(ふらついてみる)
ゲート付近に行くと、前日にもまして長蛇の列。「さすが決勝だなー、客増えてるなー」と思ったら、それは入り口の混雑ではなくて来シーズンのベルギーGPチケット販売所の列でした。
…来年って、タバコ広告の関係で開催できるかかなり微妙だったんじゃないのか?いいのかもう販売しちゃって?しかも今買うと40%オフっていいのか。
主催者のためにもチケットを買ったファンのためにも私のためにも(ベルギーGPは面白いので)来シーズンも開催されるといいんですが。
さて、前日のフリー走行&予選では、雨が降っていて足下がぬかるんでいたのと、終了後バスにすぐ戻らなくてはいけなかったため、ほとんどサーキット内をふらつくことができませんでした。
しかし本日は暑いくらいの晴れ!晴天!どこ行ったスパウェザー!しかしこの午前中はF1マシンは全く走らない(他のカテゴリーのレースはあるけど)ので、ある意味無駄な晴天…。でもせっかくなのでサーキット内をふらついてみることに。
私の席は「オー・ルージュ(赤い川)」と呼ばれる急な上り坂の前で、ここをマシンが全開で駆け上って行くのは迫力満点。…なはず。だって、前日のフリー走行&予選は雨だったから、全開ではなかったのでその真偽のほどは不明。席の近くには、当然事故防止のために金網が張られているのですが、せっかくだからコースの写真を撮ろう!と金網越しに写真を撮っていたところ。
金網の向こう側にいたマーシャル(コース付近で旗を振って合図を出す係員)が中に入れてくれました。イヤッホー!
金網にへばりつきながら「くー、この金網さえなければオー・ルージュ丸見えなのになー!」とか大騒ぎしつつ写真をちまちま撮っていたから気の毒に思ってくれたんだろうか。はたまた同行関西人の「中に入りたいオーラ」(本人談)のおかげか。
5人ほどいたマーシャルの人たちはやたらにフレンドリーで、佐藤琢磨応援のためにBARウェアを着た我々4人に対して「サトウ!ナカジマ!スズカ!」とやたらに日本ネタを振ってくれるし、一緒に写真に写りたがるし(しかも大はしゃぎでピースするし)。コース上は誰も走っていないときとはいえ、こんな風に融通をきかせてくれて本当に嬉しかったです。
金網越しでないオー・ルージュを堪能した後は、コースの下をくぐりながらピット方向へ探索の脚を伸ばしてみる。
4人がBARウェアを着て並んで歩いていると、やたらに「サトゥー」「サトゥー」と話しかけられる。話しかけられると言うか、単にすれ違いざまに「サトゥー」と声をかけられるだけですが。こちらも「もちろん佐藤っすよ!」と返す。日本語で。しかし佐藤琢磨、いい意味でか悪い意味でかはともかく、知られているのだけは間違いないみたいです。もともとイギリスのF3で走っていたわけだし(年間チャンピオンになった)、F1で走るようになってからは無謀にアグレッシブで、時々は格好良くオーバーテイクしたり、度々クラッシュしたり、今季は派手にエンジンブローしたりして、インパクトだけは強いからなあ…。成績も何とかならんか、というのは禁句です…。
ふらついている途中では、全身佐藤琢磨ウェアに身を包んだイギリス人にも遭遇。どうやらイギリスの佐藤琢磨ファンクラブの人らしく、怪し気な法被を着ているし、日本国旗持ってるし、「行け琢磨」と書かれたステッカーを持っているし(そして我々に配ってくれた)。
行く先々で「サトゥー」と呼びかけられながら、さらに進むとピット付近に到着。入り口の隙間から普通にピットが見えた。しかも下位チームだけではなくてちゃんとフェラーリピットだって見えちゃうし、写真だって撮れました。普通は金網+目隠しで見えないようにしているはずなのに、何てアバウトなんだ!(←誉め言葉)
(ある意味予想通り…)
元々は別のチーム&選手を応援している我々4人ですが(それぞれ贔屓選手が違っている)、今年のチャンピオンシップも序盤で事実上決定(ちなみにチーム別はもう決定済み)してしまっているので、「ここは一致団結して日本人ドライバーの佐藤琢磨を応援しよう!」ということになっておりました。
が、この佐藤琢磨、速いといえば速い(多分歴代日本人レーサーの中では一番速いんじゃないかなあ)けれど、無謀に頑張りすぎる傾向があって、上手くいけば凄いオーバーテイクになるけれど、失敗すると大クラッシュの原因になってしまう(しかも失敗率の方が明らかに高い)という見ていて心臓に悪いことこの上ないドライバー。いやまあ、そこが良いといえば良い所なんですが。そして本人のせいかどうかはともかく、やたらに事故に巻き込まれる率も高い。
「せめて私達の前を1回でも走ってくれればいいよ」
とは、決勝前における友人談。もちろん半ば冗談で言っておりましたが、ひょっとしたらその通りになるんじゃないかという予感もちらほら。
で、予感的中。ぁぁぁ…!
