくるであろうなか なかのもの。全体的にこの2.3Lのセダンはコンフォートな乗り味であるが、ところどころスポーツ心が のぞかせている。長距離ではことのほか力を発揮し、高速は無論、峠などでも上々のドライブを約束してく れるだろう。これはおせじではなく、”いい車”だ。


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