物を測るのには「単位」があります。
長さだけでも、メートル法、フィート、マイル、海里、パーセク、天文単位、尺貫法、Å、yukawa、等々。
あまり色々あると困ります。だから、統一したい。それも全世界で・・・これを求めて決められたのが
SI 単位系です。
ここに示す SI 単位系は、一組の基本単位と、それから求まる組立単位があり、組み立て単位は、正当性が認められた物理学の法則又は定義による乗除算だけで導かれます。
こういう単位系を、‘コヒーレントな単位系’と言います。
SI単位系のうち、特に電気に関係する物だけをここに示します。また、本HPで用いているものは一応説明してあります。
1960年の国際度量衡総会で、MKSA 単位系を拡張した国際単位系として SI を採択しました。日本でもこれを基礎としています。
最近、例えば天気予報で、ミリバール(mB)をヘクトパスカル(hPa)に修正したのがそれです。
MKSA単位系ってのが先ずありまして、これは大昔から物理の基本単位です。
SI は、四つの基本量としての MKSA単位−−長さ:メートル(m)、質量:キログラム(kg)、時間:秒(s)、電流:アンペア(A)−−を基本として、これに温度の単位としてケルビン(K)、物質量:モル(mol)、光度:カンデラ(cd)を基本単位とします。
また、補助単位としては平面角:ラジアン(rad)、立体角:ステララジアン(sr)を認めています。
他は全て組立単位です。
例えば力の単位はニュートン(N)で、上の基本単位で組み立てられます。昔は力として「キログラム重」なんてのも使いました。
そういえば、最近の車のカタログ見ると、SIで書いてありますね。トルク=N・mとかいった書き方で。
「力」は加速度と質量の積で F=m・g だから、kg・m/s2 で組み立てられますよね。
kg重も、N も「力」ですから次元は同じです。それでも N で無ければならないのは、コヒーレント性からです。
加速度を 1 [m/s2]とするとき、1N = 1kg×1m/sec2
で、無用な係数とかがつきません。
つまりこれこそが‘コヒーレントな単位系’の本質ということで、kg重(地球の重力での1kgでの力)は、一見便利なようでも、こうはいきません。感覚的には掴みやすいですが、実際には面倒なことになります。
電気専用の基本単位は、電流 A だけです。「えっ?電圧は」と思ったあなたはスルドイ。
電圧だけでは仕事をしないから、基本単位じゃないのです。電流が流れれば、通常は電圧が発生して熱なりなんなり仕事が発生します。でも電圧だけ(つまり電源オープンの状態)は仕事はゼロ。
だから、電圧を基本単位にしたんじゃ一貫性が無くて他のMKS単位系との整合が取れない、よって電圧は基本単位ではない。
電流は、『真空中において、1[m] の間隔で平行に置かれた、断面積が無限小の電線に電流を流した時に、その電線の単位長さ(1[m])あたり 2·10-7 [N] の力を及ぼし合う一定電流』と定義されています。
結局、仕事量を電荷で割ったのが電圧です。電荷とは、電流の時間倍。見方を変えれば、ある電荷をどれだけの時間で流すのか、が電流。電荷はキャパシタンス(コンデンサ)に蓄えられる量で、Q=CV ってのは高校の物理で習うはず。
仕事量は中学の理科だったか?で習いますよね。或る質量の物を、どれだけ動かすか。別の言い方をするなら、エネルギーですな。
ある質量のものを持ち上げるのは「力」だから、力と距離の積が仕事量です。
SI単位系では仕事量の単位はジュール(J)で、次元は、J = N・m = m2・kg/s2 ですな。
組立単位 | 読み | 表記 | 他のSI単位
での表記 |
基本単位
による組立 |
電圧 | ボルト(Volt) | V | J/C | m2・kg・s-3・A-1 |
電荷 | クーロン(Coulomb) | C | A・s | s・A |
仕事率、電力 | ワット(Watt) | W | J/s | m2・kg・s-3 |
磁束 | ウェーバー(Weber) | Wb | V・s | m2・kg・s-2・A-1 |
磁束密度 | テスラ(Tesla) | T | Wb/m2 | kg・s-2・A-1 |
電気抵抗 | オーム(ohm) | Ω | V/A | m2・kg・s-3・A-2 |
周波数 | ヘルツ(Hertz) | Hz | -- | s-1 |
インダクタンス | ヘンリー(Henry) | H | Wb/A | m2・kg・s-2・A-2 |
キャパシタンス | ファラッド(Farad) | F | C/V | m-2・kg-1・s4・A2 |
コンダクタンス | ジーメンス(Siemens) | S | A/V | m-2・kg-1・s3・A2 |
これらからさらに組み立てた名前の単位もありますな。例えば、透磁率μ:H/m(ヘンリー/メートル)ってな具合に。
直ぐ見て解るけど、全部人の名前です。
テスラは知られてませんな。ニコラ・テスラは「交流の父」。交流モーターも発電器も無線機も彼の発明。
一部トンデモ系にテスラの名前が出ることがありますが、未だ相対論が明確でなかった時代にエーテルの存在を信じたテスラが、エーテルによる電力伝送を夢見たという事です。決してテスラがトンデモなのではありません。
dB はSIではありませんが、併用を認められているらしいです。
次元が無いし、そもそも対数比であるもの(つまり、単純な乗除算では求まらないただの比率)ですから、普通の意味で言う物理的な単位とは違うと思うのですが、利便性からでしょうか?
