F104Jを作ろう

 まず資料を捜すことから始めました。インターネットで探したり、友人に聞いたりしたのですが、写真はあっても図面がありません。実家に資料になりそうな本が1冊あったことを思い出して送ってもらいました。モデルアートの昭和60年10月号臨時増刊。有りました!三面図と胴体各部の断面図。これが無いと作れません。翼は三面図がさえあればとくに翼形を気にしなければ作れますが、胴体は断面図が無いとどうしようもありません。特にジェット戦闘機はF104Jみたいな簡単そうな形状でも、微妙な3次元曲面になっていますので絶対必要です。

 実際に空を飛ぶのが前提ですので、まずパワーソースから考えます。今では本物の模型用ジェットエンジンもありこれを使えば実現はより容易になるのですが、飛ばす場所がありません。やはり電動ダクテッドファンにすることにしました。出来るだけ機体を軽く作ってふわふわ飛ばないかな?との期待です。

 パワーソースがダクテッドファンと決まりましたので、ダクト径を決めて機体サイズを決めます。ダクト径は適当にφ10cmと決めました。構造は胴枠など用いず外板だけで強度を持たせるモノコック構造として、ファンを主翼部分の胴体において、この部分で強度を持たせることにします。縮尺は約1/16スケール、全長120cmとかなり大型になってしまいますが、全長は120cmもあるのに幅は50cmも有りません。(翼端増槽は含んでません。私はあの翼端増槽は嫌いですので付けません。) それにしてもやっぱり極端な機体です。主翼面積は6.7du。どう考えても飛びそうに有りませんが、とにかく製作を開始します。


 まず胴体から作ります。モノコック構造を作るには原型を作る必要があります。通常は発泡スチロールなどによりソリッドな原型を作るのですが、削るのが面倒だし、ゴミも沢山出るので5mmのスチレンボードでフレームの原型を作りました。これにスチレンペーパーを貼って作るつもりだったのですが、スチレンペーパーだけでは厚さの割に強度が取れないので、2mmのバルサ板とスチレンペーパーのサンドイッチ構造にすることにしました。バルサ板はお湯に漬けて柔らかくした後フレームに巻きつけ乾燥させるとその形状に変形します。1度剥がして1mmのスチレンペーパーを裏面に貼ってフレームに固定します。この作業を繰り返して全面に貼りつけると胴体の形状になります。この状態では表面はバルサ板ですので、サンドペーパーで磨いて表面の凹凸を修正します。その後この上に1mmのスチレンペーパーを貼って完成します。

 部分的ですが完成した胴体です。先端とかエアインテークなどは別に作って取りつけます。中央部分にある出っ張りはファン用のモータマウントと主翼固定部分で、後部の2箇所の出っ張りは垂直尾翼の固定用です。この状態では白いなまずみたいです。スチレンペーパーは今回始めて使いましたが、限界以上に曲げるとすぐしわがよります。写真では分かりませんがあちこちしわがよってしまいました。パテとペーパーがけで何とかなるのか不安です。強度的には十分で中央の主翼固定部分はともかくその他の部分は1.5mmのバルサ板で十分でした。

 垂直尾翼を付けるとそれらしくなってきました。F104JのT尾翼で水平尾翼は水平安定板部分が無くて全体が動く構造ですので、この部分は手間が掛かりました。垂直尾翼内部に水平尾翼を動かすリンケージが構成されています。

 胴体は3分割できます。ファンのメインテナンスするには分割は必要です。機能の全ては中央と後ろの胴体にありますので、前部の胴体は格好だけですが全体の半分以上の長さを占めます。
 RCメカと電池を積む場所がありません。胴体内部はダクトになっていますので、推力を阻害する出っ張りはなるべく少なくする必要があります。RCメカは主翼付根やエアインテーク内に納めるにしても、電池は胴体外部に爆装することになりそうです。(’01 6/17)

 大失敗です。塗装が綺麗になるようにバルサの上にスチレンペーパーを貼ったのですが、重くなった上、密着性が悪くあちこち浮いてきました。おまけに質の良くないバルサ板を無理やり使ったためか歪みが出てきました。作り方から検討し直しです。(’01 7/28)



 自作したファンです。計算上では左のファンを10000rpm以上で回せば200g以上の静止推力が得られる筈ですが、ユニオン電動ライトプレーン用のモータ直結で回したところでは数十g程度しか得られませんでした。右のファンは羽の枚数の効果を見るために作ってみたものですが、よりトルクが必要なため回転数が上がらずかえって少ない推力しか得られませんでした。バランスなどの調整も必要ですが、もっとパワーのあるモーターが必要です。
 飛行時間は1〜2分で十分と思っていますので、100W以上の電力を投入して、20000rpmぐらい得られるモーターを捜さなければなりません。


