AB級20Wステレオ トランジスタ・パワー・アンプ
















小出力の半導体パワーアンプです。
終段は2SA627-2SD188です。これは単に有ったから使ったまでで、そのうちMOS-FETにでもするかも知れません。
このアンプも、改造に改造を重ね、ほぼ現在の姿になったのは‘92頃です。その後も少しずつ変更しています。

実は、最初に作ったのは学生時代で、その時はOP-AMPのLF-357Hを用いたPhono-EQ付きのプリメインで、Phono入力からSP出力までDC直結の、完全DCアンプでした。
MM専用でしたが、Phonoからの完全DCアンプは例を見なかったので、まあ若さに任せてというか、兎も角やってみようと思って強引に作ったものでした。

それからプリを別に製作して、上述プリメインのパワー部をそのまま使っていたのですが、電源の一部と終段だけ残して作り直したのが本機の原型です。



増幅部

増幅部の回路図を下に示します。

電圧増幅一段で、カスコードブートストラップされた初段J-FETをフォールデッドカスコードで受けて、カスコードされたワイドラー型カレントミラーでP-P合成しています。
フォールデッド・カスコードの反転側に、さらにベース接地を加えて各Trの損失を概ね等しくしてバランスをとっています。
カレントミラーをカスコードにすることで、高域のP-Pバランスを改善しています。

カレントミラーP-P出力に抵抗を入れて、オープンゲインを適当に抑えていますが、オープンループ特性とクローズドでの兼ね合いからこうしています。
この抵抗はない方がDFや高調波歪みは良くなります。オープン特性を充実させた上でのクローズド特性であるという、まあ、信念みたいなものです。

終段ダーリントンのドライブにダイアモンド・バッファーを入れています。こうすることでオープンの歪み特性が向上します。ここから変則的な多重帰還をかけてあります。
ダイアモンド・バッファーをデュアルTrで構成して、温度特性を安定させました。実は10Ωの抵抗が無くても、この段は温度的に安定ですが、電流値を確定させたかったのであえて入れてあります。

電圧増幅段は完全に定電流で縛ってあり、電源の影響を受けないはずですが、それでも定電圧電源の構成の仕方で音質が変化します。
裏を返せば、高周波領域の影響を無視することなど出来ないと言うことでしょう。接合容量の影響で、高周波領域では定電流回路のインピーダンスが下がり、それによって過渡的な電圧変化がうまれ、パルス性の位相変化が出るのではないかと思っています。

入力のGND側に抵抗を入れてあります。
低周波の発振止めとしては初段FETのゲート側に入れるのが普通ですが、GND側に入れると、ピンケーブルを換えても、その影響が解らなくなります。
これから察するに、ピンケーブルの音が云々というのは、GNDを共通化する事によるGNDループ、或いは共通インピーダンスの影響に過ぎないのでは無いかと思われます。

デュアルTrは低耐圧AF用です。わりと何でも使えます。私は手持ちを使っています。



電源部

電源部の回路を下に示します。

トランスは正負別々です。こうすることで音場感に差が出るようです。このアイディアを最初に見たのは1980年頃のMJ誌上ですが、その数年後、やはりMJで金田氏や安井氏が追試した記事がありました。
ただし、音場感というのは部屋の影響の方が大きいようで、私は最近引っ越して少々がっかりしています。

終段も定電圧化しています。これは初期の残骸がそのまま使ってあるからで、絶対に必要という根拠はありません。無しにすれば出力は大きくなります。

電圧増幅段用の電源回路は、プリのものと本質的には同じですが、P-Pシャント側をバイアスの深いJ-FETで構成してあります。
正側のP-chは海外製ですが、これは手持ちがあったからで、1.2Vで2mA以下のものなら殆ど何でも使えます。当然、Low-gmの物です。

終段用、増幅段用共に電源出力の制御Trは放熱器が必要です。

ケミコンは馬鹿みたいに大容量になっていますが、これは中古品を使ったためです。同じ値段なら、下手なオーディオ用よりも容量が大きい方が良さそうに思います。


音質的には、しっとりナチュラルな傾向で、ワイドレンジですが、いわゆるマニアが喜ぶハイスピード・サウンドではありません。
定電圧電源のP-Pシャント用のFETを取り除いただけで、そういうハイスピードでドライな傾向が得られます。
これを取り除けば、明らかに電源の動作としては劣化するはずです。

好みといえばそれまでですが、高解像度、ハイスピードの現代的サウンドというのは、その程度のものなのではないかと思います。
オーディオマニアというのは、眉間にしわを寄せて、危うい動作のアンプの音を聞いている人種である?

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