海労ネットニュース第5号  (2001年6月1日発行)

日本人船員・日本籍船減少続く
     産別統一賃金・統一協約の危機

  発足して1年ばかりで森内閣が崩壊し、新たに発足した小泉内閣への支持率が急速に上昇しているが、一方、憲法改正や有事法制制定、靖国神社公式参拝などタカ派的な主張が声高に語られ、一層の右傾化が心配されている。また、聖域なき構造改革は中身が不透明で、緊急課題の景気回復対策は、不良債権処理のための銀行支援や借金棒引きのゼネコン支援で、結果して福祉の切下げや失業者増大など、国民に痛みを負わせるだけに終わる心配が大きい。

  外航海運では、大手企業が史上最高の収益を上げていると言われる中で、日本籍船も日本人船員も減少を続け、旧外航2団体の配乗船腹数は289隻、うち日本箱船は112隻だがフル配乗船は僅か4隻である。
  また、所属船員は3,198名で、このうち部員は580名、平均年齢50.3歳だが、50歳以上の割合は63%である。従って、日本商船隊はごく近い将来、オール混乗船からオール外国籍船になりそうだが、部員が消滅するのは、それよりもっと早いかも知れない。

  外航の危機的状況は、日本船員や日本籍船の危機と共に、産別の危機につながっている昨年外航の春闘は、ペアゼロ、定昇のみで終わったが、外労協14社中7社で、本人基本給500円の賃上げが行われた。そして今年の1月1日から、外航労務協会が解散し、代わりに日本船主協会・外航労務部会が労使交渉に当たるこになった。
  今年の外航交渉で船主は、最低基本給制度を廃止し、新たに最低賃金を創設することを提案した。この最低賃金は出発点を決めるだけで、後は体系や諸手当などすべて各社で決めるというものであった。また、賃上げ要求に対しては「ツーゼロ」を回答したため交渉が難航し、結果的にはペア200円で妥結した。

  協約失効後組合は、中央交渉妥結以前に各社個別交渉に入るという異例の戦術を取ったそして日本郵船の本人基本給と年間臨手が妥結し、他社は4月25日の中央交渉の妥結以後に決着した。
  中央交渉の結果は、ペアと引換えに「本人基本給交渉は、最低基本給の改定内容に関わらず、各社自主的に交渉し、決定することができる」と取り決められた。つまり船主は、「最低基本給」制度そのものを廃止し、本人基本給は全て各社交渉で決めるという、産業別統一賃金を制度的に廃止する狙いを具体的に実現しつつある。従って今後の労使協議の成り行きによっては、日本で唯一の産業別統一賃金制度・統一協約の崩壊を迎えることになりかねない

3回定期総会告示
  海上労働ネットワーク

 規約の定めに従い、第3回定期総会を左記により開催いたします。
        記
日 時  01年7月12日14時
場 所  浜松町海員会館会議室
議 題  第2年度活動・決算報告
       第3年度方針案・予算案
       役員選任その他
会員・非会員をとわず奮って総会にご参加下さい。

賃上げ200円=2001海員春闘
各社交渉先行は英断か? 統一協約崩壊への道か? 

  海員組合の産別賃金制度が危機に直面している。今年の海員春闘の外航交渉で船主は、「最低基本給制度を廃止し、新たな最低賃金の創設」を提案した。これは組合の反発によって、春闘後に協議会で検討することになり、最終的には「最低基本給ベ・ア200円」で妥結したが、今後の協議会の進展次第では、産別賃金制度が崩壊しかねない状況となった。

  今年の海員組合の外航の春闘要求は、標準船員のベースアップ7,700円(2.65%)と、船内福利厚生の改善のためのITの活用とであった。また、本人基本給は従来通り、最低基本給アップを下回らないよう、各社交渉とすることとし、年間臨手についても、賃上げと同時決着を目ざすことにしていた。
  一方船主側の提案は、最低賃金制度を廃止、最低賃金を14万300円とし、後はすべて各社個別交渉で決める。組合の賃上げ要求については、加盟各社の事情を考慮すれば、経歴加給には応じられないとして「ツーゼロ」を回答した。

