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秋思祭

今年の中秋の名月は9月25日でしたね。各地の神社などでは、満月の月を鑑賞する観月会が行われたようですね。
私は、中秋の名月の日、大阪天満宮さんの秋思祭に行ってきました。

しっとりした、いかにも秋にピッタリなネーミングやと思いません?秋思祭、なんて素敵。この秋思祭は、菅原道真
が、平安時代昌泰三(900)年九月十日、宮中の清涼殿において、重陽後朝の宴が開かれた席にて、菅原道真公は
「秋思」の勅題を賜わり、太宰府の配所で宮中の中秋の宴を偲び、「去年今夜侍清涼」の詩を詠んだという故事に、
ちなむ祭りです。菅公を追慕し、まつる神事として天満宮で、執り行われます。

中秋の名月に、大都会の真中でビルに囲まれた天神さんで、夕刻から行われた秋思祭は、たいまつと行灯だけの灯りの下で
御神楽が厳かに菅公に奉納され幻想的 な雰囲気に包まれました。
神事は夜、18時頃から始まり、月の光とともに篝火の下で、
21時頃まで
執り行われます。まず始めに、神童がご神前に鈴虫を、お供えします。やはり秋の神事には、鈴虫なんですね。
秋になると鈴虫君、大活躍?!

引き続いて、献華、献香、献茶や御神楽・人長舞などの、奉納されます。秋の涼やかな宴には、御神楽が似合いますね〜。
18時半頃から呈茶券が配られると聞いたので、式を途中で抜け出してお茶もらおうと思ってたんですが、
抜け出す機会を逸してしまいいけませんでした、残念です。

門前には繁昌亭(落語の寄席)0神前0
神前立花0奉納された鈴虫と秋の七草

前後しますが、庭燎点火の写真。宮中では御神楽の儀の際、庭燎を焚き夕刻に天皇の出御とともに、神楽が開始されるそうです。
この庭燎の番である司人は、この時点からずーっと御神楽の儀が終わるまで、正座。神職さんとは言え、火の近くで熱いし、お疲れ様です。

神前から神聖な火をもらう0庭燎点火前0庭燎点火後

 ― 御神楽之儀 ―

秋恩祭で奉納される『御神楽みかぐら』は、宮中賢所・皇霊殿の前庭で行われる人長舞と神楽歌からなる式の事。
宮中以外で演じられるのは大変珍しい。ただし、宮中の御神楽は正式で約7時間かかると言われているのに対して、
秋恩祭では略式で行われます。略式でも、神が降りてくる為の神聖な儀式に変わりはありません。
初め見て思った事、それは 
日本の文化ってやっぱりいいですね、の一言に尽きます。

御神楽之儀…関西雅楽松風会

人長と所作人と楽師参進。御神楽の儀を統率する人長は、白い布を巻いた藤の輪を付けた榊の枝を、宮司から受け取る。
人長とは、御神楽の儀を奉仕する神楽人の長という意味。笛の所作人が本の座、篳篥の所作人は末の座について奏します。

00人長が榊を貰いに神前に行く0楽師(前から)
人長(横アングル)0音取り(朝倉音取り?)0楽師(後ろから)

<所作人と人長>

一段目は神楽笛と人長、二段目は篳篥と人長、三段目は和琴と人長、四段目は歌と人長。
それぞれの所作人が入れ替わるごとに、人長は神前に声を出してご報告します。

神楽笛と人長0神楽笛と人長0神楽笛
篳篥と人長0篳篥と人長0篳篥
和琴と人長0和琴と人長0和琴
歌と人長0歌と人長0歌

人長 神前で「じゃ、今度は○○演奏します〜」と、神様に報告する人長さん。4人の所作人が演奏し終えるまで、ずーっと立ちっぱなし。しかも榊を持ったままの、この形で。すごい!まるで罰ゲームみたい。。。だってさ、あの輪榊って結構重いんですよ。

