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宮内庁式部職楽部 雅楽演奏会・その2 

宮内庁式部職樂部の雅楽演奏曲目は御神楽・阿知女作法・薦枕・其駒・舞楽の左舞・甘州右舞・八仙です。いよいよ開演です。今日演奏される中で私達が一番熱心に見なければいけないのが御神楽其駒でした。ここに来たのは、この舞を見るためだった様なものなんですから!去年から雅楽会で其駒を練習していた私と友達は、この舞を舞う機会が間近かに迫っているのです。そこで先生が「今年の宮内庁式部職樂部のお題が其駒だから、見ておいた方がいいよ」という口添えでこんな素晴らしい機会にめぐり合えたのでした。

其駒とは若々しい馬の事を歌った舞です。人長と呼ばれる舞人が一人で舞うので、その名の通り其駒は『人長舞』とも呼ばれています。白い袍で頭には巻櫻の冠を被り、腰には太刀を付け、手には輪榊と言う榊の先に丸い輪が付いてる物を持って舞います。先生曰く「短いし難しい所も無いから、すぐに舞えるようになるよ」との事でしたが、舞の中には駒踏と呼ばれる馬の足の運びに似せた型等があったりして私達にはなかなか難しい舞です、輪榊も結構重いし……。しかし、楽を生業としてる方々はなんて軽々しく舞うんだろう!なんだかまるで違う舞のようでした。あんな風には到底舞えないけど、もっと練習しないとなぁ。。。

其駒(人長舞)

御神楽が終わると次は舞楽です。舞楽には『右舞』と『左舞』があります。基本的には右舞の人が左舞を舞う事は少ないようです。私が付いてる先生は左舞の方なので、必然的に私達が舞うのも左舞です。舞楽は一人で舞うものもあれば六人で舞うものもあります。今回の舞楽は両方とも『四人舞』でした。二列になって舞うのですが、前と後ろの人が全く同じに動くので、前から見ているとまるで二人で舞っているように見えます!これが下手な舞人だとバラバラに見えてしまうんですよね〜。

この演奏会でもっとも印象深い舞は、私も初めて見た右舞の八仙です。それはもう本当に可愛らしい、愛嬌のある舞でした。をかたどった面との付いたスモックの様な袍を身に着けた舞人がとても楽しそうに踊るんです!先生はそっと「雨乞いの舞だよ」と教えてくれました。パンフレットには【崑崙山の仙人が帝徳に化して来朝し、新曲を奏して舞う】舞だと、高句麗(朝鮮半島)から伝えられたと書かれていました。 お面の口には可愛らしい鈴が一つぶら下がっていて、舞人が動くたびに鈴も揺れます。でも、鈴の音は良く聞こえませんでした。。鶴の鳴き声だと伝えられているこの鈴の音を聞いて、天にいる神様は雨を降らすのかな……。最後は四人が肩を組み円を描いて舞台を降りていきます。え〜、もう終わり?いつまでも私の前で舞っていて欲しかったな!

口に可愛らしい鈴   鯉が涼しげに泳ぎます

春日大社『舞楽』(1987年)から抜粋した「八仙」

演奏が終わり高松宮様が会場を去られた後、私達も外に出ました。雨は止んでいます。三人で、「雨乞いの舞だったのに止んでますね〜」などと言いながら皇居を後にしました。帰りにあの鈴の音が気になって、「先生、あの鈴って鳴るんですか?」と聞いた所「鳴りますよ」と言われました。「どんな音が……」と聞きかけたんですが、それ以上聞くのは止めておきました。なんだかそれは(空想)想像の世界の音にしておいた方が良いような気がして。。……今でも「八仙」の舞を思い出すと、私の心の中で鈴が楽しげに鳴るのが聞こえてきます。

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