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肥後・石橋群(熊本県 矢部町・砥用町)

肥後の石工で有名な熊本県内には、多くの石橋が残されています。
阿蘇の外輪山の南側を流れる緑川流域には、多くの貴重な石橋を見ることができます。
その中でもっとも有名なのが、「通潤橋(つうじゅんきょう)」でしょう。
写真の右側、白糸台地に灌漑用水を送るために、江戸時代末期の1852年(嘉永五年)に
地元の矢部総庄屋・布田保之助の手によって建設が開始され、1年8ヶ月をかけて1854年
(安政元年)に完成した水路橋です。
石造りのアーチ式水路橋では日本一の規模を誇ります。
長さ75.6m、高さ20.2m、幅6.3mの堂々たるアーチ式石橋です。
先人の知恵と努力が、ひしひしと伝わってきます。


普段は年1回の清掃時にしか見られなかった放水ですが、現在は農繁期を除く時期に、予約(有料)で見ることが出来ます。
たまたま地元のおじさんが、「東京から来た親戚に見せてやるんだ」と依頼してくれて、放水を見ることが出来ました。感激!


通水管(もちろん石管)から木栓を抜くと、勢いよく水がほとばしります。(左写真)
通水管は3本通っており、3条の水流が右写真から判ります。


左写真の標柱の袂にあるのが、石橋の中に組み込まれている通水管の石管です。
石管の表面に刻まれた溝に、水漏れを防ぐために目地漆喰を詰めてあります。
右の写真は、通潤橋の通水管への水の落とし込み口です。
水路が3本に分かれているのが判ります。
小さく人が写っているところが橋の上です。
橋までの落差が7.5mあり、対岸の吹上口は橋から5.8m上で、その差が
1.68m。
サイフォンの原理で対岸の白糸台地へ灌漑用水を送り続けています。
通水管の全長は126.9mあります。
通潤橋によって台地の100ヘクタールの水田が開かれました。
現在は水量の不足を補うためにすぐ隣りにコンクリート管の送水管が作られ
ましたが、通潤橋はもちろん現役で使われています。

こちらは砥用町にある霊台橋です。国の重要文化財に指定されています。
現存する単一アーチ式石橋では最大です。
全長90m、アーチのスパンが27.5mあります。
昭和41年までは国道の現役の橋で、トラックやバスが走っていたそうです。
現在は上流に新しい橋が架けられて、保存の為解体修理されて当時の姿に
戻されました。


2001年5月12日 新規