  組合は経歴加給を実施しないのは協約違反と追及し、船主側は「再検討したがツーゼロと言わざるをえない。経歴加給をしなくても協約違反と考えない」と回答。交渉は決裂状態となったが、期限内交渉で経歴加給は認めたものの、ペアゼロの回答は撤回しないまま協約は失効した。
  そのため組合は、中央交渉妥結以前に、本人基本給の各社交渉や旧中小労会社の個別交渉をに入る、という異例の方針転換を行った。

  協約失効後の各社交渉は、4月6日に日本郵船が本人基本給アップ500円(昨年同額)と、年間臨手64.1割(昨年比3.8割増)で妥結、その他は中央交渉妥結後に決着した。また、外航とは対照的に業績悪化に苦しむ中でも内航はベア340円、カーフユリー380円、中田国旅客船は600円のペアを獲得した。
  大手企業が史上最高の増収増益と言われる中で行われた今年の外航交渉は、昨年来の船主の産別統一賃金、産別統一協約の解体を狙う攻勢が功を奏した形だ。また船主側は、今年1月に外航労務協会を解散させ、日本船主協会・外航労務部会を新たに設けて、体制を整えてきたといえる。そのため、内航やカーフユリーよりペア額が低いなどの問題を超えて、日本の海上労働における賃金制度の中心となってきた、外航の産別統一賃金の存続が大きな危機を迎えるたということである。

  昨年の外航の海員春闘は、企業間格差の増大などを理由にペアゼロで提唱の増大などを理由にベアゼロで定昇のみ、外労協配当会祉7社で500円の本人基本給アップが行われた。そのため、配当会社でさえたった500円の本人基本給アップに留まったが、それでもペア・ゼロの最低基本給と、各社交渉の本人基本給の格差が拡大され、横断的な産別統一賃金の崩壊を招くことになると心配されていた。

  今年はさらに200円のペアと引替えに、「本人基本給は最低基本給の改定内容に関わらず、各社自主的に交渉し、決定することができる」と、協約115条が実質改悪されたため、本人基本給適用会社では最低基本給の改定額さえ保障されない、賃下げも可能な制度が実現したことになる。事実、A社は去年と今年500円ずつ賃上げされたが、B社では2年ともゼロで、最低基本給の増額とも無関係になる。これは一つには船団離脱(労務部会脱退)を避けるためと組合は弁解しているが、これを認めれば賃金格差拡大、統一協約崩壊への道を進むことになる。

  また船主提案では、最低賃金の14万300円以外は、賃金体系も諸手当も、すべて各社交渉で決めるという、産別賃金制度、産別協約の解体を露骨に提案して来ている。この船主提案は、従来の賃金の体系や水準など、その歴史的な経緯を無視し、船員の既得権を奪うものである。
  つまり、各社交渉で個別の業績や、企業内の力関係だけで賃金が決められれば、その次は当然、個人の能力や労働の成果が問われることとなり、賃金制度が企業への従属を強制するものとなりかねない。またこれは、企業間だけでなく個人間の競争をも激化させ、労働者の団結を破壊する恐れがあり、到底近代的な労働者の賃金制度ではない。そういう意味を含めて、今後の労使の賃金に関する協議は、産別にとって極めて重要な意味を持つものとなっている。(S)

国際船舶制度に希望はあるか 
   海員組合は昨年の大会で、「国際船舶制度を最後の海運・船員政策として、その目的が達成されるよう最大限の努力を傾注する」方針を決め、具体的には6項目の目標を、可能なところから一つづつ実現させるために努力していくと言っている。6項目の中ですでに実現したのは船舶税制だけであるが、昨今は国際船舶制度そのものの、影が薄くなったように感じられる。

  国際船舶制度で船舶税制の恩恵の受けられる日本籍船は、その後も減少が続いていていて、昨年末には旧2団体で112隻にまで減少、そのうちフル配乗船はたったの4隻になってしまったから、近いうちに日本籍船が100%国際船舶になり、オール混乗になっても、その次に来るのはオール外国籍の日本商船隊ということかも知れない。