因みに、dB は電力の方が基本です。そこからの計算で電圧が決まるだけです。
どうでも良いけど、それ以前にこれはベルの十分の一でデシ・ベルなんですがね〜。だから元は電力に決まってる。
尚、RF系では、これらの他に、dBを用いた組立単位もあります。dBm、dBi、dBd、dBm/Hz・・等々。
これらは、非SI 単位系なので、これからどうするか・・・私は知りません。(^^;;;)
bit は、最近亡くなった偉大な情報処理科学者の名を冠して、Shanon になるとか聞いた事がありますが・・・現在調査中です。
しかし、じ、時間がとれない........
「時間は作るものである:公式見解」-BUT-「せっかく作った時間をこんなことには使えない:陰の声」
尚、無次元のもの及びコヒーレント性に関して、京都大学の北野教授に貴重なご助言を賜りました。
また、表中の一部に、次元の計算の誤りがある事を、北見工業大の谷本教授にご指摘を受けました。私みたいな良く解っていない「どっかの馬の骨」に対して、お忙しい中をご丁寧にお教え下さった事を、感謝と共に記させていただきます。m(__)m
10のn乗の接頭語
話についでに、10の整数累乗の接頭語も書いておきます。このうち、d(デシ)は電気では、上の
dB だけですな。
普通、電気では三乗単位で書くので、これ以外は使わないのです。
因みに、お天気で使う hPa (ヘクトパスカル)は、気圧の単位は Pa(パスカル)なんだけど、ヘクト=102
ですね。
長さでは c(センチ)もありますわね。
名前 | 表記 | 大きさ |
ペタ(peta) | P | 1015 |
テラ(tera) | T | 1012 |
ギガ(giga) | G | 109 |
メガ(maga) | M | 106 |
キロ(kilo) | k | 103 |
デシ(deci) | d | 10-1 |
ミリ(milli) | m | 10-3 |
マイクロ(micro) | μ | 10-6 |
ナノ(nano) | n | 10-9 |
ピコ(pico) | p | 10-12 |
フェムト(femto) | f | 10-15 |
アト(ato) | a | 10-18 |
所で、俗に大きい事を「デカい」と言いますが、da(デカ)は10倍のことです。
だから、宇宙は「ペタい」と言うべき?
あまり使いませんが、EXA:1018もあります。でも、積極的には使わない方が無難です。何故なら、表記が
E なので、exp と誤解されやすいからです。電気では k・10nを k・E(n)
なんて書き方を良くしますから。
物理定数
決まり切った値、というやつがありますよね。つまり物理的な意味での定数。例えば真空中の光速度は一定値ですね。
こういうヤツも、本HPでは時々使ってるんで書いておきます。
μ0 | 真空中の透磁率
(ミューゼロ) |
4π・10-7 [H/m] |
ε0 | 真空中の誘電率
(イプシロンゼロ) |
1/(4π・c2)107 [F/m] |
c | 真空中の光速度
(シー) |
2.99792458・108 [m/s] |
G | 万有引力定数
(ジー) |
6.6725985・10-11 [N・m2/kg2] |
h | プランク定数
(ハー) |
6.62617・10-34 [J・s] |
q (or 'e') | 素電荷(電子の電荷)
(キュー) |
1.6021・10-19 [C] |
k | ボルツマン定数
(ケー) |
1.38066・10-23 [J/K] |
プランク定数は、これ以外に「短縮形」もあって、2πで割ったりします。h
に横棒が付いてたらそれです。
これは HP ではフォントがないから書けないけど。
プランク定数てのは何かと申しますと、光子一個のエネルギーは、h・νです。νは振動数ですな。
ここで最初の単位の話に少し戻って、次元について書いておきます。基本的に物理的な式というのは、必ず式の左右の次元が等しくなります。
当たり前ですな。もし違ってたら、何が何だかわかりゃしない。そもそも何の値かワカラン事になる。
さっきの E = h・ν では、νは周波数だから[1/s]ですよね。
エネルギーは仕事量だから単位は[J]。だからプランク定数の単位は[J・s]になるわけです。
ある、もの凄く難しい式をいっぱい並べるので有名なトンデモさんがいらっしゃいます。
聞くところでは、式の左右の次元が違ってたそうです(^^;;)。