今回は「神降ろし、神遊び、神送り」の3つの場面を、良いとこ取りしてちじめたものらしいです。でも、式を見てて、一つ一つの所作が何を表してるのか、勉強不足でわかりませんでした。唯一わかったのは、人長舞の部分。それは随分昔の事ですが、舞を習ったから。。

先生に聞けたら頑張って聞こうと思いますが、多分聞けないなぁ。ちなみに上の4段目で歌ってるのは、私が竜笛を習っている先生です・汗)

<人長舞>

そのこまぞや 我に我に 草乞ふ 草は取り飼はん  水は取り 草は取り飼はん
(其駒揚拍子だったか三度拍子だったかな、揚拍子のような気がしましたが。。わかんな〜い。
こんな事言ってたら、先生に怒られそうやぁ)

人長舞とは宮中ほか由緒のある神社で行われる「御神楽の儀」の中で舞われます。人長とは御神楽の儀を奉仕する、神楽人の
代表者という意味です。この曲は御神楽の儀式の最後の最後に行われる舞です。舞人の装束には、平安時代の近衛の正装が
用いられています

朗々とうたわれる声と、舞台の左右から交互に聞こえるパシッ!と打たれる笏拍子の音が、舞楽とは違う幽玄な世界を
つくりだします。そして、白地の衣装が素敵だな。やっぱり日本古来の舞には白が似合う。舞人の巻纓冠には萩のかざし、
楽師のかざしは稲穂がついてました、秋らしいですね〜。わずかな庭燎のなかでおこなわれる人長舞を、ほけぇ〜と見ながら、
耳から入ってくる音を聞いていたら、日本人でよかったなぁ、と改めて思いました。

人長舞0人長舞0人長舞
0
人長舞0楽師

<宮巡之儀>

松明を先頭に本殿を右回りする、人長と所作人と楽師達。観客も後ろに付いて歩きます。所作人と楽師は
東遊びの装束を着けてます。宮巡の時は、揚拍子・早歌を奏してました。お琴を持って歩くの大変そうでした。
本殿を一周して戻ってくると、人長は神前に榊を返しに行き、儀式は終わりです。

この儀式自体、本来は神様だけに聴かせるもので、人には聴かせないものだったのに、こうやって
生でしかも、近くで見れるなんて時代は変わるモンですね。。菅公に便乗させてもらいました!

宮巡0宮巡0宮巡
宮巡0宮巡宮巡
宮巡で誰もいなくなった?!0儀式が終わった後0儀式が終わった後

仲秋の明月 仲秋の明月の夕刻から行われた秋思祭。ふと気づけば、周りは暗闇に包まれてました。そして、暗闇にはぽっかりと、まんまるお月さん。満月はずーっと見ていたい気持ちになりますが、三日月なんかは見たら心がえぐられそうで、目をそらせてしまう私。満月は見ると癒されます。でも、あまり満月を見すぎると、魂が抜かれるって聞いたことがあるなぁ。

まだ暑いですが、古の暦はもう秋。澄んだ空気に浮かぶ満月をイメージしながら、秋の神事を見ていたら、ちょっと涼めたよ〜。時間がある今、少しでも雅楽を通じて季節の行事を楽しめたらな〜、と思ってます。思ってても出不精やからなかなか思うように行けてへんけど……。

■    ■    ■

秋思祭

大阪天満宮神社は、天神祭をはじめ華やかな祭儀が多い中、この秋思祭は浄闇の中行われる静かな祭である。延喜元年(901)
菅原道真公は太宰府左遷の命を受け、遠く都を離れ筑紫路へと旅立たれました。その配所より遙か都の空に思いをはせ、恩賜の御衣を
捧げてかの九月十日の詩篇をお作りになりました。この詩にあらわれた誠忠の臣菅公の悲愴なる心事を追憶せんとする神事である。
仲秋の明月のもと幽玄裡に行われる秋にふさわしい祭りである。

秋思祭次第……献詠・秋七草献上・虫かご献上鈴虫・献華・献香・献茶・詩吟・楽師参進・御神楽之儀・人長舞・宮廻り

【大阪天満宮神社 公式サイトhttp://www.tenjinsan.com/index.html参照

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