  2際船舶制度に関連して、外国人承認船員制度が設けられたが、船機長2名船は3隻が実現しただけである。船主側が新たに承認船員100名を要請しているという話も聞くが、
仮に50隻の国際船舶に日本人船機長のほか、航機士6名の承認船員を乗せるとすれば、150名の承認船員が必要である。船主の希望は登録船舶を増やし、船機長2名船を増やすから、承認船員も増やせということなのか、その辺は不明である。

  日本人船員確保のための若年船員教育訓練プロジェクトは、第1期生終了者10名のうち6名が就職出来たようだが、国際船舶を保有する外航会社への就職はゼロで、第2期生の就職も保証されている訳ではない。教育訓練に毎回訓練生が予定の定員まで集まらないなどの問題もあり、この教育訓練プロジェクトそのものが危機にさらされている。                            
  国際船舶制度では日本籍船・日本人船員の維持・確保を目標に掲げたが、この制度が広がれば、その目標に近づくことが出来るのか。例えば国際船舶登録船が増えれば日本人船員の減少がストップ出来るか。海員組合は国際船舶への移行を、新造船や買戻し船に限定しているが、支配外国船(FOC)を買戻しても、5名配乗が船機長2名に変わるのなら、日本人船員が減るだけである。外国人承認船員を増加させれば、日本人船員の維持・確保が可能だなどと考える人はおるまい。それは若年船員養成にしても船員減税にしても同じことである また、国際船舶の船機長2名船が増えないこと、若年船員教育訓練プロジェクトの要員を外航会社が採用しないことを考え合わせると、日本の船主に国際船舶制度を推進しようという意志があるとは思えない。むしろ船主が狙っているのは、支配外国船への日本人船機長2名体制の拡大であって、結果的には日本人船員をいかに少なくするかである。
  だとすると海員組合は、国際船舶制度を卒業して、新たな対策を考えなければ、組合員がひどい目にあうだけで終わるのではないか。(K)
     
外航2団体等在籍船員数・配乗船員数・配乗船舶数

年度 船            員 船              舶 外国人
船員数
在 籍
船員数
配乗船員合計 日本
船籍
外国
船籍
配乗船合計
FULL 混乗 合計 FULL 混乗 合計
90 9,665 4,059 723 4,782 220 137 223 134 357 2,309
94 8,201 1,564 1,871 3,435 195 153 100 248 348 4,206
95 7,340 987 1,917 2,904 160 172 65 267 332 4,639
96 6,561 955 1,770 2,725 152 185 59 278 337 4,953
97 5,897 701 1,809 2,510 146 192 47 291 338 5,145
98 5,007 618 1,759 2,377 143 194 44 293 337 5,127
99 4,469 332 1,648 1,980 124 199 20 303 323 5,462
00 5,992 66 1,692 1,757 112 177 4 285 289 5,675

フィリピンクルーの要求
   「組合費の二重取りは汚い。組合運営のためというピンハネだ、やめて欲しい。」
     「現在、AMOSUPに五〇ドル、JSUに四〇ドル。JSUの船に二年間乗らないときは、四〇ドルは返還されるという条件だが、今は船員不足だから、NYKPILL登録している限り乗船口はあるので、二年間JSUでない船ということはありえず、結局九〇ドル取られいてる。日本人の組合費より高い、こんなに高い組合費、ほかにあるか。」(M)

米軍の横暴が招いた事故
漁業実習船「えひめ丸」の沈没

 今年2月9日、ハワイ・オアフ島沖で愛媛県の漁業実習船「えひめ丸」が、民間人を乗せて体験航海をしていた米海軍原子力潜水艦「グリーンビル」に衝突され沈没、実習生ら9名が行方不明になっている事件は、日本中に大きな衝撃を与えた。