佐藤琢磨が私達のいるオー・ルージュの前を通ったのは、本当に1回だけでした。私達の前を通った時点では順位があがってたようなので「おお!」と思っていたら、その直後オーロラビジョンではBAR(琢磨の所属チーム)の車がリタイアしている映像が…。画面が小さいので「琢磨か!?バトン(BARのもう一人のドライバー)か!?」と目を凝らしながらも、「きっと琢磨の方だろう」という確信がありましたとも…。何故って、リタイアしていた車が他にも少なくとも2台いたのが見えたから。琢磨の巻き込みor巻き込まれ率は高いですから…ウフフ(もうヤケ)。
オー・ルージュを通過したすぐ後に起きた事故だったので、リタイヤしたドライバー達が近くを通って行きました。最初はジョーダンとミナルディのドライバー、そして少し遅れて琢磨。琢磨だけ遅れて歩いているから「やっぱり原因は琢磨か!だから離れて歩かれているのか!」などと勝手に思っていましたが、更に少し遅れてジャガーのドライバーが通っていったので、勝手な妄想だったようです。でも今までのクラッシュ実績(嫌な実績だ…)があるので、つい、ねえ。
いきなり4台が事故でリタイアという荒れたスタートでしたが、他にも波乱が。
まず、予選で2位だったフェラーリのシューマッハがいきなり後退。オー・ルージュを通過したときは4位か5位くらいだったような。すぐ後方にスタートの上手な選手が複数いたので「絶対スタートで抜かれる」と確信しておりましたが(シューマッハはスタート下手)、案の定…。そしてスタートで失敗したのみならず、その後もモントーヤにもパスされる。で、そのたびに観客席大喜び。…シューマッハはドイツ人で、このサーキットはドイツに近いんだけど、観客は大喜び。あれー…?世間は判官贔屓らしいです。かく言う自分も、普段はフェラーリ応援してるんですが、今季の独走状況を見て佐藤琢磨応援に変更してますが。
波乱はシューマッハだけでなく、ミシュランタイヤ勢のタイヤバースト(多分)によるリタイヤが多発。先頭を走っていたアロンソ、序盤にクルサード、最後のほうでバトンがそれぞれタイヤによるリタイヤ。アメリカGPの時も同じようなトラブルがあって、大事故になってしまったけれど、原因は一緒なのか違うのか…。いきなりマシンが制御不能になるので、大事故になる率が高そうです。波乱の多いレースは見ていて楽しいけれど、危ないのはちょっと。
タイヤ以外のトラブルでは、ウィリアムズのピッツォニアが表彰台目前にしてマシントラブルでリタイア。ちょうど目の前でスローダウンしてしまいました。しばらくその場から離れずに、ずっと頭を抱えてました。代役でシーズン途中からの出場だったので、ここで表彰台が取れれば良かったのに。歩いてピットに帰るとき、客席に手を振る姿が切ない。
もう一台、ゴール直前でリタイアしたのがトヨタのゾンタ。スパ・フランコルシャンサーキットはドイツに近く、ドイツにはトヨタのファクトリーがあるので、トヨタ応援団が指定席一ブロック占拠しておりました。トヨタの車が通るたびに、旗が揺れる揺れる。その時点の順位はゾンタ4位、もう一台も入賞圏内でレースも残り数周だったのに、敢えなくリタイア。嗚呼…。
序盤にクラッシュ、途中上位陣が脱落、最後もトラブル、と大波乱のレースでした。
で、最後に優勝したのはマクラーレンのキミ・ライコネン。「あー、前日会ったフィンランド人の女の子は今頃大喜びなんだろうなー」と、琢磨のことを応援していた日本人である私は、ちょっと切ない気分になりました。まあ、レースとしては波乱あり、オーバーテイクありと非常に楽しいレースでした。贅沢を言っちゃあいけないわー。
(オールージュを駆け上がれ!)
優勝が決まった後、観客大挙してコース上へなだれ込み。私達の席の所はコースから大分上の方だったにも関わらず、金網をよじ登って、さらに土手を駆け下りてコース上へ出ようとする人もちらほら。「うおぉぉぉ、コースに入ってみてぇー!」と思いつつも、いくら何でも金網よじ登りはまずいだろうと自主規制して(そりゃあね)、サーキットの出口へ向かう人の波の中に紛れる。
しかしその途中、「さあコース上へいらっしゃい」とばかりに金網の扉が開かれていたら、しかもみんな普通にそっちの方へ流れていく状況ならアナタ、一緒に入りたくなるのが人情ってもんです。
金網をくぐり抜けると、そこはオー・ルージュであった。(川端康成の「雪国」的に)
さっきまでF1マシンが駆け上がっていたまさにその坂を全力で走って駆け上ること2回、それをデジカメの動画モードで記録してみる、路面に落ちているタイヤのかすを拾ってフィルムケースに保管する、写真を撮る等、我々4名いい年をした大人各自が真剣に大はしゃぎ。だってアナタ、オー・ルージュですよ、オー・ルージュ!足下が直にオー・ルージュ!興奮するなって方が無理ってもんです。
しばらくオー・ルージュを堪能した後、観客の流れに乗ってコース上を延々と歩きバスの待つ駐車場へ帰還。コース上に出られるなんて初めてだったので、ほんとに楽しかったです。
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