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宮内庁式部職楽部 雅楽演奏会その4

今回、宮内庁式部職樂部の雅楽演奏曲目は管弦・太食調で仙遊霞・庶人三臺・輪鼓褌。舞楽は左舞青海波、右舞・貴徳急・蘇利古でした

波に遊ぶ千鳥

今回の管弦演奏は太食調の仙遊霞、庶人三臺、輪鼓褌の3曲です。この太食調はお稽古で吹いた事はあったのですが、雅楽会では滅多に使わない調なので勉強になりました。特に輪鼓褌の拍子は4分の2と4分の4の混合拍子で構成されているので、上手く演奏すれば軽快なリズムになりますが、それゆえ演奏するのが難しいのだそうです。しかしこのような混合拍子の曲を聴くと、雅楽が西洋にはない日本独自の音楽だという事を実感させられます。(とパンフレットに書いてました、、、)

舞楽の青海波は二人舞で、名前の通り寄る波と引く波を表現した振りが数多く見られます。装束は絢爛豪華な物で、袍には波の模様と百羽あまりの千鳥の刺繍が施されています。舞人が左に右に揺れる様はなんとも心地よく感じられ、舞人が動くと袍も揺れ波に遊ぶ千鳥の光景が広がります。この舞は『源氏物語』の『紅葉賀』の章で、源氏と頭の中将が紅葉をバックに舞う場面で有名です。これに習い、青海波は紅葉盛りの庭で舞われるのが一番ふさわしいとされています。是非紅々と色付いた、秋めいた庭でこの優雅な舞を見てみたいものです。平安貴族の優雅な生活が垣間見れそうですね。ホゥ……、考えただけでため息です。。。

貴徳急は一人舞で、【漢の宣帝時代に匈国が攻めてきたのを、貴徳候に封ぜられた】という故事を元に日本で付けられた名前だと考えられています。この舞は走舞(ちなみに青海破は【平舞】)と言われ、鉾を手に持ち勇ましく躍動感溢れる様子は見ている者を飽きさせません。私は右舞ではこの貴徳急が一番好きです。舞人が身に付ける装束や面の全体の雰囲気がいいな。ひょろっとした背の高い人が舞ってくれるとなんか心がウキウキします。

舞人が付ける面は鼻が高くて目も大きく、色が白い所など異国情緒に溢れています。また、この舞で使用される面はどこか中央アジア人の面影を残していているので、舞人は背の高い細身の人間が選ばれる事が多いらしいです。この貴徳急が属する右舞とは、西はローマ、東は朝鮮半島までの西洋と東洋の要素が複雑に絡み合った物を日本風にアレンジした舞です。特に貴徳急はこのような事柄を強く感じさせてくれますね。(←この段は本からの抜粋)

蘇利古で印象的だったのは、舞人が出て来た時に館内がざわめいたと言う事…。その理由は下の雑面と言われるこの面にお客さんが反応したからでしょうね。ジブリ・宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』で雑面を付けたキャラクターがいて、そのキャラクターが頭に浮かんだから?宮崎駿監督がこの雑面を参考にしたかは知りませんが…。なんとなくチャーミングなこのお面は長方形の紙製で模様は人間の顔を抽象化したものとの事。

舞人は雑面を付け白楚と呼ばれる撥を持ちます。『竈祭舞かまどまつりまい』とも呼ばれるこの舞は通常4人舞で舞われますが、大阪の四天王寺では特別に5人で舞われるとパンフレットに説明されていました。なぜ四天王寺だけ5人で舞うのかは先生も知らないとの事でしたが、あの狭い空間で5人で舞うと狭くないのかな?

雑面がチャーミングな蘇利古   ほっぺたの三巴が可愛い!

(写真・東京書院『雅楽壱具』より抜粋)

今回の演目はそれぞれがとても個性的で印象深い物でした。秋の季節にピッタリの青海破、異国情緒が漂う貴徳急、雑面が可愛らしい蘇利古。。。どれも私の好奇心を刺激する舞でしたよ。

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