  私たちは船員の立場から、この事件にも強い関心を持って見守ってきたが、事故に関する米側の発表が、日時の経過とともに二転三転し、艦長や米海軍の言動が事故かくしや責任のがれと受け取れることから、森首相の対処や米国追随の日本政府の対応とともに、国民のあいだに大きな怒りが広がったことは当然と思っている。
  事故の実態は今日までの報道から判断すると、グリーンビルが体験航海の民間人に、舵や操縦装置を握らせ、高速で上下・左右に蛇行や急旋回を繰返し緊急浮上するなど、民間人へのサービスを優先させ安全確認がおろそかになっていたためで、明らかに人災である。

  海上を航行する船舶は、海上衝突予防法などのルールに基づいて運航される。通常の船舶は、ルールに基づいた資格や経験を持った人たちの当直体制によって運航される。
  海の中を航行するためのルールは存在しないから、グリーンビルのように海中で暴走行為を繰返し、緊急浮上してもルール違反ではないと言うかもしれない。しかし、海上を航行する船舶には、それを避ける対抗手段がないから、このような無謀な行動は不法・無法と言う外はない。

  艦長席近くのソナーのモニターが故障していた、潜望鏡の監視時間が短かった、司令室は民間人で満員で艦長への報告や記録の伝達ができなかった、などとも報道された。
  機器が故障していたり、情報把握や報告が適正に行われない中では、民間人の運転や高速での蛇行をやめさせ、慎重に運航するのが常識であろう。
ワドル艦長は名誉除隊に

  米海軍は98年以降、衝突事故が増加傾向にあることを憂慮していたというが、現場の技術レベルの低下や、内部規律のたるみが招いた事故の可能性が極めて高い。
  この事故に関してファーゴ米太平洋艦隊司令官が4月23日、衝突事故と艦長の処分について声明を発表した。その内容は、衝突原因はグリーンビルの完全な落ち度によるもので、海軍の規則や手順を守っていれば防ぐことができた。ワドル艦長は米軍事司法法典の職務遂行の怠慢、怠慢により艦を危険にさらす行為に違反した。処罰として給与の半額を二カ月間没収し、艦長を解任する。乗船民間人が衝突の原因になったことはない。などというもの。

  この処分によりワドル艦長は、軍法会議にかけられることなく、名誉徐隊になる見通しという。しかしこれで、事故原因の究明や責任の明確化に終止符が打たれたり、行方不明者の捜索や船体引揚げを取りやめることなど、絶対許されない。

標的にされた日昇丸
    1981年4月9日、鹿児島県甑島西南西70キロ付近で、米ボラリス型原子力潜水艦「ジョージ・ワシントン」が「日昇丸」を沈没させた事件は、「水上艦船の襲撃訓練中、誤って衝突した」と報道された。
  この事故で日昇丸の乗組員13人は、20時間後に日本の自衛艦に救助された。米軍から日本政府に通報があったのは、事故の35時間後であった。
  乗組員は、潜水艦は乗組員を助けようともしなかった。事故当時潜水艦は本船の下にもぐって、飛行機から発見されない訓練をしていた。自衛艦は米軍の通報で我々を監視していたようだ。自衛艦内の事情聴取で、事故を起こした潜水艦の形を、旧式の潜水艦だったと証言を誘導しようとしたなど、自衛艦の態度には不審な点が多かった。などと語った。

  日本政府は領海外の事故として米軍の調査を見守るという態度をとった。
  行方不明になっていた船長と一等航海士は、事故の13日後に発見されたが、発見した漁師も驚くほど遺体がきれいな状態であったなど、疑念の多い事件であった。私たちは乗組員とともに、事故の真相究明と再発防止、遭難船員への補備などの要求をまとめ、運輸大臣に申入れを行ったが、事件の真相は今日まで解明されていない。

  平和と海上航行の安全、事故の再発防止のためには、事故を繰り返している原子力潜水艦や軍艦を無くすることが最善だが、原潜や軍艦といえども海上航行時は一般のルールを遵守し、ことに緊急浮上訓練などは航路筋を外し、訓練海域と日時を明確にし、航行警報により付近航行船に周知するなど、最低でもこうした安全義務を負わせるべきである。(S)