 ハリケーン XX


 やはりいきなりF−104Jは無謀なので、参考にするため市販キットを購入しました。以前にユニオンモデルより市販されていたフリーフライトダクテッドファン機ハリケーンXXです。全長55cm、翼長62cm、翼面積6.1du、重量135g。なかなか良く出来たキットですのでこれをラジコンに改造することにしました。モーターコントロールとラダーの2chで重量172gで完成しました。どうです、かっこいいでしょう!。


 ファン部分。プロペラの部分が小さくてこんなので推力出るのかな?と思いましたが、直径55mmしかないのに結構推力あります。やはりファンの作り方を考え直す必要がありそうです。

 ダクテッドファン機の問題は無線機などの搭載する場所が無いことです。当たり前ですが胴体はダクトになってますから胴体内部には搭載できません。ラダーサーボはユニオンの6gサーボですが、ダクト内部に底部が飛び出しています。受信機は双葉電子のFP−R122JEのケースを取り外し、クリスタルもソケットを取り除きプリント基板に直付けしました。これもファン前部のダクト内部に基板が飛び出す形で搭載してあります。
 右写真の下にあるのが3.6V110mAのオリジナルバッテリーです。受信機、サーボと電源を共用するため、6V110mAに交換しました。モーターアンプもこの部分に埋め込んであります。ダクトの吸気口前が比較的自由に搭載できる唯一の部分です。
 付属のモーターは3.6V用だったので、同じ外形のモーターに交換しましたがパワーは落ちたようです。付属のモーターは無負荷時でも3.6Vで1.5Aも消費します。ファンを回すと2Vを越えたくらいで4Aも消費したので交換したのですが、今度は6Vで1.5A程度しか消費しません。コアの巻き直しも考えましたがモーターの分解、組み立てに確実性が無かったので諦めました。推力を測定できませんのでなんとも言えませんが消費電力からみると、パワー不足が心配です。
 推力の測定を行いたいところですが、機体になると難しいです。ファンユニットだけなら秤の上で回して重さを量ると云った手段もあるのですが。仕方ないので小型の風速計で吹き出し口の風速を測りました。約12m/sec。計算上の静止推力は35g。手で持った感じはもっとありそうに感じるんですが、計算が間違っているのかな?やっぱりパワー不足?実際に飛ばしてみるしかなさそうです。(’01 8/5)

 テスト飛行 ('01 9/29)
 長い間放置していましたが、涼しくなってきたのでテスト飛行を行いました。結果は予想通りのパワー不足。主翼の取りつけ角を調整したりして何度も挑戦しましたが、上昇する気配がありません。向かい風に直進して高度を保つのがやっとで、旋回すると墜落します。フリーフライトに比べて約40g重量が増加した上、推力が減っているですから当たり前か。やっぱりモーターコアの巻き直しが必要です。

 飛行に成功 ('01 10/20)
 パワー不足を解消するため、モーターコアの巻き直しを行いました。オリジナルのモーターはFK−130SZ。巻き線の太さと巻き数を変えてテストしました。

 φ0.4  24回巻き 無負荷時 3.6V 1.6A FAN駆動時 2V 4A (オリジナル)
 φ0.32 30回巻き 無負荷時 6V 1.6A   FAN駆動時 2.5V 4A
 φ0.26 40回巻き 無負荷時 6V 0.7A   FAN駆動時 4.7V 4A

 使っている電源が4Aまでなので直接テスト出来ませんでしたが、φ0.26 40回巻きならば6Vで5A程度の消費電流になりそうです。コアの巻き直しは思ったより簡単でした。機体を分解して巻き直したモーターを取りつけ動作テストを行いましたが、6V110mAのニッカドでは正味40秒程度のモーターランです。前回と同様に吹き出し口で風速を測定すると16m/sec。計算上の静止推力は62g、手に持った感じはかなり違います。
 翌日、早朝から飛ばしに出かけました。快晴の上ほぼ無風の最高の条件です。手投げした機体は前回とは異なり力強く上昇します。スピードがあることもあって風にも強くラダーオンリーですが結構楽しいです。しかし着陸は難しく、機速が落ちると急速に沈下します。スピードが落ちてから旋回させたら墜落しました。ダクテットファンは機速に十分注意する必要があるようです。