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鳴く虫と郷町

兵庫県伊丹市でやっていた「鳴く虫と郷町」に、行ってきました。伊丹を良く知る人は、昆虫館と清酒発祥の地と、ピンと来ると
思いますが、今回のイベントはまさに、この二つがコラボした伊丹らしい企画となっています。この「鳴く虫と郷町」の鳴く虫は、
昆虫館職員が採集した虫さん達で、その虫の音色を郷町(古い町並みが残る伊丹の中心市街地)にある、旧岡田家住宅や
旧石橋家住宅といった歴史的建造物で聞くと言うものです。

伝統ある元酒蔵建物などで、聞く秋の虫の音。この秋の夜長に、ぴったりの涼やかなイベントです。虫さん達は、竹の虫篭や壷
・ガラス瓶の中で、それぞれに声を聞かせてくれました。なんやら風流〜。この催しは、今年が2回目だそうです。夜のイベントに
いいです、お近くの人は是非!9/13-9/20の期間には、会場の町家や酒蔵がライトアップされ、和やかな光の空間を楽しめました。

江戸時代に、清酒業などで栄えてきた伊丹市内の郷町。その郷町界隈を舞台に、鈴虫など
秋の鳴く虫
約15種類1000匹を、伊丹市立伊丹郷町館に展示します。竹の虫かごや壺に、
秋の鳴く虫を入れて座敷や土間などに展示します。郷町館からすぐそばにある伊丹酒蔵通りにも
虫の鳴き声が響きます。秋の夜長の開催期間、虫たちの歌声に耳を傾けてはいかがですか?
(↑チラシから)

…で、「鳴く虫と郷町」の本題に入る前に、今回の会場になった郷町内で以前していた、発掘の思い出を少しさせてください。
私は兵庫県埋蔵文化財事務所と伊丹市教育委員会で、伊丹空港防音壁整備に伴う埋蔵文化財発掘調査、
産業道路拡幅工事伴う埋蔵文化財発掘調査、そして、郷町内の埋蔵文化財発掘調査に、5年間携わってきました。

特に近年は、白雪酒造などの酒造会社の酒蔵を、発掘調査してきました。調査した跡は決まって、大きなマンションが
建築されるので、よく発掘仲間と「こんな同じ市内に、でっかいマンションばっかり建てて、全部部屋完売するんかいな?」と、
しょうもない心配をしてたもんです。岡田家には、発掘期間中に休憩させてもらったり、機材を運んだりと、お世話になりました。
今は、発掘調査が終了した現場の前を通るたびに、現場で出土した物や、一緒に仕事をした人の事を思い出します。

下の写真は、郷町で出土した酒蔵の遺跡。右はお酒を絞る時に使う、男柱というものです。ここで酒を造って、
江戸に送ってたんですね。江戸では、伊丹のお酒は丹醸と言われ、大変好まれたそうですよ。
写真左は、老松酒造の酒蔵遺構。中央は、出土した楽太鼓の土人形。右は、お酒を絞る時に使う男柱と絞り場。

0遺跡から出土した土人形(楽太鼓)0

郷町は江戸時代には、清酒でかなり潤ってたと聞きます。伊丹市を発掘を以前していたのですが、郷町内の住宅跡を掘ると
水琴窟や箱庭に置く土人形などが出土する事から、江戸時代に風流な“遊び”が流行していたことがわかります。また、
竹の虫篭や壷に、鈴虫など秋の鳴く虫を入れて、鳴き声を聞いて“遊び”という風流な事も、江戸時代にしてたらしいですよ。

と言う訳で、今回の企画「鳴く虫と郷町」は、江戸時代の文化財である建物の中で、江戸時代の秋を愛でる風情を
味わう―、実は伊丹ならではの企画なんですね〜。

では、本題に戻って。。。

 

<重要文化財 旧岡田家住宅>

旧岡田家住宅には、正面に店舗・奥に酒蔵・その間に釜谷と洗い場があります。建立時期は、店舗が江戸前期の延宝2年(1674)
酒蔵は正徳5年(1715)頃に出来たと考えられます。初代の蔵の所有は、酒造家松屋与兵衛で、その後明治に入り
岡田正造へと渡り、昭和59年まで(株)大手柄酒造の北蔵として酒造りが行われていました。

今は江戸時代に栄えた伊丹の酒造りを今に伝えるものとなっています。この住宅は伊丹の町屋としてもっとも古いだけではなく、
全国的に数が少ない17世紀の町屋としても貴重な文化財です。1992年1月21日に店舗と酒蔵が旧岡田家住宅として、
国の重要文化財に指定された(釜屋と洗い場は附指定)後、1995年から解体調査・復元作業が行われ、2001年から
「みやのまえ文化の郷」の、中核施設の一つとして一般に公開されています。

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鳴き声を聞かせてくれたのは、スズムシやキリギリス、マツムシ、クツワムシなど15種類、約1000匹。
カネタタキ、カンタンなど、何それ?といった秋の虫もラインアップ。ただ、鳴き声を聞こうと思って近くにいくと、
ピタッと、泣き声が止んじゃうんですよね。。。も〜、虫の意地悪!

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↑清酒を造る様子が垣間見れるパネル ↓お酒を造る道具やレンガカマドが保存されています。

岡田家を見学中に、この企画のロケに来てたインタビュアーに、色々質問され、夫婦でアタフタ。。。急に質問されると、
なかなか言葉が出てこないもんですね〜。どうせ伊丹のケーブルテレビだろうと思ってたんですが、後でなんと
大手の朝日だとわかり、びっくり。でも、あんな内容では絶対テレビには流れないだろうと、帰りしなに、旦那さんと苦笑い。

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<県指定文化財 旧石橋家住宅>

旧石橋住宅は、猪名野神社の門前である、宮ノ前商店街にあった物を、今の場所に移築したものです。
この住宅は日常品の看板を揚げ、雑貨商を商店街で営む商家でした。2階のツシと言われる板敷きや、
揚見世と呼ばれる床机など、古い商家の形態をよく残しているのが特徴です。

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会場の伊丹市立伊丹郷町館の、旧岡田家と旧石橋家↓

会場では、和やかな光の空間の中で、秋の虫がいい声で鳴いて、かなりいい感じだったんですけど。
写真では、その雰囲気が伝わり
にくいですね。。。家に着き、ホッと一息付いた後、窓を開けると
すぐ、近くで虫の音が……。夏の虫の音は、聞いてて暑苦しいですが、秋の虫は涼しさを運んできてくれます。

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