「組合員のための組合」が原点=海組の組合費値上げ問題
   海員組合は組合費の値上げについて、従来の基本給の2%プラス1,000円(最高限度額8,000円)を、2%プラス2,500円(同10,000円)にする「組合費徴収基準の見直し」案を決定。1年間の大衆討議を経て、2001年の定期全国大会に提案し、蕃認されれば翌年の4月1日から実施することとしている。

  海員組合の組合費は、今年度予算案で1人平均月額が5,706円であるから、値上げになった場合単純に計算して、1,500円×組合員数分増えることになる。今年度の組合員数は35582人であるから約6億4千万円の増収で、今年度の大会予算の組合費約23億円が29億4千万円に増えることになる。また組合員個人は月額1,500円から2,000円の増額となる  組合費値上げは、組合員の減少で組合費収入が減少し、組織内の合理化や経費の節約を続けても、五年後には予備費がゼロになるという状況から、過去2年間にわたり財務委員会で検討が行われてきたが、当初から激しい抵抗にあい、昨年の大会でも絶対反対の強硬意見が多く述べられた。

  そのため海員組合は、マリコットの再建計画の策定や、支部事務所の縮小(27カ所閉鎖)、従業員と人件費の削減(178人、5億4千万円)、一般経費の節約(8億7千万円)を行ったという。更に今後、現在の29支部を24支部に、180人の執行体制を150人に削減するのだという。こうした組織内合理化や経費の削減を行っているにも関わらず、根強い反対意見があるのは何故か。

  組合員にとって組合の必要性は、組合の活動が組合員のためにどれだけ役立っているか、それが目に見えなければならないだろう。組織運営がいかにうまくいっても、組合員の役に立っていないと見られれば、組合は組合費を取るだけだという意見は無くならないだろう。まして組合費値上げが執行体制維持のためだと見られれば、組合員は賛成しないのではないか。

  いま組合員は、内航も外航も沿海も、船員職業に将来展望を欠いている。同時に組合員の意識から組合の存在の影が薄くなっている。ベアゼロ、仲間がどんどん減っていくことも、個々の組合員の意志に反して、どこか遠い見えないところで決められているように見える。組合と組合員の一体感が完全に失われている。
  従ってまず、今日の組合員と組合組織の現状に、組合はどんな役割を果たすのか、どんな責任があるのか、そのことを具体的に組合員の前に明らかにする必要があろう。
  組織体制の整備や経費節約も大事なことだが、それ以上に、組合員と組合の将来について、明確なビジョンを示し、その実現に向けてどう闘うのか。そして何よりも、「組合員のための労働組合」という原点にかえって、組合員と一体で闘う目標と姿勢を、明確に示す事が一番大切な事ではないだろうか。

外国人組合員も問題
    組合費問題にはもう一つ、非居住組合員の組合費問題がある。大会の会計報告では、組合費収入のうち38.4%15億円が、その他の組合費となっている。これは汽船部24.2%、水産部15.2%、沿海部24.2%のいずれよりも高い。
  このことは、組合財政が外国人組合員の組合費に依存する度合いが、極めて高いことを示している。
  しかしグローバル化その他による変化などで、実質船主国組合の労働協約締結の優先権が失われれば、この組合費は入ってこないという不安定性をもっている。
  また、外国人組合員の間に根強い不満を持たれている組合費の額の高さと二重払い(本国組合と実質船主国組合で日本人組合員より高い組合費)問題も、いずれ解決しなければならない問題で、組合費値上げと同様の重要問題ではなかろうか。(篠原)

争いやめ共存共栄、公正競争を
   
組織統制で、信頼は生まれない
                                               伴 野 昭 三
本四海峡バス問

海員組合が争議の前面に
  昨年3月海組は会社の株55%を取得、本社を関西地方支部に移転した上、坪根執行部員を専務に、井上元沿海・港湾選任部長を常務として送り込み、状況は新たな段階へ進んだ。会社に替わり海組が実質経営者として争議の矢面に立つ異常事態となった。そのため関西地方支部会館が全港湾とそれを支援する地域の労働者から抗議行動を受け、坪根・井上両氏が労働委員会や裁判に会社側役員として証人出席して弁明する状況にある。

  この結果として、争議対策にかかわる人件費、法廷費用、働かせてないにもかかわらず現在払い続けている3人への給料(神戸地裁仮処分決定)、仮に最高裁で負けた場合の処理費用、争議続行による営業悪化など、将来生じる可能性のある支出が組合負担になるとしたら、第二のマリコットになる恐れがある。
  昨年の大会で、こんなみっともない闘いをなぜここまでやるのか?の代議員の質問に本部は大略次のように答弁した。

  「本四バスは27年間関って創出した組合員のための職場。失業者がたくさんいる中での脱退は前線逃亡だ。前線逃亡は許さない。煽動者3人の除名(解雇)は正当。仮処分決定は誤りなので最高裁まで闘う」と、それがあたかも産別組織のケジメかの様である。
  報告・答弁等から分かったことは、運転手、整備士58人全員が、自らの意志で脱退したこと。海組全国動員オルグの復帰呼びかけにより、17名が復帰したが41名は全港湾を選択したこと。

  脱退理由は三つ。H9年の9.10闘争で組合がストライキをせず、些末妥協した。加算金等で低い離職条件を受け入れた。本四バスでの劣悪労働条件を組合が容認したこと。
    これらからすれば、脱退した理由は「単なる不平不満」では無く、組合運動の進め方をめぐる批判に組合が答えられなかった、もしくは説得出来なかったことが主因ではないのか。H9年11月の神戸大会で次々と湧き起こった架橋組合員の怒りの追及を議事運営技術でそらしていたことが印象深い。

裁判の焦点「ユ・シ制」
  解雇無効裁判、団交地位確認裁判(会社が団交に応じないため、労働組合=全港湾分会として団交できる地位にあることの確認請求)は去年1〜3月、いずれも全港湾側勝利の仮処分決定。会社が従わないため、現在神戸地裁で本訴が続いている。その焦点は「社内にユニオンショップ協定を結ぶただ一つの組合(海組)がある下で、組合を脱退した労働者が直ちに別の組合を創設(または加入)した場合、ユ・シ協定に基づいて会社が行なう解雇は有効か?」と単純化され、多数の最高裁判例として『解雇は無効』とされている。

  理由は「ユ・シ協定は、非組合員の存在により組合の団結権が侵害されるような場合は法的に有効だが、その効力の及ぶ範朗には限界がある。会社の強制等によらず、労働者自らの意志で脱退し他の組合を組織した場合は、個々の労働者に団結する自由が保障される。またその様にして出来た組合は組合員数の多少等によらず、他労組と同等の権利(団体交渉権等)が保障される」というもの。 この判例は多数の産業分野で御用組合と闘って得た労働運動の成果として定着している。

  海組は「判例は企業内組合の事例で本四バスには当てはまらない。会社設立の目的自身が架橋離職組合員の受け皿で、社員は海組組合員以外にありえない。海組組合員であることが社員であることの雇用契約条件になっている特殊会社だ」と言う。しかし、仮にこのような定款を持つ会社で、労働者が、入社後に当該組合は嫌で別の組合に入りたい意志をもった場合はどうなのか?定款、就業規則、労働協約等で規定されていても、法に違反する部分は無効であり、この場合は憲法28条(団結権)が適用される。

「最高裁まで闘う」ツケは
海組は全港湾に対し「最高裁まで闘う」と表明し、大会でも中西前組合長はその旨力説した。
  しかし、威勢の良い言葉とは裏腹に最高裁までに限定している。なぜ「最後まで闘う」と言わないのか?最高裁で負けた場合は『当方は正しかったが、最高裁が理解してくれなかった』と言い訳して収束させるつもりなのだろうか?

  また、仮に海組が勝ったとして、いったいどのような利益があるのだろうか?長期間にわたる「労・労戦争」に費やす不毛なエネルギーに見合うだけの何が得られるのか?なぜ会社になり代わり海組が裁判闘争の面倒を見なければならないのか?本四バス会社の面倒を組合が見ることをいつどこで機関決定したのか?3人は組合ではなく会社に対して解雇無効を訴えているのである。

  また、最高裁で負けた場合は、長期間の経費はいったい誰が払うのか?関西支部の賃料、坪根・井上両氏の給料、裁判費用等を会社はちゃんと支払っているのか?これらは後になって幹部が責任をとると言っても、取りきれるものでは無い。結局は組合員にしわ寄せされるのである。

和解し、共存共栄を!
この問題の本質は、全港湾による組織介入ではなく、組合員自らの意志で移ったことにある。
  それは、海組自ら『この職場に優先的に採用され恵まれた者が、架橋問題の本質を理解せず、採用内定時の労働条件を不満とし、海員組合にいても労働条件の改善は出来ないと組合員に吹聴してまわり脱退を促した。仲間意識の強い組合員55名は不満分子3名の意のままに行動を共にして、全港湾へ駆け込んだ』(大会・活動報告書)旨認めている。

  このことは移った当人からすれば『全部の行路がめちゃくちゃきつくなる、距離手当てが現在の半分になるなど凄まじい労働者いじめを、現場のほぽ全員が反対しているのに組合がすんなり了承してしまった。そういう組合が嫌で全員一致で全港湾に頼み込んで加入させてもらった』(全港湾本四海峡バス分会、かけはし6号)、『会社と癒着した海員組合では用をなさないと、みんなで決意して自分達のための組合を創ろうと、海員組合を脱退、組合と会社から本人はもとより家族に対しても繰り返された脅かしや嫌がらせ、癒着というより会社そのものになってしまった海員組合の姿』(同7号)と映る。本四バスがたとえ離職船員の職場として設立されたにしろ、その後の経過から海組に失望し全港湾に移ったにしろ、彼らが自ら判断した以上、その意志を尊重こそすれ、感情的に気に食わないからと解雇を望むことは労働者のとるべき態度ではない。

  相手が陸組であれ港湾労組であれ、競合する他労組に対する解雇や団交拒否を希む嫉妬心はど醜く、自らを傷つけるものは無い。労働組合が他の労働者や労組への不当労働行為を希求することを続ければ、やがては組合員の信頼を失い、組合運動にとってマイナスになることは目に見えている。太平洋汽船の竹中一等機関士に対する不当解雇を組合が放置し、不当労働行為を容認したことの組合員に与えた影響が組合幹部には分からないのだろうか。いざという時、組合が自分を守ってくれるかどうか、頼りになるか、組合員はいつもじっと見ているのである。

共闘こそ時代の要請
  規制緩和、グローバル化という名目で大資本のためのリストラ・合理化が押し寄せている。そうした中で港湾・海員の共闘の必要性は高まる一方である。本四バス組合員の利益のためにも、海組の将来のためにも、不毛な争いを止め、組織対象の競合する全港湾の存在を現実として認めなければならない。

  その上で、どちらが労働者の希望をかなえることができるか、前向きに堂々と競争をする時代に入って来ている。
  そして重要なことは、海員組合が本四海峡バス問題をタブー視することをやめ、組織の内外で徹底的に論議をたたかわせ、同時に架橋闘争を組合員の要求に基づき闘うことが出来たか?組合員と密着した職場委員や現場執行部の要求を本部の「政治的判断」で収束させることはなかったか?なぜ未だに多量の失業者がいるのか?架橋闘争全体の総括が必要な時が来たのだと思う。

  そうしたことに目をつぶり、組合方針を批判する元組合員に対して、現下の失業者の存在を対置して、「脱退した恵まれ者」と非難するのは労働組合としての衿持に欠ける。脱退した組合員はゴロつきでもなければ、昨日今日の組合員でもない。20年、30年と船員を続けてきた仲間なのである。
  いま必要なのは組織護持や幹部のメンツではなく、なぜ組合が求心力を失ってしまったのか?組合運営の根本論議を組合員から募り、旧態たる組織運営を解体することにある。
それを怠るなら第二、第三の本四バスが次々と起きてしまう状況にある。

浦田乾道氏ご逝去
  本会の理事で弁護士の浦田乾道氏は、昨年7月肺がんが発見され療養中のところ、本年4月19日に逝去されました。享年74歳。4月24日の通夜、25日の告別式には、船員関係や弁護士関係など多数が参加して盛大な葬儀が行われました。

  浦田弁護士には組合幹部リコール裁判以来、種々の船員労働問題などでご教示をいただき、多くの裁判の弁護をお願いして来た関係で、海上労働ネットワークでは花輪を供え、会員有志が参列してご冥福をお祈りしました。
【浦田乾道氏略歴】1926年朝鮮で生まれる。45年清水高等商船学校を卒業して船船運営会に所属、有馬山丸、V207号などに機関士として乗船、船内委員など労働運動に参加。56年弁護士となり、海員組合幹部リコール裁判、ぼりばあ丸遺族訴訟、太平洋汽船竹中一機士解雇撤回裁判その他、船員や家族の命と権利を守る裁判に取り組まれた。気取らない話し好きで、酒好きで、いつも多くの人に親しまれていた。

【海員組合幹部リコール裁判】
1965年(昭和40年)春闘(40年スト)の争議指導が独断・専横であったとして、現場組合員の怒りから「組合幹部リコール運動」が起こり、487隻11,422名の署名が集まった。海員組合はこれを阻止するため、責任者(東海運機関長・堀次清治氏)を統制処分(権利停止1年)にした。その処分撤回を求めた裁判は、1審が敗訴、2審では逆転勝訴し確定した(提訴67年八月12日、2審勝訴判決71年9月10日)。リコール請求された和田副組合長、金子汽船部長はその後辞職した。

【ぽりばあ丸六遺族の裁判】
69年1月5日、J・ラインの新鋭船ぼりばあ丸が野島崎沖で沈没、31名が行方不明に。原因と責任の究明、遺族補備の充実を求めて、71年2月22日、J・ライン、IHI、NKを相手に6遺族が提訴。海員組合は一部の不満分子の行動と批判(大会で組合長発言)したが、72年に残りの22遺族を組織して提訴した。81年1月31日和解が成立、被告側が和解金2億5千万円を支払い、文書で遺憾の意を表し再発防止に努力を表明した。別件も後日ほぼ同内容で和解した。

【竹中正陽君の解雇撤回裁判】
 緊急雇用対策の中で太平洋汽船は強引な首きりを始めた。竹中君らは「船員やめない会」を作り、組合と連絡しながら退職強要を摘発し、会社は組合に謝罪。会社は竹中君を乗船させず、海員組合との協議中一方的に解雇。竹中君が不当労働行為として船地労委に救済を申立て(91年6月)たが、組合は不当解雇だが不当労働行為か否か分からないとして支援せず。
  94年11月、船地労委が船労委史上初の解雇撤回・原職復帰の救済命令。海員組合に会社との交渉を要請したが、組合は原職復帰を確約せず、逆に全権白紙委任を求めたため物別れに。98年5月船中労委が完全勝利の救済命令。会社は船中労委の命令取消しの裁判を提起したが、99年1月に訴訟を取下げ、船中労委命令が確定。竹中側完全勝利の和解が成立し、同君は原職復帰した。

編  集  後  記
  海上労働ネットワークが発足して丸2年が経過しました。第2年度の活動方針では、ニュースの発行について、編集委員会を設置して年4回定期発行、内容の充実を目指したのですが、結果的には今になってようやく第5号の発行ということです。
  その他のインターネットの充実やシンポジウム開催の活動目標も、手を掛けてみたものの、全く成果が上がっていません。もう一度立て直しのための検討が必要です。
  本紙前号記載のマリテックマネージメントは、計画発表から半年もしない2月15日会社が解散、船も船員も計画通り配分されたようです。

  旧中小労は船団解散以来会社数が半減、船員も1/3にまで減り、会社も船員も半年先どうなるか分からない。親会社の言いなりで文句も言えない様では救いがありません。
  外労協を95年に脱退した東京船舶の船員16名は、海員組合を脱退して陸組に加入したと伝えられています。船主は賃金交渉での自社自決を主張しましたが、同社の船員はどんな理由で脱退を決めたのか、海員組合はどのように考え、どう対応するのか注目しています。
(篠原)